星空エビデンス
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Sakaki's viewpoint
大学を中退して知り合いの紹介で建築作業員になったサカキはよく働き、気配りも出来るので仕事仲間から好かれ毎日楽しく仕事をしていた。
半面、私生活はグダグダでいつも女を掴まえてヤりまくり。
特定の彼女は作らず、セフレは数十人を超えていた。
その容姿からセフレの中の子でもサカキを本気で好きになった女の子もたくさん居た。
告白されても『付き合うまではちょっと…身体だけの仲なら良いよ。』と女性を傷つけるようなことを言って断り続けた。
深い理由は自分でも分からない。ただ、付き合うという行為がまどろっこしかっただけかもしれない。
日々、働いてはヤり…働いてはヤりの変わらない生活を送っていたサカキの前に現れ、変化の兆しを齎したのが『小野瀬真尋』だった。
最初見たのは一瞬、夕方道路のコンクリート埋め立て工事をしていたサカキは水分補給をしながら仲間の木原と今夜行われる合コンの計画を立てていた。
その時、二人の目の前をゆっくり通り過ぎる黒い大きな学ランに身を包んだ小さな背の少年。
一人で下を俯きながらボッーと危なげに歩く姿。
一目見てビクッと寒気立ったサカキは最近のガキは未来に希望も感じていない。
寂しい瞳をしたあの頃の自分と同じだと思った。
仕事後に合コンをして一番スタイルのよかった女を掴まえ、サカキはすぐ家に呼んでセックスをした。
女は豊満な胸を揺らしながらサカキの背に腕を回して甲高い声で綺麗に鳴く。
絶頂が近くなった時、サカキの脳裏に過ぎったのは夕方一目見た少年の哀しい顔。
印象に淡く残ったあの少年の顔が瞳にスライドショー。
その所為で欲情しなくなり、萎えたサカキは素早くナカから陰茎を抜き、女の腹に精を撒き散らした。
そして次の日も同じ時間帯に一人、俯きながら危なげに歩く少年の姿を見た。
次の日も…
休日を挟んでその次の日も…
ニ週間後の雨の日も、傘を差し一人俯きながら危なげに歩く少年の姿を見た。
…雨の日に仕事は無い。
なのに何故、サカキはその場に居たのだろう。
「おのせー!また一人か?帰る友達も居ないのかー哀れだなあー…あはははっ…」
『おのせ』と呼ばれた少年は冷やかしにも気にせず家路を目指す。
何を言われても動じない…
大人より大人なのか、大人しいだけなのか。
「…吉岡クン、鈴木クン。」
立ち止まり振り返ってぽつりと冷やかしている二人の名を呼ぶ"おのせ"
やはり人間、キレる時はキレるよな。
「心配してくれてありがとう。僕、ひまわり町の方なんだ。今日、一緒に帰ってもいい?」
「ぉうっ…オレもひまわり町だ。いいぜ、一緒に帰っても!なあ…吉岡!」
「うん…帰ろうぜ。」
了承を得てニコッと見せたおのせの笑顔にサカキの胸の鼓動は高鳴った。
何qも走った訳でも無いのに心拍数は上がり、耳に心音が谺する。
身体は汗ばみ、目はピクピクと縮瞳をした。
―すげぇ、かわいい笑顔。
―初めて見た。
―ドキドキした。
―ずぅっと、ずっと隣で見ていたいと思った。
名前は"おのせ"って言ったよな…
北中ならこの辺りに住んで居るのかな。
幸い、俺もこの辺りに住んでいるんだ。
調べるだけ調べてみよう。
サカキは素知らぬ顔で"おのせ"の後をつけて歩いた。
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