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infect bloom



ほのぐらい明りが灯るこの部屋の主は、不在。

ボクは既に用意されていた夕食を大きなテーブルで独り、黙々と食べた。

正直、帰りが遅かろうが早かろうがボクの労働内容や時間は全く変わらない。
朝まで激しい運動をしなくて済むから、帰りは早い方が内心嬉しい。


一番望んでいることは早くこの世界から抜け出すこと。

何も無かったようにこの狭い檻から抜け出して、家族五人幸せに暮らせたらいいなって思う。



「奈緒さん、道貴様がお帰りになられました。」

「はい。」



ボクは一週間前【西大路 道貴】(ニシオオジ ミチタカ)に買われ、性処理をするだけ使い勝手のいい玩具になった。


西大路氏は何を考えているかよく分からない寂しい表情をする人だ。

だから、愛を持って玩具のボクを抱きしめる事は絶対に無い。


強引に組み敷かれれば、時間の無駄だからと言ってボクの身体には触れないで事を進めようとする。



「ただいま。」

「おかえりなさいませ、御主人様。」



鈍色に染まった短い髪、漆黒の瞳を隠す銀縁の眼鏡、高そうなスーツに身を包んだ西大路氏は存在を何となく把握しただけでやはりボクの顔は見ない。

羽織っていたジャケットをソファに投げ、下方を見つめる。

まるでボクの足に話し掛けているみたいだ。



「夕食は?」

「はい、御主人様。美味しく頂きました。」

「・・・そうか。」



食事をとったかボクに確認した西大路氏はくるっと向きを変え、部屋を後にした。

そういえばメイドさんから、帰りは遅くなると聞いていたのに予想より早くてちょっと驚いた。


まだ一週間、西大路氏のことはよくわからなくて当たり前だ。

何も怯えて暮らすことはない。



「奈緒さん、道貴様が先に寝室へとの事です。」

「はい、分かりました。」



やはり今日も身体を汚されるのか。
そう思うと胸が裂けそうな気持ちになる。


彼との性交は本当に辛い。
何故なら、身も心も総て焼き尽くされそうで恐ろしいからだ。


勿論、愛が無いと分かってる。
分かっているからこそ、無慈悲な愛が怖いのだ。


それが一心不乱に中心を引き裂く赤い凶器に変わり、最果てに突き刺さる。

その繰り返し。
彼がボクを畸形体にするんだ。




(藤村、今日はもう寝る。明日の朝食は彼の分だけ用意しといてくれ。)

(かしこまりました、道貴様。おやすみなさいませ…)




壁越しに聞こえた藤村さんと西大路氏の声。


西大路氏に従えている所謂、使用人の【藤村 智章】(フジムラ チアキ)さんはボクの面倒も見てくれる。

落ち着いた雰囲気を持つ、お兄さんみたいな人だ。

彼だけは別格。
主を筆頭にこの屋敷にまともな人は誰もいない。




「ちゃんと準備をしていたのか。」

「んっ、はい…ごっ、ごしゅじんさまっ。」




隔てていた一枚の木板が開かれ、風呂上がりの火照った大きな身体がボクの肌に沈み込んだ。


擦り寄せる?

抱きしめる?

彼にとっては行うだけ無駄な演出。

セックス前の準備は命令されなくても出来るようになった。

自分でヤラせれば、西大路氏自身、僕の身体に触れなくて済むから。

矛盾だらけでも気にしない。


当たり前だよ。
ボクは彼の人形なのだから――







Doll...

咲いても実を結ばない。
ボクは花―





男根がボクのアナに刺さり、グチョグチョと感帯を掻き回す。

重力に逆らわず中にめりこむ大きな肉棒。

腰を上下左右に揺すられて、律動は加速する。


グッチョ、グチョ、

プチュ、プチュ、

ズッ、ズッ…ズプゥッ!




「あっ!ゃんっ、ぃぁだっ!」

「・・・・。」




はしたない喚声をあげ、喘ぐボクの顔は決して見ない。

無口な西大路氏は結合した部分を瞳の中に、顔を引き攣らせる。

ボクが嫌だと言っても、耳を傾けない。
自分のペースでゆっくりボクのアナルを犯す。



もしも・・・

これは悪魔で仮定した話だけど、ボクが「好き」と伝えたら西大路氏はどんな顔をするのかな。

無論、変わらず凍てついた瞳を滾らせボクを狂人にするのだろうか。




(ごしゅっ、あぁっ!ん、“すっ、すきぃ”ひゃああッ…)

(・・・私もだ。)




なぁんて。
繰り返される穢れた性行為からの逃避行。
絶対にありえないことを考えてみたりする。


西大路氏に言わせたら感情なんて低俗。
そこに身体があるからセックスをする。

自分の性欲が満たされるのであれば、誰であっても彼には同じように映るのだろう。




「奈緒…」

「ぁっ・・・んぅうっ!!」



名前を呼ばれれば、呼ばれるだけ切なく。
自身の感情や欲をセーブしていたストッパーは取り払われる。

低く、心に染み渡る…
落ちついた声に誘導されてボクは我慢していた液体を吐き出した。




「はぁっ、ふぅっ…んあっ?!」

「・・・。」




くるっと身体を一回転。


騎乗していた体勢から四つん這いにさせられ、また新たに圧が加えられた。

ボクの汚い顔を見なくてすむから、きっと西大路氏はこの体勢が好きだろう。

そして、彼にとって楽な体勢で烈しく、長く身体を犯されるのだろう。




「あっ!はっ!はっ!…やっ、やだっ、んぅっ!」

「・・・。」




目覚めたら清々しい朝を迎えていて。
父さん、母さん、お姉ちゃんがボクの隣に居てくれたらいい。

そのセカイには当然、貴方は居なければいいと思う。





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