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steady sutra



一人仲間を増やしたさんほうちゃんはもん吉くんと居るより真面目でカッコイイが太郎くんと一緒に居ることが多くなりました。話す内容や見た目、服装ももん吉くんに比べればまともなので、自然と会話が弾みます。

キリシタンでも仏教徒でも無いが太郎くん。河童村の礼拝堂は他国から来た河童がイメージして立てただけの建物で特に深い意味は無かったようです。王子様として崇められていた立場上、憂患だった彼は温泉で貴方に会えてよかったですとさんほうちゃんに伝えました。



「悪いことをしてしまいましたが、私はさんほう様とこうして旅に出れて本当に嬉しく思います。」

「そっ、それはすごく嬉しいですっ…ああ!あと、が太郎さん…さんほう様なんて呼ばずに私のことはさんほうちゃんって呼んでください、」

「わ、分かりました。では、さんほうちゃん…よろしくお願いしますね。」



二人のラブラブな世界が広がって完璧にのけ者になってしまったもん吉くん。一緒に旅に行こうと誘ったのは自分なのになんだかいけ好かないです。しかも結婚してしまう前の時のよう心がモヤモヤとしてしまいます。

ふて腐れたもん吉くんはわざとさんほうちゃんに近付いて耳元で変なことを囁きました。



(もう交合してやんないぞ。)

「なっ…!?」

「ま、アレの良さを一度体験しちまったらもう二度といい気分にはなれねぇと思うんだけどなあ。」



したり顔でさんほうちゃんを動揺させるもん吉くん。何のことかさっぱり分からないが太郎くんは首を傾げています。その様子にお前は知らなくていいんだと偉そうに言い張るもん吉くんは機嫌をすぐ治したようでしっぽを揺らしながらスキップで野道を駆けて行きました。



「ふふふーんっ、かわいいかわいいさんほうちゃぁん♪」

「も、もん吉っ!ふざけるのはよしなさいっ!」

「へへ、ふざけてなんかないっすよぉ、」

「…んもうっ、」



バカにされているのにもん吉くんだからか全く苛々しませんでした。寧ろ心がほっこりするような感じがしてさんほうちゃんは少し仲良くなれたことを嬉しく思いました。









そんな一行が野道を歩いているとお肉を焼いたような香ばしい香りがしてきました。おいしそうな香りは空腹の一行には厳しい匂いです。



「んっ、お師匠様ぁっ!オレ、腹減った。」

「そ、そうですね…私も少しお腹が、」

「えぇ…村から持ってきた食料も底をついてしまいましたもんね、」



河童村で貰ったキュウリや魚は実はもう底をついてしまい、三人は既にお腹を空かせていました。そんな中、野路に“キッチンとんとん”と書かれた看板が掲げられている赤い屋根の小さな小屋が一軒佇んでいました。

明らか怪しい位置に立つそれを警戒もせず、さんほうちゃんを先頭に皆で入ってしまいます。



「いらっしゃーいっ!何名様でしょうかっ!」

「えっと、3人…です、」

「はぁーいっ!じゃあこちらの席にどうぞっ!!」



明るい声で迎えられた一行はエプロンを付けた店の人に席を案内されました。

オレンジのハットに跳ねた黒髪、目が大きく優しい店員さんの印象が強くありました。店内はテーブルが一つと席が4つしか無く、こじんまりとしていてまた落ち着きがあります。



「メニューはこちらでーす!」

「はいっ、…どれどれっ、」

「んっ?チャーハンがねぇじゃねぇかぁっ…」



渡されたメニュー表を見てみるとこの地方では見たことの無い奇怪な名前のメニューが多く書いてありました。詳しく聞くにも字が読めないため一行はうぅんと後込みしてしまいます。

我が儘なもん吉くんだけは大好きなチャーハンが無いと歎いています。



「今日のオススメは…猿のたたきなんてのもいいかもしれませんね、」

「はぁ?」

「ふふふ…アナタ方二人は妖魔でしょ?服や化術で隠しても分かりますよ。猿と河童の汚い匂いがプンプンしますものね。」

「っ、てめぇなぁあっ!!」



優しい笑みが一転、もん吉くんとが太郎くんに喧嘩を売った店員さんは鋭い顔で壁にかけてあった武器を取り出しました。それを縦横無尽にぐるりと振り回し構えるポーズは慣れっこのようです。

さんほうちゃんは戦えないので護衛の二人がそれぞれの武器を持って対抗します。



「貴方も猪(イノコ)の妖魔でしょう、何故牙を剥くのです!」

「へっ、お気楽に…人間なんかと居る可哀相なお二人さんに一つ教えてやるよ。人という生き物はな、妖魔が大嫌いなんだ!だからそこのもアンタらのこと本当は気持ち悪いとしか思ってないと思うぜ。」

「えっ、そ…っ、な、何言ってんだ、この猪…」



その猪の妖魔の一言で簡単に自分を見失ってしまったのはもん吉くんでした。自分は二度もさんほうちゃんと身体を重ねて猪が言う“汚れた身体”で何度も彼を抱きしめてきました。

それはただの欲望か、未だ見えぬ“人が持つ感情”か。分からない妖魔のもん吉くんは猪の妖魔に対して何も言い返さないさんほうちゃんを怪訝そうに見つめていました。





[*Ret][Nex#]

あきゅろす。
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