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何故、こんなことになっているか理由は一つ。
ボクの父さん【塚原 和夫】(ツカハラ カズオ)は“ツカハラ工業”の社長でプラスチック製品を作る小さな工場を経営していた。
しかし、この不況の渦に父さんの会社ものまれ、受け継がれていた大切な工場は見るも無惨な結果になった。
残ったのは多額の借金と行く末、路頭に迷ってしまった社員達。
何をしても成功しない、金は減る、負の連鎖。
闇から抜け出す為、家族を救う為にボクは良心的でたくさんお金が貰えると有名な人身売買専門店「ドーフ・ヒルヨ」に問い合わせ、身売りすることにしたのだ。
『お電話ありがとうございます。こちらドーフ・ヒルヨ、オークション課でございます。』
「こんにちは・・・サイトを見て電話したんですけど、ボクみたいな子供も買い取ってもらえるんですか?」
『はい。よろしければお名前、性別、年齢、住所を教えていただけますか?』
「名前は【塚原 奈緒】(ツカハラ ナオ)男です。歳は今年で18になります。住所はひまわり町・・・3-5です。」
『塚原様ですね。ありがとうございます。お値段の査定は後日、お会いしてからでもよろしいですか?』
「はい・・・あの、ボク、出来ればたくさんお金が欲しいんですけど、どんなことをすればいいんですか?」
『…確実とは言えませんが、貴方ぐらいの年齢だと高額になることは間違いありません。内容は主にお手伝い…主(アルジ)へ簡単なご奉仕です。ご安心ください。今回、わたくし【鬼形 瑛吉】(オニガタ エイキチ)が責任を持って塚原様を査定させていただきます。』
「ありがとうございます。」
『そうと決まったら、早い時間にお会いしましょう。明日の…四時頃、ひまわり町駅前はいかがでしょう。』
「そうですね。よろしくおねがいします。」
そして、翌日駅で会ったのは黒いスーツをビシッと着こなした顎ヒゲを生やした男。
歳は20代半ばぐらい・・・顔はくっきりしていて美形。
未成年の人身販売なんて悪い仕事をしているのに表情は豊かで、怖いヒトだなと思った。
鬼形氏に喫茶店へ連れて行かれたボクは早速、品定めされた。
大きな目がボクの肌を凝視し、何度も手で撫でられる。
ドキドキしながらも「大丈夫。」と宥められ、すぐに金額が書かれた紙を差し出された。
「五千万、いかがでしょう。」
「えっ!ボクなんかがそんなに高く?」
「塚原様、卑下するのはやめましょう。貴方はとても美しいです。」
鬼形氏に励まされながらボクは肩にナンバープレートがついた服を着せられた。
夏なのにモコモコした毛糸のセーターで、番号は[0-300]と書かれていた。
着心地があまりよくないセーターを着用して、お金も何も貰わず早々とドーフ本社の地下室にボクは収容されてしまった。
「お前も性処理用のペットになるんだな。」
「は?」
「は、って何も知らねぇの?」
隣の檻に膝を抱え座っていた青年が突然、意味のわからない話をボクに語り始めた。
青年と言っても見た目は僕と同い年ぐらい。
かわいい顔をした男の人だ。
「男同士セックスすんの。お前も俺も、ケツにチンコぶち込まれるんだよ。」
「それ、どういう意味ですか?」
「物好きなオヤジに買われて、飼われて。犬みたいに扱われるの。あんあん鳴かされて、気失うまでめちゃめちゃに身体を犯されるのが俺達の運命だ。」
汚い言葉を簡単に並べる青年の瞳はキラキラしていたが、それは綺麗な輝きではなかった。
その時は分からなかったけど、今ならわかる。
彼はこれから起こる恐ろしい未来を察して泣いていたのだ。
隣で聞いていたボクはまだ深く理解することが出来ず、オークション当日までの三日間をその牢屋の中で過ごした。
[*Ret][Nex#]
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