艶事ファシネイト
蒼色の愚行 -alarming-
オークション前日の今日は会場作りやパンフレットの最終確認、やる事が盛り沢山で馴れている時枝や鬼形でさえも少し機嫌が悪かった。
鬼形は河辺と一緒に商品保管所へ最後の品質確認に、時枝は他の社員とカタログ、パンフレットの見直し・明日のオークションに向けての作戦会議を行った。
「今回のオークションで出品する商品は27体だ。最高設定額は524の二億円となっている。パンフレットやカタログを見て何か意見はあるか?」
「…課長、523なんですが今ちょっと体調が悪いようなので、この値段では難しいのではないでしょうか…」
返品不能なオークションは体調が悪いと取引後に必ずクレームが来る。
そのため当日はきちんと「風邪をひいている」など体調の説明もしないとならない。
結構な金額のやり取りなので、ちゃんとした配慮も忘れない。
「どのくらいの体調不良なんだ?」
「えっと…昨日の朝から少し咳込んでいたらしくて。可哀相ですが…やはり値段は・・・」
「分かった…それくらいなら500下げよう。」
ギリギリの改訂は当たり前…
だから忙しいこの仕事…
時枝は急いで席につき、パソコンを開いた。
「と・ち・え・だ・さぁん!」
「は?」
明るくスキップでやってきた鬼形の手には可愛いフリルのワンピース。
そんな気分でいられない時枝は仕事を進めるため、真面目にパソコンを見つめた。
「とちえださん、ののちゃん…どっちが似合うと思いますか?」
「・・・鬼形、バカにしてるのか?俺はトチエダじゃないし、ののなんて奴知らな…」
いや、時枝は知っている。
・・
昨日つい、食べてしまったあの少年だ。
彼は滑舌が悪く時枝をトチエダさんと呼んでいた。
まさか、襲われたなんて鬼形に言ってないだろうか…
時枝は焦燥の色を見せた。
「ピンクと…白!ののちゃんお肌すべすべだから俺的にはピンクッすかね…」
「いや、白だ。」
「はぃ?」
「彼は白が似合う…鬼形、分かったならさっさと自分の位置に戻りなさい…」
時枝は自分の顔が赤くなっていないか心配で鬼形を追いやった。
きっと強姦というシチュエーションにムラムラっとしただけだろう…
夕べ妻を抱いても、野々宮以上に興奮出来なかった時枝。
彼女にも紛いのものをすればきっとドキドキするはずだ…とそれ以降は深入りしなかった。
「おーい、課長…聞いてますか?」
「あっと、かッ河辺…どした?」
「524ちゃんなんですけど、朝からあわいもにょ、あわいもにょって意味不明な事言ってくるんですけど…あの子ちょっとおつむが弱い子なんですかね?」
「滑舌は悪いな…あと、知恵遅れかもしれない。」
「あわいもにょってなんなんでしょう…」
さっきから鬼形も河辺も野々宮の話しばかりで、時枝は全く仕事に手をつけられないでいた。
オークションは明日で時間が無いのにも関わらず、野々宮のことしか考えられない…とっても悪循環だった。
「ったく…仕方ない。河辺、523の金額を全部変えといてくれ。俺は商品保管所に行ってくる。」
野々宮の様子を見に時枝はジャケットも羽織らず、走って地下の保管所へ向かった。
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