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streak sparkle



『速報です!人気子役、木瀬ヒカル君誘拐事件で犯人と思われる男が先程、さくら警察署に出頭しました。男の名前はナツカワツキヒコ、26歳。長身で白い軽自動車を所有している点は目撃情報と一致しています。詳しい情報を現場の高橋さん!お願いします!』

『はい、さくら署によりますと先程15時半過ぎ、自分が今回の誘拐事件の犯人だと名乗る男が現れてきたようです。まだヒカル君は発見されていませんが、男は自分の部屋に居るから早く助けてあげてくれと涙ながら警官に訴えていた模様です。』



何故あの時、父さんは俺を残して母さんと死んだのだろう。あの時、家族一緒に死んでいたらこんな苦しい思いはしなくてすんだのに。部屋に一人ぼっちで居た俺をたたき起こしてでも殺して一家心中すれば未来も過去も大好きな人を傷つけないですんだのに。



「ナツカワさんさ、動機は?なぁーんでヒカル君を誘拐しようとしたの?」

「嫌い…だったからです。」

「はぁ、?」

「俺、小さい時に家族無くして…すげぇ惨めがられて友達もいませんでした。だから笑顔が眩しくて、可愛いヒカル君がっ…ヒカル君が憎かったんです。殺してやろうと思いました。」



もっともらしい理由(ワケ)を嘘で固めて啜り泣く。捕まったのが怖いから泣いているのではない。ひぃクンが嫌いだと嘘の自白をする自分が嫌で泣いているんだ。

あんなに思っているのに簡単に嘘がつけるものだ。本当に情けない自分が憎くて憎くてたまらない。



「マスコミもすげー騒いでるからさ。理由は捻くれていて良いと思うよ。」

「・・・。」

「きっと面白おかしく書かれるんだろうよ、お前も…ヒカルくんも。」

「えっ、」

「人気子役を誘拐した犯人の恐ろしい性癖!とかって…いろんな風に書かれるんだろうな、」



世間に対するひぃクンの品格が落ちたならそれは全て俺の所為だ。ひぃクンに罪は無い。それでも俺は誰かに反論することさえ出来ない。

1番大切にしたかったモノが壊れて辺りが真っ白に見えた俺は誘拐をしようとした過去の自分を酷く謗った。









何ヶ月も法廷に通った俺は納得のいく判決内容に息を飲み、裁判官に深く頭を下げた。

証人となるひぃクンのマネージャーさんやプロダクションの社長さんにも頭を下げゆっくりその場から出て行く。きっと彼らは俺の危うさを分かっていたから本人と関わらせたくなかったのだろう。



「判決、被告人を懲役2年3ヶ月…執行猶予3年の刑に処す。」



苦い表情をしながら法廷から去るひぃクンの関係者。何を思ったかひぃクンは、無事なのか。メディアで面白おかしく言われていないだろうか、気が気で無かった。

3日間、俺が犯した罪は重い。でも更生して世間に戻ったらまたキミが笑顔で踊る姿を見たいと思うし、綺麗に笑うキミの姿を忘れたくない。



「…夏川さん、アンタ、泣いてるの?」

「っす、すいません…」

「そんなに好きだったの?ヒカルくんのこと、」

「はい…?」

「矛盾しすぎ、嘘付くの下手すぎ、ヒカルくんのこと嫌いならファンレターなんか送らないでしょ?124通、最高記録だって。」



俺の異変に気付いた同行していた警察官は俺が自分とひぃクンを守るための俺の嘘を見破った。124通全て見たわけではないが、熱狂的なファン以外こんなことするわけないと白い歯を剥き出し笑っている。

いつかひとり外に出たら…ひぃクンのことは考えない、ちゃんとしたまともな人間になれたらいい。そう、思いながら与えられた罰を飲み込んだ。





[*Ret][Nex#]

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