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【白藤 玲二】(シラフジレイジ)の父親は今の時代、主流となっている折れないシャープペンシルを開発したホワイト文具の社長であった。彼には7歳上の姉と1歳上の兄が居て姉は財務省の役人と結婚、兄は大学生でつい最近交通事故で亡くなってしまったらしい。
その葬式での出会い。全てはそこから始まったんだ。
「おにーさん、セートにぃにのおとーとなの?」
「あぁ、そうだよ。」
「ふぅん、セートにぃににはおとーとがいたんだね!」
両親の居ないボクが4つの時、よく遊んでもらっていた【白藤 西斗】(シラフジ セイト)さんのお葬式。引き取られたおばあちゃん家の近所にある学生寮に行ってはいつも西斗さんと遊んでいた。
まだ幼かったからか西斗さんが死んで居なくなったなんて信じられないボクは式場の外でただ呆然と立ち尽くしていた人に話しかける。そして彼こそが白藤玲二であり、のちにボクを誘拐してレイプした奴であった。
「おにーさんはセートにぃにとなかよし?」
「いいや、全然。」
「なんでぇ?なんできょーだいなのになんでなかよしじゃないのぉ?」
作られたように黒い髪と鮮やかな漆黒の瞳、長い手足は細めで男らしい体ではない。
ボクを見もせず二言三言話すと彼はポケットに手を入れたまま歩き式場から去ろうとする。
「じゃあねぇー…セートにぃにはなんのりんごがすきだかわかる?」
「・・・。」
「ねぇねぇ、おにーさっ
「黙れクソガキ。さっさとママんとこ戻ってろ、」
「んっ…ぇ、うぇっ…ま、…おばあーちああゃん!!!うぇえっーんっ!!!!」
あの時、初めに出会って話しかけたのは白藤玲二ではない。紛れも無い、好奇心旺盛で無知で泣き虫なボクだった。西斗さんの兄弟と言う点と不思議さと孤独な瞳に引き込まれるように。
泣きわめくボクを見てマズイ顔をした白藤は式場の駐車場にあった木のベンチにボクを座らせ必死に泣くのを止めるよう言っていた。
「お前、母親いないのか?」
「うん。」
「悪かったな…変なこと言って怖がらせて。」
「うぅん、だいじょぉぶ。ちょっとコワかったけど…おにーさんとおはなししたかったし、」
「…お、俺と?なんで?」
目の前に居る青年は紛れも無い、人間で一人の「人」としての感情があるただの「ヒト」
人格を認めたあの瞬間からボクは白藤にとって大切な存在になり、かけがえのないモノになっていたらしい。
「セートにぃにがとぉくにいっちゃってかなしいのはボクもいっちょだよ。だからなかないで、おにーさん。」
◆
でも、白藤 玲二はもうこの世に存在しない。
ボクの知る限り白藤は“キタノクン”だけを愛していて“キタノクン”じゃなきゃ反応しなくて、“キタノクン”じゃなきゃ未来も信じられないほど「キタノクン」に固執していたからだ。
「愛しい愛しいキタノクンが目の前におるんやで?それも俺に犯される5秒前や。どうしたらえぇと思う?しらふじーっ、」
「っ…まさか、」
「まさかやないんやで?ホンマにホンマのキタノクンやねんもん。チュウだってされちゃうし、エッチだってされちゃうで?」
「そ、そんなっ…や、やだ!」
今にも泣きそうな声を出してボクらの間に割って入る東雲社長。いや、白藤は想像以上に苦しそうな表情でボクを見つめている。
一方かなり強い力で突き飛ばされた五百雀氏はくつくつ笑いながら立ち上がりボクの襟足をかきあげ白藤にある跡を見せ付けた。
「サキちゃんの、」
「っ…、!」
「白藤、項のとこの噛み跡…これ、お前やろ?キタノクンのカラダで間違いないよな?」
「あっ…あ、あああ…き、キタノクン、キタノクン…、」
「ったく、近寄るな!犯罪者のくせに何でまた触れようとするねん、」
先程とは逆に肘で鳩尾を殴られた白藤は苦しさに息を大きく吸い込み何度も嗚咽を繰り返す。
その光景はいつか見た黒薔薇の最期と似ていてもう一度触れたいボクは悶える彼をただ見ていることしか出来なかった。
[*Ret][Nex#]
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