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課外授業D



吉野クンが水泳を習っているらしいのでボクはビート板を引っ張ってもらい泳ぐことにしました。吉野クンはカエル泳ぎやクロースと言う泳ぎも出来るみたいで女の子の注目の的。

高橋クンと山本クンもクロースが出来るみたいでキャアキャア言われてました。



「ねぇねぇ吉野クン、ボクも早くクロースが出来るようになりたいな。」

「んんっ?いたるはまだ頑張らないとクロールは出来ないな!ちゃんと教えてやるからビート板で頑張ろうぜ!」

「うん、わかった、」



ボクが褒められたい相手は吉野クンでも女の子でもありません。5年生の泳げない男の子にマンツーマンで教えている黒木先生です。もしボクが泳げるようになったらきっと黒木先生はびっくりして頭をなでなでしてくれるに決まってます。

黒木先生の手は厚くて大きくちっちゃなボクの頭がすっぽり収まります。だからボクは頑張らないといけません。



「おぉ!いいぞ、いたる!俺無しで一回やってみろよ!」

「うんっ!ビート板であっちまで泳いでみるよ!」



コツを掴んだボクは高橋クンや山本クンが居る向こう側へ、今度は吉野クンのサポート無しで行くことにしました。吉野クンは俺が先にゴールで待っていると言います。

一生懸命練習したボクは壁をおもいっきり蹴って勢いよくスタートしました。ちゃぷちゃぷと足をバタつかせ、何度も水面に顔をつけます。



『いたるーっ!頑張れ!あとちょっとだ!』

『はなむらー!足にあんまし力入れんなよー!』



空に顔を上げると吉野クンや山本クンの声が聞こえてどんどん近付いているのがわかります。

それと同時に足も腕も疲れて来ました。ぎゅっとビート板のはじっこを握っているため指もジンジン痛いです。



「いたるっ!」

「よ、よしのくっ…あ、あっ…あれれっ?」

「いたるっ!!た、大変だ先生っ!いたるが、いたるが溺れたっ!!!」



力尽きてしまったボクはビート板を離して足を地面につけようとしました。でも、いくら指先を伸ばしても足がつかなくてついには溺れてしまいました。

何度も空を目指して顔を上にあげますが、全く空は見えなくてどんどん沈んでいくだけ、息がとても苦しくて続かなくなってきます。



『花村クン!』

「…んっ?」

『花村クン、しっかりするんだ!大丈夫かい!聞こえるかい?』



ゆっくり沈んでいくボクをガバッと空にあげてくれたのは厚いおっぱいに太い頚、顔をしわくしゃにして泣きそうな表情の黒木幸雄先生でした。

唾か水しぶきか、分からない水滴が顔にかかってさらに飲んでしまった水を吐き出そうと咳込みます。



「せんせっ、ゴホゴホッ!」

「白川先生、私は花村クンと保健室に行ってきます!5年生はとりあえず更衣室に戻って着替えてて!」

「く、くろき先生…だ、だいじょぉぶです。5ねんせぇが…みんながいるから、」



ボクが何を言っても聞いてくれない黒木先生はお姫様だっこでボクを保健室まで連れていってくれました。ボクの顔色を伺いながら焦躁した表情の黒木先生はギュッと強く抱きしめて離しません。

その温もりが妙に心地の良いボクは先生の頚にかかったホイッスルを握りしめ、先生に包まれていました。





[*Ret][Nex#]
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