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優しい伯父さんも強引な伯父さんも、ボクは朝比奈 恭臣と言う人間が大好きでずっとその影を追いかけていました。

初めての出会いはボクが生まれた時。ママに抱かれた病室で初めて恭臣伯父さんに出逢いました。



『赤ちゃん、名前はなんて言うんだい?』

『“翼”よお兄ちゃん。ずっとずっと羽ばたいていける、広大な空に舞う綺麗な鳥みたいに自由に飛び交う大きな羽根を持った“ツバサ”そう言う意味を込めたの。』

『そうか、とってもいい名前だね…寝顔はまるで天使のようだ。』

『でしょぉ?綺麗な顔は駆さん譲り。もうママ、つばさにデレデレよ。』

『あぁ、この子の顔を見ているととっても胸がドキドキする…不思議だな、まるで恋しているみたいだよ。』

『んもうっ!お兄ちゃん、褒めすぎよっ!恥ずかしいからちょっと離れてっ!』

『ははは、すまない。いや、でも本当だよ。この子はすごい、俺の心を息づかせる。』

『いやぁねぇ、お兄ちゃんったら!』




その頃の記憶はもちろんありません。

それは伯父さんが語った記憶の断片。伯父さんの恋はそこから始まったらしいのです。



「赤子相手に胸がドキドキして身体が熱くなるなんて…ちょっと異常なんじゃないかって感じたんだ。そんな言葉も話せない時から好きだったなんてなぁ、伯父さん。本当に気持ち悪いだろ?」



伯父さんの心からの言葉に胸が痛みます。伯父さんは全然気持ち悪くなんかありません。

むしろ、生まれた時からボクだけを見ていてくれたなんて、嬉しすぎて言葉も出ません。

深い愛が心地好いボクにとっての言葉は想いを再燃させるだけです。



「叶わないなんて最初から分かってたさ。誰に言われなくとも…俺自身、身に染みて分かる。だから逃げるようにヨーロッパへ行ったんだ。あぁ、本当…何をして生きてきたのか、18年の長い月日を…俺はつばさに、」

「おじさんっ、」

「何、言いたいことがあるならはっきり言いなさい。俺は言われればなんだってするか、

「好き、ですっ…恭臣おじさんっ。ボク、おじさんのこと好きなんです。」



波より強く、波より早く。
ボクは目の前に居る大好きな恭臣伯父さんに自分の気持ちを伝えました。

伯父さんは驚き目を大きく開眼させ、ボクを見つめます。
結果なんて分かっています。ボクらの関係だって、性別だって最初から決まっていると。何も変わらないと全部分かっています。

だけど自分の想いを全部伝えられたから。ボクは長く纏わり付いていた重荷から解放された気分になりました。









寒い季節も終わり鳥の囀りも聞こえる明るい春、新学期になりました。

ボクは行きたかった大学に進学して、毎朝電車に乗って通学をしています。もちろん高校時代の友達は居ません。一人で行って一人で帰ってきます。



『次はひまわり町、ひまわり町、』



夕方、丁度帰宅ラッシュに揉まれながらボクは電車を降りました。

ひまわり町駅からは車で迎えてくれる人が居て、その車に向かって笑顔で駆けていきます。



「おかえり、」

「ただいま、恭臣さん。」

「今日は俺の家でお祝いしよう。つばさの進学記念に、おいしいものたくさん用意したから。」



車の中に入っていたケーキの箱を指差しながら恭臣伯父さんは顔いっぱい零れそうな笑みでボクを迎えてくれました。

今日は久しぶりに二人きりパーティーをする予定で、ディナーのメニューは全部恭臣伯父さんのチョイスです。

ボクはわくわく、胸をときめかせ車に乗ります。



「つばさ、」

「ん?」

「これ、…ね。」



発進する前、思い出したように伯父さんはボクの手を引きました。

左手にすっと嵌まる指輪が二つ。キラリと光り二人、笑顔で見つめ合います。

このひと時が1番の幸せです。今、彼とともに生きているんだと深く愛おしく感じることができる最高の瞬間です。



「つばさ…」

「はいっ、」

「生まれてきてくれてありがとう。この世界に…、俺の隣に居てくれてありがとう。」



あの頃と変わらない恭臣伯父さんの真っすぐな気持ち。まるで息を止めて堪えていたあの辛い日々が全部嘘のようです。

ボクは伯父さんの透き通ったくちびるに深く自分を重ね、心から心へ『愛しています』と伝えました。





[*Ret][Nex#]

あきゅろす。
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