星空エビデンス
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Sakaki's viewpoint
机の上に置かれたのは前見た時よりもボロボロになったクマの人形。
首には赤い布に金字で"happy bear"と書かれたリボンが付いていたのだが、首はもげていて綿が頭から吹き出していた。
こんなもの…小野瀬が見たらどんな反応するか。
小野瀬の笑顔の元を奪い、壊したのはサカキだ。
こんなつもりじゃなかったのに…と自信の中には悲しみ、泣きわめく小野瀬の姿が想像される。
「・・・中身を抜き出したんっすか?」
「その通り。君のおかげでやっと私は兄の遺したモノを手にできたよ。」
冷酷な笑みを浮かべ人形の首を掴んだ真寿は恍惚たる表情をしていた。
それを見て少し恐ろしくなったサカキはそのモノの内容を聞くことが出来なかった。
「とりあえず、預かりますね…」
サカキは真寿を逆撫でしないよう人形を自分の手中に収めた。
ふわふわの毛からする匂い、可愛いキラキラの瞳も持ち主と同じ美しい人形だと思った。
「ソレをこれからどうするんだ?」
「うーん…縫ってでも本人に返します。アイツ、コイツが居ねぇとダメみたいなんすよね。」
「…サカキクン、君は本当に真尋が好きなんだな。」
「えぇ、実は諦めてないんすよ・・・叶わないのに…ね。あははは…」
心中を何故叔父に打ち明けているのか…
少し苦笑気味だったが、真寿には笑顔を向けてサカキはその場を立ち去った。
…★…★…★…
裁縫が元々得意じゃないサカキは、ホームセンターで針と糸を購入してちくちくと手でヌヌちゃんの首を縫った。
夕食も忘れ、ずっと小野瀬の笑顔を思い浮かべながら怪我をしても諦めず、最後まで縫い続けた。
接合部が少しぐらぐらで、補強は赤いリボンで補った。
大きなクマのぬいぐるみ。
よく見てもわからない。
きっと大丈夫だ。
「明日、届けに行ったらもう考えねぇぞ…頑張れ、一流。」
最後の区切りをつけようとサカキは、初めて涙を流した。
思いが砕けた時には見せなかった大粒の涙。
悔やみながらもずっと遠くから見ていたあの笑顔を絶やしたくないから・・・
生きる楽しみを、輝きも与えてくれた小野瀬をサカキは忘れないと誓った。
「ばかっ…忘れないってか忘れられねぇよ・・・」
自分の誓いを追及したサカキはあるモノをクマの腕に嵌めて、大きな星柄が入った箱に詰めた。
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