星空エビデンス
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Sakaki's viewpoint
傘を回しながらスキップで家に帰る"おのせ"に夢中になったサカキはストーカーをしているという自覚無く家までつけていた。
たどり着いたのは白い二階建てのアパート。
部屋は四つに括られていて、階段を駆け上がり奥の部屋に"おのせ"は入っていった。
そして翌日も、翌々日も…
"おのせ"の家が分かったサカキは人が変わったようにじっと見ていた。
仕事が終わっても合コンの誘いを受けることなくサカキは木原や他の仕事仲間に『彼女ができた』と嘘をついた。
しばらくその言葉の意を考えたサカキは心寂しくなった…
本当は彼女なんか居ないけど"おのせ"が、いや…ありえないと分かっているけど自分の彼女に・・・と、
恋心のようなモヤモヤした気持ちを抱くようになってしまった。
断り仕事を終えたサカキは急いで車を走らせ、"おのせ"が住むアパートに向かった。
いつもの日課…
通学路で存在を確かめ、家の明かりがちゃんと灯る時間まで車の中で部屋を見つめ続ける。
茶色い大きなクマを抱き抱えてベランダに出てきたらラッキー…
サカキの気分は晴れる。
夕食の時間になる頃には家に帰って"おのせ"の顔を思い出す。
もちろん思い出すのは満面の笑みを浮かべサカキの名を親しげに呼ぶ"おのせ"の姿。
いつか…"おのせ"と関わることができたとしたら、彼はどんな顔でどんなトーンで"一流"と呼んでくれるのだろう。
想像しただけでドキドキしたし、身体は熱く興奮してしまった。
そんな生活をしていたサカキは悪い事をしているという自覚が無かった。
ただ見ているだけだし、誰にもバレるはずがないと思っていたサカキに制裁が降ったのは6月の下旬。
今日も同じ時間帯に車を止め窓を開け、タバコを吸いながら"おのせ"の部屋を眺めていた。
その日、部屋から出てきたのはふくよかな40歳くらいのエプロン姿のおばさん。
にこやかに話すおばさんとパジャマ姿の"おのせ"。
手にはお弁当箱を持っていて、ぺこぺこと頭を下げている"おのせ"が見えた。
「…お母さんじゃなさそうだな。」
独り言を呟いたサカキの席の窓から顔を出したのは見知らぬ白髪混じりの男。
サカキは感じ取れなかった気配に驚き、思わず声をあげて叫んでしまった。
「うぉおっ…!どっどど、どなたっすか?」
「君…昨日も真尋を見ていたね。不審者として警察に突き出されたいのか。」
アンタこそ!なんで俺が見ていたこと、知ってんだよ!!とツッコミを入れたかったサカキだが、結局何も言えず素直に誤ってしまった。
「すいません、それだけは勘弁してください。・・・"おのせ"クンのお父さんとかですか…ね?」
「いや、私はあの子の父親ではない。あの子は私の元から離れた弱虫な子だ・・・やっと見つけることが出来た…誰にも渡しはしないぞ…絶対に。」
怪しい言葉を並べる血走った瞳の男をサカキは全力で止めた。
サカキは何かが嫌だった。
誰にも渡しはしないと言う言葉が…自分だって"おのせ"の事を思っているんだから・・・。
こんなオヤジなんかに負けてたまるかと変なプライドが全面に出た。
「待ってください!おじさん、落ち着いて!!アンタこそ犯罪者になるぞ!!!」
「君には関係ないだろう。離せ、ストーカー!君も真尋の持つクマ目当てなんだろう?」
「違う!俺は・・・小野瀬が好きなんだ。」
ポロリと零れた言葉にはて…とサカキは首を傾げた。
同時に何を言っているんだこの男は…と引き攣った顔をした白髪混じりの男は、ただじっとサカキの瞳を見つめているだけであった。
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