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艶事ファシネイト
薄紅色の華 -saccharine-



昨日、一昨日と二度も愚行を働いてしまった時枝は由利香に連絡も入れず、家にも帰らず…

ぼっーと自分のデスクに突っ伏したままいつの間にか眠っていた。




「おはようございます、時枝課長。今日はめっちゃ早いッすね!!!」



「あぁ…」



昨日までとは違うやる気ない時枝の返事を聞いた鬼形は首を傾げた。




「課長…絶対変だよ〜昨日、奥さんとエッチしましたか?ちゃんとしないとストレスも溜まっちゃいますよ!」



「あぁ、したさ…」





由利香のことなど一秒も考えてない。

今の時枝にはどうでもいい話であった。




「なんでだろ…プレイスタイル変えたらどうっすかね?課長はどんなのが好きなんすか?俺はもちろんコスプ…

「もういい…鬼形。俺は先に会場行ってるから…今日は頑張れよ。」





行かずに逃げ出したかった時枝だが、自分は最高責任者のため総括しつつもVIPの相手をしなければならない立場だった。


自身、この体調と面持ちで平気だろうか…暗示ながら時枝はフラフラした足取りでホールへ向かった。






・・・・・・・・・・・♂





VIP客の間、センターの1番前に座った時枝は隣に居た常連の高千穂や勅使河原と今回のオークションの品定めをしていた。


高千穂と勅使河原は今まで2回、商品を購入したことのあるVIPだ。

1回目の利用で会員、2回目以降はVIPとなる。




「億単位を2個投入したんだねぇ…時枝君、自信は?」



「今回は若いのばかりが集まりました。自信はありますよ。」




時枝の言うとおり今回は平均年齢20代半ば。

上質な品を揃えたため社員一同気合いが入っている。



「いやぁ…楽しみだ。24番、これは1番人気じゃないか?」



「・・・えぇ、まだ15歳の綺麗な商品です。きっと高値で売れますね。」



心にも無いことを高千穂に述べた時枝の瞳は光りを失っていた。

どこか先を見ている冷たい視線は何かを思い詰めている様子だった。






「お待たせいたしましたっ!2010年、11月のドーフ・オークション開催です!!!!」


司会の河辺が珍しく声をあげ、幕を開けたオークション。



中央の立ち台に蝶ネクタイを付けてビシッと決めた鬼形の姿。


少し緊張した様子の鬼形は視線で時枝にヘルプを求めている。



しかし、時枝は隣の高千穂とカタログを見つめたまま…

鬼形は深呼吸を繰り返しながら始まりの挨拶をした。




「皆様、ドーフ・オークションにご参列頂き誠にありがとうございます!今回はイチ押し商品を27人提供しております!!最後まで是非お楽しみくださいませ!!」



拍手喝采の中、挨拶を終えた鬼形はほっとため息をつきながら下手から来る1番の紹介をはじめた。


今回からは全員舞台に上げず、一人ずつ紹介する形式にした。



その方がごった返すこともなく、次はどんな商品がどんな格好で来るか…

ドキドキが味わえるからだ。





「エントリーナンバー1番、花村宗一サンです。」



格好もコスプレ大好き鬼形の提案。


普通の服装でなく、ちょっといかした格好の方が少し需要が上がるかもしれない一つの作戦だ。




「あの青年、良い顔しているね…」


「綺麗な身体だ…」


「25歳だってさ…是非ウチの組に欲しいな。」



ざわめき始めたVIPや暴力団関係の席…

これがドーフ・オークションの楽しい所。


若いのが売れるのは当たり前…

体格が良いが売れるのも当たり前…


みんなみんな身体目当てのオークションなのだ。




「では、8千万からのスタートです!!」




「1億!!」


「5億!!」



「10億だ!!!」





初っ端から億単位のやり取りで盛り上がるオークション。


売れ行きにご満悦になった時枝だったが、すぐ地獄を目の当たりにするのであった…





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あきゅろす。
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