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西大路氏に自分の気持ちを伝えてから藤村さんとは親密な関わりを持たなくなった。

そういうことは絶対しない。
自分の心に決めて、西大路氏に尽くそうと安易に考えていた。



「おかえりなさいま、」

「藤村、藤村は居るか?」

「…はっ、はいっ!」



夜遅く、11時過ぎに帰って来た西大路氏の隣には薄茶色のロングへアー、細く小柄な綺麗な女の人が居た。

玄関まで迎えに行ったボクの存在を完全に無視して、キッチンでご飯の用意をしていた藤村さんを呼び出す。

慌てた様子の藤村さんはエプロン姿で西大路氏の元へ駆け付けた。



「今夜はコレをお前の部屋に置いてくれ。」
  ・・
「…コレ、?」

「藤村、言わなくてもそれぐらい分かるだろう?今夜は彼女が居るんだから。」



彼の言うコレ=ボク。

女性を今夜自分の部屋に入れるから邪魔なボクを藤村さんの部屋にとりあえず置いておきたいみたい。


でも、いきなりすぎて。

ショック以前に込み上げる計り知れない口惜しさ。


ボクに飽きたのかもしれない。

嫉妬させたいのかもしれない。

自分には他にも相手が居るから、お前なんか居なくても平気だって見せつけたいのかもしれない。


自問自答を繰り返しながら震えている身体を必死に抑えつけ、ボクはその場に立ち尽くしていた。



「道貴さん。その前に私、シャワーを浴びたいわ。」

「あぁ、藤村。東条さんをシャワールームに案内してあげなさい。」

「…かしこまりました。」



命令通り、長い廊下を進んで東条さんと言う女性をシャワールームへ連れていった藤村さん。


二人が姿を消したので必然的に残ったのはボクと西大路氏。

気まずい空気を断ち切るために気にしてないと言うべきか、珍しいですねと笑ってごまかすべきか、何を言おうか真剣に考えた。

でも、先に口を開いたのは西大路氏の方だった。



「お前は私が好きなのか?」

「…え、」

「だとしたら相当変わり者だ。少し自重したほうがいい。」



一瞬戸惑ったがその通り。

好きと分かってから貴方に思いを伝えるばかりで全く自重出来ない、ボクは変わり者だ。

それを分かっているのにこのタイミングで女性を家に連れ込むのは反則だ。
同時に諦めろって言われたみたいで思い馳せた。



「軽々しく愛執の言葉を口にしてはいけないんだ。18のお前に愛は早すぎる。」

「・・・。」

「今日はもういい。下がりなさい。」



難しい題を提示して上手く通り抜けた西大路氏は足早にボクの前から姿を消した。


正直な所、貴方には分かるの?と聞き返したかった。

でも、逆上されてこの細い繋がりを切られたらボクは生きていけないから。


後ろ姿に一礼。
見えなくなったところで床に座り込み、バレないように泣いていた。









東条さんを部屋に入れた翌日、西大路氏の機嫌は最高に悪かった。

朝昼と顔を合わせないボクはどんな一夜を過ごしたのだろうと変な想像で頭がいっぱい。

だから機嫌の悪さに気付けず、帰って来た時も普通に接してしまった。



「おかえりなさいませ、御主人様。」

「・・・。」

「今夜はどっ、だッ!!」

「奈緒、全てお前の所為だぞ。私に恥をかかせた罰だ。今夜は徹底的に犯してやろう。」



女性が隣に居なかったから、調子に乗って今夜はどうしますか?なんて聞いたのがいけなかったのだろうか。

八つ当たり。

ボクは突き飛ばされて思い切りしりもちをついてしまった。


彼の気が済むならボクは別に構わない。
それで彼が満たされるのであれば喜んで身体を捧げようと思う。



「何を言っても無駄だな。最早、病気なのかもしれない。お前は先に寝室でいつも通り待っていなさい。」

「かしこまりました、御主人様。」

「・・・。」



大好きすぎて、自分でもよく分からないぐらい貴方が好きだから。情事を誘われることがとても嬉しい。

一日空いて嫌な予感しかしていなかったボクに希望が。

ふわりと心地好い不思議な安心感に包まれていた。





[*Ret][Nex#]

あきゅろす。
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