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冷たい手がボクの頬をスッと撫で、狂おしいほど美しい顔がゆっくり傍に寄る。

瞬間、ボクは確実に自分の想いを認識した。

前からこの人には必要とされたいと思っていた。
もっと親しくなりたい、貴方を知りたい、朝昼夜も共に食事をして、くだらない話で盛り上がって、一日中彼と一緒に居たいと思っていた。

この気持ちは揺るぎない、
『ボクは彼が好きなんだ』



「力を抜いて、」

「はい。」

「瞳を閉じなさい。」



軋むベッドに圧がかかり、二つの影が一つに重なっていく。

甘酸っぱい唇になめらかに滑る舌。纏い付き、ボクは必死に動きを追いかけた。

希望に答えたい今のボクに恥じらいは無い。屠るように彼と舌を絡ませた。



「奈緒。」

「んっ、」

「何を考えているんだ。」

「え、」

「バカにしているのか。」



何もそんなはずじゃなかったのに、西大路氏に怒鳴りつけれてしまった。
憤り、見下す目は僕の瞳を捕えている。

調子に乗ってキスに答えたのがいけなかったのか。
何故ひどく腹を立てたのか分からない。



「誤解です、御主人様!ボクの、ボクの話を聞いてください!」

「…時間の無駄だ。話など聞かなくても分かっている。今日は調子が良いようだからな。一発10万で始めよう。」

「違う、お金じゃない!ボクが欲しいのは…

「知っている。今回も藤村だと思って大人しく抱かれればいいんだ。」



報酬を高額にしようとは前から言われていたけど、具体的な値段はボクだって西大路氏だって言わなかった。
朝目覚めたらサイドテーブルに札束が置かれている不可思議な光景。

まるで男娼。
それ以外はメモも何も無い。

知っているなんて豪語されても、西大路氏はボクの気持ちをこれっぽっちもわかっていなかった。



「藤村に調教されたのか。キスも積極的に上手くなったみたいだな。」

「ち、がうっ・・・」

「何を言っているんだ。藤村以外の使用人から私が居ない間も毎日のように二人は交接に励んでいたと聞いたぞ。」



逃げようと思えば逃げられた。嫌だと願えば伝えられた。

でも、どこか心寂しくて…藤村さんに誘われれば何度も身体を重ねた。

弱い自分。
否定できない事実にボクは口を噤んだ。



「もう苦しいからな。とりあえず始めよう。」

「いやっ、話をっ…話を聞いてくださいっ、御主人様!」

「今すぐに、ズボンを脱いで足を開きなさい。」



耳を傾けない西大路氏に促され、ボクは下着も脱いで足を開いた。
じっくり股座を視姦され、反応したボクのペニス。緊張で微妙に足が震えていた。


本当は、好きって言われたくて。お前がいなきゃダメだって思われたくて。こんな関係終わらせたくて。

全て手後れ、どうしたら分かってもらえるんだろう。
螺旋のようにいろんな感情が入り組んで上手く解けない。



「うあ、ッああ…ぅうッ!」

「中も調教されたか。締め付けが強くなっているな。」

「ッん、ッん!!」

「辛いならっ、奴の名前を呼ぶといい…きっと、楽になれる。」



本当は心が無い、人形で居続けたかった。心を持ったらそこで全てが崩れ落ちる。
そんなボクは何をしたって楽にはなれない。でも一つ、一つだけ現実に苛まれているボクを楽にする手段がある。



「…す、すきです」

「・・・は、」

「貴方がっ、好きです…」



この言葉で世の終わりを見たように引き攣った形相、律動は一瞬にして止まった。

ボクの言葉の意味がよく分からなかったのか、読み込むまでに時間がかかるのか、身体も顔も一時停止。
瞳は瞳を見つめている。

緊張で身体が張り詰め、自分の心臓が大きく高鳴っているため、相手の息遣いや鼓動は全然伝わらない。



「は。…血迷ったか。」

「…んッ!あッ!みち、みちたかさんッ!」

「ッ、何を。」



罵倒されながらも想いを伝え。中に蠢く熱いペニスに何度も突かれれば“幸せ”と感じることが出来る。


この胸が壊れてしまう前に、想いが届きますように。

叶わない夢を見ながらボクは西大路氏の背中に手を回した。





[*Ret][Nex#]

あきゅろす。
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