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星空エビデンス




めちゃめちゃにされて意識を失ってから3時間経った午後11時。

重い腰をあげて、下を見るとシーツがいつの間にか取り替えられていることに気づいた。


隣には無防備な顔で規則正しく寝息を立てるサカキの姿があった。






朝と変わらず銃はベッドサイドに置きっぱなし。今度こそコイツを撃ち殺せば僕は解放される…




意を決して僕は引き金を指で掴み、銃口を男の額にくっつけた。

カチカチ音が立つ理由は僕の腕が震えているから。



…楽に死んでくれ。



アンタが悪いんだ。
ヌヌちゃんを盗んで、僕を襲って、今日だって学校に行けなかった…皆勤賞狙っていたのに。

おもちゃでおかしくされて…身体は言うこと聞かなくて。


全部、お前の所為だ…
榊一流!!!




「死んで…くださいっ!」




一回大きく息を吸い込み、僕は引き金を引いた。



ドーンッと…



一発…



頭を…



貫通…



して…








「ダメだ…出来ないっ。」


顔を見たら変な感情が込み上げてしまった…


情けない…






ため息をつき僕はゆっくりベッドから起き上がって、腰を押さえながらお風呂場へ向かった。


床にはさっきまで身体に付けられていたおもちゃや革紐が散乱していた。





「うぁあ、汚いっ…」




素早く拾い上げてごみ箱へ…

普段からこの男は器具を使って遊んでいるんだろうな。

僕以外にもたくさんの男や女とこんな事しているんだ、きっと。






「はぁ…」





シャワーのコックを捻り、頭から冷水を被った。

冷たい水のおかげで眠気が覚め、虚ろな目もぱっちり開けられる。






「おーい、小野瀬!」


寝室から聞こえる野太い声。

その声を聞いてさっき殺しておけば…と、思い返した。



「明日どーする?土曜日で休みなんだ。どっか出かけようぜー」




身の危険も感じないほど無神経なのか…

一緒に出かけようなんて。

さっき僕に殺されるはずだったんだぞ?





「あーっと…やっぱ遊園地とかがいいか?ネズニーランドは混むから勘弁な!」




子供だまし…

友達でも恋人でもない…
犯罪者と被害者の関係。


ご機嫌取りに遊園地?
筋金入りのバカだ。




「聞いてっかー?」



浴室から出て、身体を拭き僕は返事をした。

内心は留めたまま…可哀相な被害者の仮面を被って。




「一流サン…」



「おっ…身体洗って来たんか?よしよし、隣来いよ。」





肩を抱きしめられて、スーと髪の香りを嗅がれた。
すごく甘い雰囲気…

本当、殺してやりたい。




「で、どうする?」



「えっ…と、一流サン…勘違いしてないですか?」



「何をだ。」



気に障ったみたいでいつもの低い声がもっと低く響いた。




「ヌヌちゃんのこと忘れてますよね。貴方は犯罪者です。僕は大切なモノを奪った貴方が嫌いです。本当に今すぐ死んでほしいくらい大嫌いです。」






僕は奴のおもちゃで欲の捌け口だから、きっとこの男は僕を殺しはしないだろう。

かわいいおもちゃを演じていれば殺されない自信があった。




「じゃあ殺せよ…俺のこと。」



「えっ…」



「ぉら、拳銃やる。頭撃てば楽だぞ。やってみろ。」




冷酷に言葉を紡ぐ受け身なサカキ。



それでいいのか?

いや、いいんだよ。
コイツは犯罪者だ。



僕の大切なモノを奪って身体もめちゃめちゃにして汚い心の…人間のクズだ。




「冗談抜きで殺しますよ。」



「なら撃つ前に言わせてくれ。俺はお前が好きでココに来た。相手してくれてありがとな。」



何故、礼をするんだ?

何故、好きと言えるんだ?



     ・・
僕と繋がりたいからヌヌちゃん売り飛ばした…

それで生涯終わるんだぞ?

二度関係を持っただけで特別な感情はお互い無く、中学生相手にピストルで撃たれて苦しみながら死ぬんだぞ?





「もういいです…おやすみなさい。」





死に対して恐れないサカキの快闊さにゾッとした僕は布団に潜った。







僕は、気づかない。



相手の気持ちが見えぬように目を伏せればいい。





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