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つばさに『大切な人が出来ました』と言われた日はちょうど俺の誕生日月前、1月26日。砂浜での再会から5年回って50歳を迎える年にとうとう区切りをつけられてしまった。

雰囲気的にも年齢的にも声をあげて泣くことは出来ないため、ちょっと苦しく薄ら笑い。その宣告を受けた時は心の底から笑っておめでとうとは言えなかった。

つばさを生まれた時からずっと好きだった俺からすれば最近知り合った分限で一生を共に生きていきたいなんて馬鹿馬鹿しい話しだった。



「恭臣さん、」

「・・・。」

「いっぱいありがとうございました。ボク、絶対幸せになります。」



淡々と話すつばさを愛しているはずの俺だが、その時ばかりは『お前なんか幸せにならなくていい』と思った。

二人一緒に居て初めて幸せになれる。その枠組みから抜け出したつばさに“幸福(シアワセ)になる資格は無い”と酷なことを考えた。



「だから最後に恭臣さん、ボクをギュッてして下さい。」

「・・・。」

「恭臣さん?」

「あっ、あぁ…」



答えもせず茫然と立っていた俺は何かしらのアクションをしながら小さな身体を抱きしめた。

そのぬくもりをテレパシーに変えてつばさの心に問い掛けるよう伝えた。(―キミが居るべき場所はココなんだよ?キミを幸せに出来るのは伯父さんだけなんだよ?)

ふつふつ沸き上がる欲望。何を言っても変わらない運命を俺は再び憎んだ。



「つばさ、」

「ん?」

「愛してるよ。」



これはただの負け惜しみだろうか俺は強引につばさを押し倒しこれ以上話さないよう口を唇で塞いだ。突然の出来事に苦しみ悶えるつばさはひゅっひゅっと息を漏らしている。

一緒になれないのならこのままこの体ごと潰してしまおうか。自棄(ヤケ)になった俺は下半身をぐっとつばさの腰に押し付けた。



「んや、恭臣さんっ…だめ、だめですっ、」

「つばさ、」

「わっ!も、あ…あああっ!」



重力に従い床に倒れたつばさを即座に組み敷いた俺は同時にズボンを脱いだ。

既に立ち上がったものを無理矢理口に挿し、頭を掴み出入りさせる。その一物はテラテラ光り、早く中に押し込めたい欲望の塊になっていた。

同時に空いてる片手で布越しから浮き出た乳首をいぢくり回しつばさに微妙な法悦を与える。彼が幼い頃から自分好みに開発したこの身体は俺無しじゃ生きられないはずなのだ。



「やすおみさんんっっ、」

「どうした、?」

「挿れてくださいっ。おしりにおちんちんっ、恭臣さんのおち、

「ダメだ。」

「な、なんでっ…」

「もうつばさは俺のモノじゃないからだよ。早く帰って大切な人に会いに行きなさい。」



もちろん俺だってそうだ。つばさが居なきゃ生きていけない。彼が生まれてから24年もの間ずっと愛して、抱きしめて、寄り添って生きてきたのだから。

しかし、ひとつだけ俺はつばさに大きな嘘をついている。それは最初からお互い愛し合い生きてはいないという事実。俺が無理矢理身体をつなげて陶酔させただけ、つばさの俺への愛は“偽り”だということ。

そう考えると本気で愛している自分がどんどん哀れになる。



「つばさ、指輪返して。」

「・・・。」

「こんなもので長い間、縛ってごめんね。だけどこれからつばさは自由だ。美雪お母さんが望んでいる“翼”になるんだよ。」



左翼は俺、右翼はつばさ。
永遠を誓ったあの日から俺達は二人でひとつのはずだった。

玄関でにこりとした表情を作りつばさを見送った俺は一回小さなため息をついた。ため息だけじゃ足りない絶望は真底から徐々に込み上げる。そしていつの間にか俺は声をあげて泣いていた。

この歳になってまで本気で妹の息子を愛している。

情けない自分の欲望を呪い、涙が涸れるまで。声が嗄れるまで泣きつづけた。





[*Ret][Nex#]

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