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無防備極まりないキミの後ろを追いかける。黄色い帽子を被りてくてく歩く小さな身体、細い脚と、ぷりぷりとしたお尻。早く、早く真っ先に誰よりも何よりも速く。手に入れなきゃいけない、ずっと欲しかったもの。

いますぐキミが欲しいから、お日さまの香りがする頭を胸に引き寄せ口を塞ぐ。すると小さな身体はパタリと落ちて簡単にボクの手中に収まった。



「かっ、かわいいっ…」



白い肌はなめらかで傷一つ無い、絹のような触感。真っすぐ切り揃えられた黒糸はとても繊細で光の反射で輪を描く。睫毛が長く瞳を覆い隠す瞼も愛くるしくて早急にこの場で口づけて犯したい衝動に襲われた。

きっとこれから楽しい未来が待っていて、部屋に閉じ込めれば不思議。キミはボクのものになって一生愛し合って生きていく、そういう未来に決まっているんだ。



「んんぅっ、」

「キ、タ、ノ、ク、ン!」

「ふぇっ…?」



薬から目覚めて起きたキミの左胸に付けられた名札をなぞり名前を呼んでみる。名前はキタノと言うのか、初めて知った。

サインペンで力強く書かれた拙いひらがなも可愛くて何もかもがかわいすぎて身体がもう限界だった。



「ん!な、なにこれぇっ!」

「くすっ、無理だよ…キタノクン。自分の腕、ちゃんと見たら分かるでしょ?」

「んゃっ、やだよぉ!こわいよぉ!たすけてよぉ!」



無力なキミが泣き叫び、助けを求めるその顔を。その悲しげな顔を早く甘美な表情にしたい。行き着いた想いにボクのそそり立つ下半身で犯して、病み付きになるくらい犯して陶酔させてみたい。



「キタノクン。お兄さん、キタノクンと今からやりたいことがあるんだ。」

「んっ、んぅうっ…」

「ちょっとだけ。ちょっとだけ気持ち良いことしてお兄さんと遊ぼう、」

「やぁんっ、やだあっ!やだやだっ!」



身動きの取れない身体に被ってボクは深く唇を重ね合わせキミの味を確かめた。

柔らかくて甘いキミの唇と自分の唇がピッタリ重なって込み上げる嬉しさがいっぱいにどぼどぼ溢れて狂いそうになる。



「んちゅっ…、んんっ、」

「やっ、ふ、ふぇえっ…」

「き、きたの…くんっ、あっ…あっ、」



恋ってすごい心地好い。
愛ってすごい気持ちが良い。

下半身が張り詰めて服なんか身につけていられないから脱いで勃起したブツを見せ付けてやろうか。さらに恐怖を与えてどうしたいんだ。

でもそんなこと狭い脳で必死に考えたって正しい答えなんか見つかるはずがなかった。なぜなら今、この瞬間が恐怖なんだから。愛でも無い、溜めすぎた欲望の果て。

泣きわめく小さな身体に覆いかぶさる自分自身はかなり大きいはずなのにちっぽけで。恐怖と絶望に満ちた幼いキミの顔が変わることは無かった。

そして、10日と言う短い時間が与えたボクの未来は哀しみに包まれた色の無い世界だった。





achromatic rose





ゆらゆら揺れる電車で2時間、ボクの隣に座る白髪混じりの男はスケジュール帳を見ながら陽気な口調で電話をしている。

ドーフオークションが終わって3日経った今日、何が起きるか分からないボクはボクを買った【五百雀 景至】(イオサキ ケイシ)と大阪に向かっていた。



「んん…イーストクラウドさんはめちゃめちゃ有名やからね。なぁ、サキちゃん。」

「はい?」

「あ…そうや、サキちゃんは関東の子やから知らんのか…」



五百雀氏は初めて会った時から脳天気な人で、歳の割に考えも幼稚で子供みたいな人だった。かえって気楽なのかもしれないが、やはり性を生業に生きている人間だけあってスケジュール帳には予定がびっしり。

幼稚なのは悪魔でフリ。本当は金儲けしか頭に無い冷徹な人だろうと思った。



「んなあ、サキちゃーん!ガチガチに緊張せんでえぇんやから!」

「あ、…はい、まぁ…」

「ほら!肩の力抜いて!なーんも怖いことなんか無いから!なっ!!」



初めて故郷を離れたボクは一体どんなことをして生きるのだろう。どんな痛みに耐えなければいけないのだろう。

そう考えて何度も考えて行き着く先に必ず思い出してしまうのは腰に咲いていた薔薇、悪夢を運んだ黒薔薇が描かれた肌だった。





[*Ret][Nex#]

あきゅろす。
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