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艶事ファシネイト




「続いて、エントリーナンバー24番!野々宮昴クンです!どうぞっ!!」



司会の河辺が舞台袖から内股でてくてく歩く野々宮を引き連れる。

見た目は中学生だが、覚束ない足取りはまだ幼い子供のようだ。





「ここでののちゃんは名前と年齢…すきなものをマイクに向かって言って下さい。」



「ののみや すばぅ。じゅうごさいっ!好きなものはあいしゅとくっちー!」



「…アピールタイムは何しようかな。ののちゃん、なんか得意なことある?」



ひとつの商品に与えられた時間は約10分。

その間に質疑応答、自己紹介、アピールタイムが含まれている。


アピールタイムは特技を発表する機会に設けられており、質疑応答はVIPから大抵、情事のことについて質問される。







特技を考える野々宮を時枝はまじまじと違った視点で見つめていた。




「おえかき…おえかきできゆ!」





明日、彼をどんな奴が買い取るのだろうか。


真面目で良い奴なら安心だけど、残念ながらドーフ・オークションに来る奴らはとてつもない欲求を溜めた汚い連中ばかりだ。


もし、どうしようもない奴が落札したら嫌だなと時枝は思った。






「紙と…鉛筆でいいかな?」



「うんっ!オニしゃん、書くょ!」




鬼形をモデルに一生懸命に絵を書きはじめた野々宮。






真っすぐで美しい姿は明日きっと、多くの男を魅了するだろう…


あぁ、自分もすでに虜になったバカの一人かもしれないな。




どうすれば彼は幸せになれるのだろうか?


どうすれば自分の蟠りは消えるのだろうか?




「できたぁ、オニしゃんだよぉ!」



「おぉ…うまいなぁ〜ののちゃんは絵上手に書けるんだねぇ〜」



「ふふふ、わぁーい!」



鬼形の特徴を捉え、そばかすまできちんと印されていた野々宮の書く絵はくすぐったい画風だった。


決して上手くはない。
だけど下手ではない。

綺麗な野々宮の心情が書かれている素晴らしい絵だなと思った。





・・・・・・・・・・・♂





27人の商品を収容し、一段落したオークション課メンバーの話題は時枝の奇妙な態度で持ち切りになった。




「時枝課長、溜まってるんですねぇ…」



「何がだ。」



「よっ・きゅー☆」



「・・・くっ、」




欲求…

最近、男を抱いたり自分が自分でも分からなくなってきているからな…

確かに溜まっているのかもしれない。と完璧には否定できなかった時枝であった。





「奥さんと自分のためにも早く帰ってくださいね〜お疲れ様でした!」



「…俺ももう帰るよ。」





夜9時、今日は昨日より早く帰ることが出来そうだ。

鬼形と社を出た時枝は明日のオークションの事を考えながら家を目指した。





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