[携帯モード] [URL送信]
drop feather



ママは去年、小羽ちゃんが生まれてお仕事を辞めて、家に帰ればおいしいご飯を作ってボクの帰りを待っていてくれます。

パパは最近、キカク課への移動が決まって大忙しです。夜も帰りが遅く、大きなファイルをたくさん持って帰ってきます。



「もしもし、」



日曜日、ママと今日は近くのスーパーに行く予定でしたが、突然のお電話です。

相手の声につられてママのお顔がどんどん引き攣れて、くしゃくしゃになります。



「…つばさ、」

「んぅっ?ママ、どうしたの?」

「伯父さん、恭臣伯父さんが交通事故に遭ったらしいの…ママ、今から病院に行ってくるから小羽を頼むわね。」



急いでバックを掴んだママは車に乗って伯父さんの元へ行ってしまいました。
まさかの出来事にボクは茫然と立ち尽くします。


あの箱根以降、一ヶ月。
伯父さんは姿を見せませんでした。そして受けた連絡が交通事故です。


ボクはあの言葉を思い出しました。

―つばさがそう望むなら。

やっと理解出来た言葉の意味に、何もすることが出来ない小さな身体を抱きしめます。寒くないのに身体は寒く、全身に凍りが貼付けられたみたいにじわじわ痛みます。


伯父さんのこと嫌いなんて言っちゃったけど、実際にこんなことが起きると居てもたっても居られなくて、ボクは声を上げて泣いてしまいました。









伯父さんは車に撥ねられて全治1ヶ月、右手を骨折しただけで済んで体調は良好のようです。

パパとお見舞いに行くと、伯父さんは窓際のベッドで外を眺めながらため息をついていました。久しぶりに見た横顔は変わらず男前です。



「お兄さん、」

「駆クン、つばさも…わざわざお見舞いに来てくれてありがとう。」

「お兄さん、身体大丈夫ですか?美雪から聞いてビックリしましたよ。急いで駆け付けたかったのですが、仕事が忙しくて…すいません。」



心配するパパにありがとうとお礼を言う伯父さんはボクの顔を見てくれません。もしかしたらあの時のことをまだ怒っているのかもしれません。



「あの、恭臣おじさっ

「駆クン、缶コーヒー…飲みますか?俺、暖かいの買ったつもりだったのに冷たいのと間違えてしまって…」

「あ、いいんですか?」

「えぇ、どうぞ。」



ボクの言葉を遮るように伯父さんは動く左手でパパに缶コーヒーを渡しました。もちろんボクには何もくれません。

伯父さんは完璧にボクを無視しているようです。



「ん、つばさもなんか飲むか?パパが買ってきてあげるから、伯父さんとお話して待っていなさい。」

「う、うんっ!」

「・・・。」



気まずい病室にボクと伯父さんを残してパパはジュースを買いに行きました。

黙って俯く伯父さんに話しかけることも出来ないボクは、大きなパイプ椅子に腰をかけます。
冷たい椅子からする軋んだ音は静かな病室にこだまします。

それくらい此処は静かです。



「…つばさ、」

「っはい、」

「つばさに言われたからとかじゃないからね。伯父さんがよそ見していただけなんだ。」



右手を庇うようにボクの頭を撫でた伯父さんは、綺麗に笑ってくれます。

優しくなったり、怒ったり、エッチな顔をしたり、ボクは余計伯父さんが分からなくなりました。





[*Ret][Nex#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!