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「…奈緒さん、その調子ですよ。もっと腰を振って、そのまま前傾姿勢になりましょう。」

「ぁあ、ふじッ、ふじむらさぁッん…」



黒い革の首輪がぐるり。
繋がるリードに引かれたボクは藤村さんの上に跨がって腰を振っている。

男の人にはお尻に気持ち良いツボがあるらしく、そこを突き上げればこんなに気持ち良くなれるんだよ。と、実践で藤村さんに教わった。


西大路氏との時には経験したことのない悦楽。

このまま藤村さんとセックスを続ければ、ボクは容易に堕ちるだろうなと思った。



「奈緒さん、これだけは覚えておきましょう。貴方は私のモノです。道貴様のモノではありません。」

「んぅっ!はぅッ!はぅッ!」

「奈緒さん、奈緒さん…」

「ふっふっ、ふじむらさんうぅっ!」



突かれながら扱かれて、ボクは藤村さんの手の中に、藤村さんはボクのナカに同時に果てた。

気持ちもぐらぐら定まらない。その後もボクらは耐えず甘い交わりを繰り返した。









ここ数週間、ボクは西大路氏の姿を見ていない。

藤村さんによると海外事業に向けての視察で西大路氏は国外に滞在しているらしい。


海外事業なんて一言も聞いていないボク宛の連絡は一件も無し。連絡手段がボクと西大路氏の間には無いため、特に彼の状況も把握出来ないまま時間だけが過ぎた。


彼が不在の間も藤村さんとの関係は継続。
朝昼夜、構わずボクらはセックス漬けの日々を過ごしている。



「奈緒さん、今日は道貴様が久しぶりにお帰りになられますよ。」

「・・・。」

「安心してください、奈緒さん。私が必ず貴方をお守りいたします。」



優しい藤村さんの言葉が今のボクにはとても重い。
守ってなんて頼んでない。西大路氏から逃げるつもりもない。

逆に彼にはもっと必要とされたいから…
今夜は好きにしてもらおうと考えていた。


だけど藤村さんはボクと西大路氏を引き離すことで頭がいっぱい。
彼が帰ってくる前に寝室で寝たフリをしていなさいと命じられた。



(ただいま、藤村。奈緒は?奈緒はどうした?)

(奈緒さんは体調を崩してしまって…今、寝室で休んでいます。)

(・・・そうか。)

(おっ、お待ち下さい、道貴様!奈緒さんはお疲れです!少し安静に…

「奈緒ッ!!!!」



バンッと勢いよく扉が開かれて少しビクリとしたが、ボクは寝たフリを続けた。

久しぶりに聞いた西大路氏の声は今まで聞いたことない声量。
ドカドカそばに歩み寄る足音にも気づかないフリで布団に潜り続けた。



「道貴様、奈緒さんは風邪気味でして…明日、お医様の処方を・・・

「藤村。何故、連絡を返さなかった?」

「・・・。」

「私は何件も奈緒宛に連絡を入れた。返さなかったのは奈緒の意思か?」



藤村さんと西大路氏のやり取り。表情は見えなくとも西大路氏は藤村さんにキレていた。

まさか…あの西大路氏がボクに連絡を入れていたなんて。一言もボクは藤村さんから聞いてない。


連絡はないと聞かされていたのは全て嘘だったと言うことなのか?



「道貴様、それは私の意思です。奈緒さんを…貴方には渡したくない。」

「・・・ッ、」

「…ご察しの通りです、道貴様。私は奈緒さんを大切に思っております。貴方がいなかった間も一生懸命奈緒さんに尽くして参りました。」



流暢に自分の想いを打ち明ける藤村さんには一つも混じりは無い。

西大路氏の様子が気になったボクはかけ布団の隙間から目を懲らして立ちすくむ彼を見た。
だけど、後ろ姿からは何も伝わらない。

見えるのは勝ち誇った笑みを浮かべる藤村さんの姿だけ。



「もっと簡潔に申し上げますと、奈緒さんと交接させていただきました。」

「・・・。」

「最初から貴方は間違っておられました、道貴様。彼を選んだのも、好きになったのも、全て私が始まりです。覚えていらっしゃいますか…貴方は自分の欲が満たせれば誰でも構わないとオークション会場でおっしゃっていました。愛されない彼の幸せを考えているのは他でもない…私だけでしょう。」

「・・・。」



瞬間、ちらりと見えた横顔。口惜しい顔の西大路氏。


歯を食いしばるほど悔しいの?ボクを取られて悔しいの?

それならもっと必要としてほしい。1番偉い人なんでしょ?なんで部下にバカにされてるのに文句を言わないの?

あの威厳な態度はどこへいったの?
偉そうに、いつものようにきつい言葉を藤村さんに言えばいいじゃないか。



「連絡の件は奈緒さんに対するくだらない伝言ばかりでしたので。申し上げる程では無いと判断致しました。」

「・・・。」

「ご飯はきちんと食べているか。夜はあまり遅くまで起きていてはいけないからな。気分転換に少しは外に出るといい。お土産は何が欲しいと、貴方は今更、善人ぶる気でいらっしゃる。」

「・・・。」



藤村さんに威圧される西大路氏が不思議とボクには小さく見えた。


有名事業家で大金持ちの彼に足りない“人としてのココロ”

ボクが見たのは影に潜む“人としての優しいココロ”

偽りでも、機を失った今でも。ボクはそのココロを包んであげられる、貴方だけの“特別”でありたいと願っていた。





[*Ret][Nex#]

あきゅろす。
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