snap feather
あのキスの後から伯父さんはますます積極的にお家へ来て、ボクの身体をモミモミしてくるようになりました。
お風呂場だけでなく、幼稚園から帰って来たボクを玄関で唐突に抱きしめてきます。
そのあとは何も言いません。
伯父さんはただ、黙ってボクを見つめて無表情でくちに何度もチュウをします。
「つばさっ、」
「んむぅっ…おじしゃんっ、」
「つばさはムギュムギュとチュウ、どっちが嫌いだい?」
変な顔の伯父さんに変な質問をされます。はっきり言えばどっちも嫌です。
ムギュムギュは痛いし、ちゅうはコッチのおっぱいがチクチクするからです。
でも、伯父さんはどちらかと言います。
だからボクは答えられません。
「そうか、」
「おじしゃんっ?」
「はははっ、俺は何を聞いているんだろうな。つばさ、正直に言っていいよ。“本当はもう伯父さんの顔も見たくないのだろう?”」
それは確信でした。
伯父さんの言葉通りかもしれません。だけど、頷いたら伯父さんが嫌な気持ちになります、それだけはボクにも分かります。
「そんなことにゃいよっ、やすぉみおじしゃん。」
「・・・。」
「ほんと、ほんとっ!」
ボクは初めて嘘をつきました。
これで一安心です。
伯父さんは笑いながらボクをギュッとしてくれます。
でもこの瞬間から確実に、ボクの思い違いは歪んで元に戻れなくなっていました。
伯父さんの言葉に頷いていたら、未来は逆に良い方向へ変わったかもしれません。
◆
ボクが幼稚園を卒業して小学生になると伯父さんはお家に来なくなりました。
友達と毎日サッカーを公園でするようになって、ママも小羽ちゃんとお家に居ます。
だから伯父さんがお家に来る意味も無くなったのです。
それと引き換えに伯父さんは休日必ずお家に来てボクを遊びに誘ってくれます。
あんま嬉しくないけど、仕事で忙しい伯父さんがわざわざ休日にボクを誘ってくれているから、ゴールデンウイークは仕方なく遊園地に行きました。
「つばさ、伯父さんと今日は箱根にお泊りだ。」
「え?だって今日は遊園地、」
「つばさの為に今日はつばさの大好きな箱根のホテルを予約して来たんだ。」
車の運転をしながらボクに嘘をついた伯父さんは箱根に向かって車を走らせていました。
毎週土曜日にはお買い物、日曜日はテーマパークに連れていってくれる伯父さんが初めて宿泊すると言い出しました。
何も用意していないボクはただビックリです。
「おじさんっ、ママとパパにちゃんと話さないと…お着替えとか歯ブラシとか、」
「大丈夫、つばさの分は全部用意してあるよ。伯父さんに任せて。今日はたくさんおいしいモノを食べようね。」
優しく言っているようだけど、その言葉を聞いてボクは伯父さんをワガママな人だと思いました。
大切なゴールデンウイークをボクのために費やす伯父さんの考えがわかりません。
病気だから少し遊びたいのかもしれません。だけど、何故ボクとなのかはわかりません。
「おじさん、病気は平気なの?また、体調悪くしちゃったら大変っ
「心配してくれてありがとう。その病気もね、俺はつばさにちゃんと話しておかないといけないね。でも、そんなことはどうでもいいんだ。今日からつばさと二人きり、楽しい二日間を過ごそうね。」
「…うんっ。」
ボクは嬉しくなさげに素っ気ない返事をしました。
伯父さんの態度がガラリと変わったのはこの二日間を過ごしたからでしょう。
どんどん黒くなる未来に向けての幕開けに、伯父さんは深くボクを陥れました。
[*Ret][Nex#]
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