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艶事ファシネイト




なかなかはっきり言わない野々宮をベッドに投げ入れ組み敷いた時枝はベルトを外し、滾ったペニスを野々宮の白い身体にすりすり擦り付けた。


せっかくのデートだったのに高浦と言う男の所為で台無しになった。欲望は今、抑えなきゃいけないはずの昼過ぎ。

それでも今早急に繋がらなければいけない気持ちで時枝の頭はいっぱいになっていた。




「野々宮、」



「やだあっ!」



「しゃぶれよ。」



「やだあっ!!やだあ!とちえださん、とちえださんっ…やだっ、」




啜り泣く野々宮は覆いかぶさる時枝の大きな身体を何度も押し退けようとするが微動にせず。勃起した大きなペニスが顔に近付いてさらに拒否する素振りを見せる。


手に入らないものを無理矢理、抉じ開けようとする時枝はもう崩れかけた未来を理解していた。




「あの男がいいのか…?」



「んんぅうっ、あぅう、」



「奴はお前のパパなのか?」



「んんっ…、」




一点を見つめ呟く時枝はまるで魂が抜けたよう。黒い瞳は散大していて鬱的表情であった。


自分は妻やこれまで築いてきた地位、全てを取っ払って来たのにこんな終わりがあっていいのか遣る瀬無い以上に絶望していた。




「ショウちゃんはパパじゃないけどパパなの、」



「は?」



「ショウちゃんはママとけっこんして、でものののことしゅきになったの。ママはそのあとどっかいっちゃってずっとふたりでいたの。それでおかしくなっちゃったの。」



複雑な過去を一生懸命拙い言葉で話そうとする野々宮は高浦が実父で無いと語った。それに義父にあたる高浦が妻の連れ子を好きになるなんて前代未聞である。

そんな不安定な男に返すなんて絶対に嫌だと一瞬思ったが野々宮の幸せとなると自分の思いだけではどうしようもならない。

哀しみが晴れるどころか曇ったまま時枝は決意した。




「野々宮、」



「ん?」



「お前が幸せならいいんじゃないか?元々俺とお前はベンダーと商品…ありえないことだったんだよな。」



「でん…だー?」




常識的には考えられないことだったとしても傍に居たかった。



この目で彼の成長を見て、触れて感じて心の拠り所となる彼の存在する人生を送りたかった。


そう考えれば考えるほど初めて会った時に感じた確かな鼓動や会話した時に感じた胸の高鳴りが一気に蘇る。




「すばるっ、」



「なぁに?」



「すばるっ!すばるっ!野々宮、野々宮昴!」



「と、とちえださぁん?」




込み上げる感情が喉に留まり全て吐き出せる感覚。下の名前で親しく呼んで気づいた本当の気持ち。


きっと初めて会ったあの日から確実に恋に落ちていた。

本気で好きになっていた。

守りたかった。

一緒に居たかった。




「帰ろう、お家に。野々宮の本当のお家に、」


「えっ!?」


「野々宮は高浦お兄さんと一緒に居られるんだ、よかったな。」


「あ、あ、ありがとうっ…?」




好きな人が幸せであるなら何でもいい。
身体は疼くが仕方ない。


明るく言った後、一人涙した時枝は想像していた野々宮との幸せな未来を思いだし慟哭していた。





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