星空エビデンス
◇
Sakaki's viewpoint
サカキはケイジを風呂場で休ませて、コンビニで買った夕ご飯をご馳走した。
ご飯が入りテンションが高くなったケイジは「自分はいろんな男優を撮ってきたが、あの男がよかった!」
と、サカキにとってはどうでもいい話ばかり。
「で、真木コウイチロウってコッチの世界で有名な人が居るんですけど…その人が俺の本命なんっすよね。」
「へぇ…」
ソッチの世界に首を突っ込む興味も無いサカキはコクコクとお茶を飲み干して素っ気なく話を聞いていた。
相手をしてくれたケイジには感謝しているが、そちらの仲間に入るつもりは無いからだ。
「それで…サカキさんにお願いなんですけど、俺の恋路を応援すると思って手を貸してくれませんかね。」
やはりと思ったサカキは聞かないフリをしてその場を離れようとした。
が、少し早くケイジがサカキの腕を掴みうるうるした瞳で見つめてお願いした。
「俺、真木さんと付き合いたいんです。だから、真木さんの傍に居るあの害虫をサカキさんに駆除して欲しいんっすよ。」
「は、俺は犯罪者になるつもりは無いぞ。」
一度、強姦・窃盗しておいてよくその口から言えたもんだとサカキは自責した。
無意味なものに手を染めることは無いので丁重にお断りした。
「沢中豪文って名前の・・・今は北中の非常勤講師なんすけど、アイツ…真木さんを唆して自分のモノにしようとしてるんッすよ。」
「北中…か。」
北中と聞くだけで身が切られる思いがしたサカキは少しケイジの話に耳を傾けることにした。
「体格良いくせに真木さんに好かれて、気持ち悪い筋肉バカで…」
「そんな、得意の笑顔で奪えばいいじゃねぇか。」
「身体で誘っても素っ気なくされて・・・俺なんか眼中にねぇんみたいなんっすよ。」
哀しい瞳をしたケイジを自分と重ねて見たサカキは頭をポンと撫でてやった。
ビックリしたケイジは口に入れようとしていた人参のカケラをぽとりと落としサカキを見つめる。
「イチさん…」
「お互い頑張ろうぜ。」
ニコッと微笑みかけたサカキ。
その時、「自分はこんなふうに他人にまで気を使い優しく出来る人間だったかな」と思った。
片思いという境遇が似ていたケイジをサカキは応援することにした。
「人の手なんか借り無いで自分で頑張れよ。」
「はい!ありがとうございます!!!さてっ・・・」
「ん、今日は無理言って変なことしてゴメンな。身体、大丈夫か?」
立ち上がろうとしたケイジの肩を支え身体を気遣った。
前のサカキとは違う…
全く別人である。
「勇気貰ったんで今日は帰ります。」
サカキは玄関を開け、笑顔で帰るケイジを見送った。
ケイジは携帯を片手にダッシュで真木さんのところに行くと言っていた。
彼なら頑張れるだろう。
自分もうじうじしていたらいけないな。
下に降りたケイジを見送って空を見上げると紺のベールに幾つも輝く綺麗な星々。
星を見ていると大好きなあの人を思い出してしまい、どこか心寂しくなる…
顔を叩き、身を引き締め、部屋に戻ろうとしたサカキ。
左の瞳の端に映った小さな小さな人影・・・
「…一流さん。」
愛しい少年。
小野瀬真尋が眉間にシワをよせ、サカキの顔を仰視していた。
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