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kidnap sparkle



最近、買い替えた大きな42型液晶テレビで見るキミはとても美しく愛らしい。その罪作りな輝かしい笑顔で何万人もの人を幸せにする。そんなキミにいつしか俺は恋をしていた。

今年流行ったヨルヒフードのコマーシャル。トマトの形をした帽子をかぶって優雅にお尻を振る小さなキミはジーンズ素材のパンツが良く似合っていた。だから野菜スープのパッケージに付いているマークで応募するヒカルクンストラップももちろん手に入れた。ファンレターだって山ほど送った。



木瀬ヒカル様へ

はじめまして。
お仕事お疲れ様です。
ボクは野菜スープのCMでひぃクンのファンになりました。トマトダンスもCD化でとても楽しみです。

これからも元気に頑張ってください。

       夏川月彦



自分の順番が回ってきた時、手が触れただけで胸がドキドキして何も話せなかったけど、ファンクラブ限定の握手会やサイン会には欠かさず行った。

ラジオパーソナリティとしてスタジオ収録している時もファンに混ざってガラス越しからずっとキミの姿を見つめてた。



木瀬ヒカル様へ

こんにちは、夏川です。
今日もラジオ局に行ってキミの姿を見ていました。お給料が入ったのでひぃクンの好きな野球のグローブを一緒に送ります。是非使って下さい。

       夏川月彦



多分、俺が彼に送ったファンレターは100を超えただろう。それなのに返事は一度っきり、明らか本人が書いた文章ではないモノが届いただけで当人からの手紙は届かなかった。



夏川月彦様へ

この度はファンレターありがとうございました。これからも木瀬ヒカルをよろしくお願いします。

  ドーフプロダクション





Blaze...

眩しい光に身を晒し、
枯れた向日葵―







法により刑罰を科せられる行為“犯罪”を犯したものは大抵、罪の意識など無く道を外してしまうと言う。

きっと今の俺も一緒。
何も悪いと思っていないこの心は誰に咎められようと変わらないと思う。

因みに俺には失うモノが何も無い。だから一時(イットキ)だけ身体が満たされればそれで良いと半ば安易に考えていた。



「こんにちは、」

「こ、こんにちわぁ…」

「キミ、トマトダンスの木瀬ヒカルクンだよね?」



優しい大人を演じてひぃクンに近付いた俺は周りを気にしながら小さなおててに触れてみた。ふんわり柔らかいもちもちの肌は簡単に俺の体を蝕んで、下半身をゾクゾクさせた。



「うわぁ…こんなところで会えるなんて嬉しいなぁ。俺、ひぃクンの大ファンなんだ、」

「あ、ありがとぉございます。うれしいですっ、」

「そう。じゃあさ、この後お兄さんとお食事行こうよ。ひぃクンの好きなハンバーグ、一緒に食べたいんだ。」



このロケ地でプロデューサーやマネージャーを待っているであろうひぃクン。たまたま会ったように見せかけ近付いた俺は隙あれば彼を誘拐してしまおうと考えていた。

最初は怪しまれないように軽い会話を繰り返し。断られることを分かっていながら何度もひぃクンをお食事に誘った。



「すいません、このあと収ろくがあって…今はマネージャーさんを待ってるので行けませっ、

「なんで。」

「…えっ?」

「なんでお手紙のお返事くれないの?こんなにひぃクンのこと好きなのになんで分かってくれないの?」



ちょこんとベンチに座っていたひぃクンは足をもじもじさせながら強く豹変した俺をじっくり見た。

その時はっきり気づいたんだ。そうだよ…そう、その嫌そうな視線。純粋無垢な身体も心も全てこの手で汚したいと思う抑えの効かない感情。

誰も分かってくれなくていい。
誰も許してくれなくていい。



「ひぃクン、」

「わわああっ!!」

「もう我慢出来ないんだ。今までずっとずっと耐えて生きていたんだ。だからごめんね、」



ぽつりと小さな声で謝った俺は一瞬、こんなことしちゃいけないとはっきり思った。だけど柔らかい腕を掴めば全て手遅れ。

罪の意識も無い、何も失うモノは無いはずだった俺はこの日から確実に闇の世界へ飛び込んでいた。





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