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伯父さんはボクの存在に全く気づいておらず。どうしようか悩んでいるよりボクはその場から離れた方が良いと思い、後ろを振り返りました。

胸のドキドキが耳に鳴り響くほど3年ぶりに見た伯父さんの姿はボクを苦しめます。そして10年もの長い月日が一気にフラッシュバッグしてより胸を締め付けます。



(では、私は失礼します。)

(お疲れ様でした。)



側近であろう眼鏡をかけた女性と共にその場から去る伯父さんの指にはなにやら光るものが付いていました。

影を目で追うボクは身体も進んで、車に乗った伯父さんを捕らえます。



「伯父さんッ!恭臣伯父さんッ!!」

「つばさ!」

「えっ、」

「何でここに居るんだ?」



紺の車は大きなカーブを描き、遠くに姿を晦ましました。

後ろからボクの手を引いたのはパパで、すごく驚いた表情でボクを見ていました。



「どうしたの?」

「んッ、パパ…」

「ママは来てないんだね。つばさ一人でお買い物なんて珍しいじゃないか。」



新商品発売で機嫌も良く、仕事中と言うこともあってパパは急いで持ち場に戻り、ボクを一人にします。

もう何がなんだかよく分からなくて、泣きそうです。
やっと伯父さんの姿を見れたと思って追いかけたのに追いつけなくて、隠しきれない感情はどくどくと波打ち沸き上がってきます。

ボクは伯父さんにもう一度会いたいです。会ってちゃんと気持ちを伝えて、もう一度ギュッと抱きしめてもらいたいです。



「…恭臣おじさんっ、」



消せない思いを何年も、一人我慢してボクは孤独になります。

それならいっそこの想いごと爆ぜて無くなれば良いと望みました。









伯父さんはヨルヒフードの偉い人で、パパとママのキューピッド。

営業課に勤めていたママが同じ部署に居たパパに一目惚れして、恭臣伯父さんがママをパパに紹介して結婚したみたいです。

その後、海外研修に4、5年間ヨーロッパに行っていた伯父さんはボクの存在を知らぬまま帰国したことになります。そう考えると何か変です。会ったことも無い妹の息子を好きになるタイミングなんかありません。



「ただいまー、」

「おかえりなさい。きゅうり、あった?」

「うんっ!あと、スーパーでパパに会ったよ!ヨルヒフードの新商品って、頑張ってた。」



家に帰ってボクはママにパパと会ったことを伝えました。パパは詳細を知らないです。

そしてママの前でたまに伯父さんの話題を出してしまいます。名前だけでも出したらママはショックを受けます。

3年間、ボクは自分の行いを庇うよう生きてきましたから絶対に言いません。



「お兄ちゃんが、」

「えっ、」

「お兄ちゃんがフランスから帰って来たって、連絡が来たわ…」



携帯を持つ手が震え、パパの連絡はママの鬼門に触れました。

震える身体をボクの中に、ママはすすり泣きながらずっと縋ります。その力はとても強くてボクは戸惑いました。



「あの人、またつばさを奪いに来たのね…」

「ママッ!」

「つばさはあの人に会いたい?ねぇ、あの人に会いたいんでしょ?はっきり言いなさいよ!」



身体を大きく揺さぶりながらママはボクに訴えます。
ずっと我慢していた気持ちは爆発してしまいそうで、堪えるため必死に唾を飲みました。

ママのことが嫌いな訳ではありません。でも、全部伯父さんが悪いと咎めるママは嫌いです。 自分がしたことでママの情緒が不安定になってしまったことは分かっています。

でも、



「ごめんねっ、ママ…ボク、伯父さんに会いたいっ。会ってまたちゃんと話して、好きだって伝えたいんだ。」



伯父さんへの想いは変わらないから。

ボクはママの手を振りきってもう一度、外へ飛び出して行きました。





[*Ret][Nex#]

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