星空エビデンス
◇
「そうだよ!早く仲良くなって付き合っちまえ〜」
何故か折谷さんと僕は良い感じという方向に話しは広がり、話題は女の子の話になった。
「お前らばっかりモテやがってぇ!俺も頑張って彼女作るぞぉっ!!」
「オー!!」と一人意気込む鈴木クンの後ろに立っていたのは鈴木クンのお兄さんらしき人。
彼は目を丸くして床に散らばる本をガン見していた。
「セ、ナッ!!コレ俺のじゃねぇか。勝手に読んでんじゃねぇーよ!!!!」
「ひいっ!にっ、兄ちゃん!」
後ろからエルボーをくらった鈴木クンはクリティカルヒットで床に沈んだ。
「ったく…バカヤロー、っ・・・失礼しましたー」
急いで本をかき集めた鈴木クンのお兄さんは顔を真っ赤に染めながら部屋を出て行った。
「あたたっ…兄ちゃん酷いッ!」
「どんまい、鈴木。」
腰をゆっくりあげて痛みを堪える鈴木クンをよしよししてあげた。
僕らも読んでいたから鈴木クンだけが悪いわけじゃない。
「真尋、サンキューな!・・・エロ本取られたし今日はもうお開きにすっか…」
「そうだな。鈴木、次回はサカキバラシリーズの2話はちゃんと用意しとけよな。」
吉岡クン、サカキバラシリーズがお気に入りらしい…
鈴木クンがお兄さんにエルボーを一発くらっても気にしてないみたいだし、クールな奴だな。
「吉岡ぁっ、お前…俺が兄ちゃんに一発殴られたのに構わず頼むなよぉ。」
「彼女と何もねぇから俺ムラムラしてんだよ。ちゃんと用意すんだぞ〜じゃあな。」
「うぅっ…じゃあなあー」
鼻を押さえながら半泣きの鈴木クンとニコニコ笑う吉岡クンにバイバイして僕は家に帰った。
…★…★…★…
ヌヌちゃんが家に居るから一人じゃない。
でも、何故かヌヌちゃんに話しかけても今まで変だと思ってなかった『独り言』に胸が詰まる。
僕だって頭が悪いわけじゃないから、人形相手に話すことはダサいと思う。
たった三日だけど、サカキと過ごした三日間はとても濃密な日々でいた。
一人が寂しいとか思ったことはなかった。
一人の方がかえって気が楽だから良いと思っていた。
だけど、冷たい言葉をサカキに言って彼を傷つけてしまった日は夜も静かだったし、切なかった。
切ない気持ちをどうしたいのか分からない自分が居るのは事実。
『解決しないモヤモヤ。』
いきなり家に来て襲われて身体も心もめちゃくちゃされた。
だから、あんな奴に対して抱く気持ちじゃないとはわかっている。
だけど、あの涙を見てからサカキは今何をしてるのか。
誰を思ってるのか。
とても気になって、おかしくなりそうだ。
――星はサカキが来た夜に見たきりで、今夜は雲がかかって月の光さえも見ることが出来ない。
『愛してる』と簡単に言われたが、サカキはいつから僕を見ていたのだろう。
誰に命令されてヌヌちゃんを盗んだのだろう。
あの雲のように全て隠されていて、今は真実が全く見えそうにない――
[*ret][nex#]
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