[携帯モード] [URL送信]




木瀬 ヒカル様へ

こんにちは夏川です。ボクは3日前、ドラマの収録があるとネットに流れていた裏情報を見てキミと出会った公園に行きました。ひまわり公園は家から遠く、道が分からなくて大変だったけど最初は純粋にキミを見たくて、お話してみたくて。ボクが想像していた小さな手に触れてみたかっただけでした。それなのに想像していたより、キミは美しくて簡単にボクを魅了しました。最初から犯罪者になるつもりは全く無くて、一時的な感情では言い表せないぐらいキミを好きになっていました。

何通も送った嫌がらせに近いファンレターでキミやマネージャーさん、たくさんの関係者さんに迷惑をかけてしまってごめんなさい。プレゼントとして送ったグローブは使ってもらえるはず無いと分かっているので大丈夫です。

キミに会えたことはボクにとって人生最大の幸せできっとこの先どこに居たって変えることの出来ない幸福でした。本気でキミを好きになって罪まで犯したバカなファンはボクぐらいしかこれからも居ないだろうから安心してください。

キミのさらなる発展と芸能活動の充実をどこかで、遠くからずっと祈っています。どうかお元気で、さようなら。

       夏川月彦







なつ川月ひこさまえ

こんにちわ。
今日はサイン会で大さかに行きました。たこ焼きも食べておなかいっぱい。カニの動くかん板も見てとっても楽しい一日でした。月ひこはげんきかな、お返じ待ってます。

       木せ 光



なつ川月ひこさまえ

こんにちわ。
今日は野さいスープの新シーエム発表でテレビの取ざいをうけました。じけんのことも聞かれたけど、ボクは月ひこのわる口は言いません。なんでかと言うと、月ひこはだれよりやさしくて本とはいい人だって知ってるからです。お返じ待ってます。

       木せ 光



赤いポストからたくさん溢れた白い手紙は全て同じ差出人、俺が傷付け犯した木瀬光クンからのものだった。

久しぶりに自宅に帰った俺は大家さんから出ていくように言われ、清掃員の仕事も無くなっていた。家も金も何も無い俺の心に積もったたくさんの手紙は一つずつ、汚い字で書かれていたためひぃクンからのだと自意識過剰に思った。



「夏川さん、ですか?」

「えっ…?」

「こんにちは。私、ドーフプロダクションの【染井 義信】(ソメイ ヨシノブ)と申します。今日はこの間の事件のことで夏川さんにお話があって来ました。」



地に落ちた手紙を拾い集め一枚一枚、違う内容が書かれたそれを一生懸命読んでいた俺は隣に立っていたスーツ姿の男性を見て一礼した。

ドーフプロダクションと聞いて素直に驚いたのだが、自分が犯した罪を思い出すことでその無駄な緊張は簡単に解かれた。



「光の手紙は読んでいただけましたか?」

「…は、」

「これは光本人が貴方に書いた手紙なんです。光は貴方に会いたいと、事件以降私達に訴えていました。今日、貴方が出所されると聞いて来たのですが…」



突然アポ無しで来たひぃクンのマネージャーさんは俺が握りしめていたこの紙切れはひぃクン本人が書いた手紙と打ち明けた。

まさか犯罪者にまた会いたい、散々犯して苦しめた俺に会いたいなんてくだらない嘘を信じまいと謝りながら部屋に入ろうとした。

すると、



「ヒカルは貴方を待っています!貴方に会うまで活動はしないと言っているんです!ですから夏川さん、私と一緒に来てくれますか?お願いします!」

「な、えっ…今なん、て…」

「ヒカルは芸能活動を続けたくないと言っています。貴方がどれだけヒカルを傷付けて、怖い想いをさせたのか…夏川月彦はいい人だからと事件当初のことは何も語らない。何も言ってくれないので私達は何も出来ないんです、」



人気子役、木瀬ヒカルの危機を忌避して頭を下げたマネージャーの染井さんは俺が犯した罪を何も知らず涙ぐみひぃクンの現状を語っていた。

それにどうすることも出来ない俺は見る手紙毎に必ず書かれた「お返事待ってます」の一文が気になって、嘘でもドッキリやヤラセでも俺に会いたいと思ってるそのことが嬉しかった。





[*Ret][Nex#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!