艶事ファシネイト
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夕方、煙草を切らして機嫌が悪くなった時枝は空の箱もジッポも投げ捨て、舌打ちをした。
食べ物の夢でも見ているのか…
隣には口をもぐもぐさせて眠る綺麗なオークション商品。
彼を衝動的に犯し、理性を保てなかった自分に問題があると嫌でも分かっていた。
「チッ…」
一目見た時から自分のペニスは勃起していました。
なんて誰にも言えない事実…
こんなに興奮したことは男にも女にも今まで一度も無い。
だからこそ、切り替えなければいけないと想った時枝は自ら担当を外れる事を選んだ。
「あっ…もしもし、鬼形…後3つどうなった?」
「いぇーいっ☆3つとも確保致しましたッ!時枝課長は[0-524]と一緒ッすか?」
鬼形には真実を言わず、レストランで話をしていたと伝えた。
犯したなんてことは冗談でも、口が裂けても言えない。
「課長が“お話”なんて珍しいッすね…可愛い顔してますもんね、[0-524]!」
「鬼形、俺は今回担当外れることにするよ。」
「はぁ?えっ…な、いきなりどういうことッすか?困りますよ!!進行もメインも俺に任せるってことですか?」
「あぁ…そういうことだ。今回は面白くなさそうだからな。お前がやれ。」
強引に今、置かれている現状から逃げた時枝は電話を切り、眠る野々宮の顔を撫でた。
全く起きる様子が無い静かな野々宮をこのまま社に引き渡さないで家に置いておこうと思ったが、それはもちろん許されるわけなく…
タグを付けられてからオークション当日までは社に保管しておかないといけない大切な商品だ。
一度手を出してしまってかなり落胆した時枝は身を起こし、乱暴に野々宮を揺さぶった。
「野々宮、起きなさい。」
「んっ…うぅう、っん。」
「ののみや…」
「ひぅううっ…お、おじしゃん、ごめんなちゃいッ!」
やはり自分を警戒しているみたいだ。
時枝は、『おじさん』と呼ばれたことにがっかりした。
歳に見られたからではない。
他人のように接されたからがっかりしたのだ。
気落ちした時枝は名前なら教えても規則を破ったことにはならないと思い、
「野々宮、俺の名前は時枝欣嗣と言う。何でもいい…名前で読んでくれ。」
優しい声で自分の名を名乗った。
「っと、とちえださんっ…?」
「・・・。」
合ってなくてもニコッと微笑みかけてくれたことで、さあっーと心のモヤモヤが消えた。
あの出来事が記憶に無いのか…
自分に純真な笑みを見せてくる不思議な野々宮。
そんな彼にニットのセーターと大きな自分のジャージを着せ、時枝は再び本社へ向かった。
・・・・・・・・・・・♂
鬼形に書類と野々宮を預け、自分は逃げるように商品保管所から立ち去った。
クズと思っていたオークション商品があんなに輝いて見えた錯覚…
男を犯したいと思う黒い欲望が蠢き自分を染め、浸蝕していくと考えただけで全身が引き裂かれそうな気分になった。
もうこれ以上は絶対関わってはいけない。
自分の名誉と、社の決まりも守るために鬼形に全て任せてしまおう…
生娘レッテルで販売しなくてもあの見た目なら簡単に高値で売れるだろう。
「時枝課長ッ!今回の設定金額と買い取り価格の表です。」
「お疲れ様、鬼形。ところで明後日のオークション…何人くらい来るか分かるか?」
「えっと…VIP席に20人、組が250に見物客が推定100人…予定ではそのぐらいですかね。」
「例年より見物客が増えているみたいだな…分かった。この表を元にVIPの方にはカタログを作成しよう。お前はもう帰っていいぞ。」
夜も遅かったので鬼形を返し、時枝は残業をした。
そもそも今日は時間があまり無かったのに、アノ情事は予定外だった…
まぁ、こうして遅くまで残る形になっている理由はそれだけだから誰にも文句は言えない・・・
妻・由利香には遅くなると一本電話を入れて、仕事に取り掛かることにした。
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