星空エビデンス
encounter star
黒くてまんまるい大きな瞳、赤いリボンは茶色い肌にお洒落なアクセント。大きな手の平とお腹はふわふわモコモコしていてとても暖かい。
僕が5歳の時に死んだ両親から買ってもらった大切な形見であり、家族。
唯一無二の存在
クマの≪ヌヌちゃん≫
親が居なくたって全然寂しくなんかない。
だってヌヌちゃんに学校であった出来事を真っ先に伝えればニコッと笑ってくれるから。それだけで幸せになれたし、僕もつられて笑顔になれた。
今年から中学生になった僕は新しい場所でもあまり友達が出来なくて、どうしたらいいか分からずヌヌちゃんに相談をした。
人形だから答えるわけがないとみんな思うかもしれないけど、ヌヌちゃんは「笑って話しかければ大丈夫だよ」と僕にアドバイスをくれる。
その通り話しかけてみれば簡単にたくさん友達が出来た。
そんなヌヌちゃん・・・
小さい時は大きく見えたけど、僕より小さく毛もけばけばしてきた。
だからお友達の作り方を教えてくれたお礼も兼ねて、僕とヌヌちゃんは一緒にお風呂に入った。
汚くなった赤いリボンも解いて手でこすり洗い、耳も足も目もきゅっきゅと磨いた。何度も水で濯いであげて、タオルで全身を拭いた。水分を吸収して重たくなったヌヌちゃんをドライヤーで軽く乾かして、ベランダに連れて行った。
新品同様の綺麗さ、可愛い瞳もキラキラに元通り。
「・・・星がきれい。明日は晴れるかな?」
満天の星空にクマのぬいぐるみと僕。独り言を言っているみたいで滑稽な光景。
今日中には乾かないからベランダに干しっぱなしになっちゃうけど、朝ちゃんと部屋の中に入れてあげるからね。
「おやすみ、ヌヌちゃん。」
..☆。+星空エビデンス..+゚☆
寝苦しいからかとても嫌な夢を見てしまった。
それは大切なヌヌちゃんがどこか遠くにいってしまう夢。
追いかけても届かなくて、ヌヌちゃんは暗闇に消えていった。
午前3時、僕は汗をびっしょり掻きながら目覚めた。
ヌヌちゃんを確認しにベランダの扉を開けるとヌヌちゃんがいるはずの場所は水が染みた跡だけが残っていた。
ヌヌちゃんが居ない…
何で・・・
確かに寝る前、ちゃんと居ると確認して僕はカーテンを閉めた。
だけどカーテンは開いていて窓の鍵も開いていた。
嫌な予感が僕の脳を過ぎった。
もしかして、盗まれたのではないかと。
しかし、何故・・どうやって?
強風で下に落ちたのかもしれない。
そう思ってもう一度ベランダに出て、下を見たけど落ちていなかった。
2階に住んでいる僕の部屋にどう侵入するんだ。
落ち付いて、部屋もキッチンも確認した。
それでも見つからなくて、思い切って外に出た。
熱帯夜、外は熱く虫の声が五月蝿く響いている。
僕の部屋の真下、さっきも見たけどもう一度・・・
やはり居ない。
「ヌヌちゃんっ…」
大切な僕の家族ヌヌちゃん・・・
ベランダになんか置いておくんじゃ無かった。
僕は馬鹿だ。
大切なら、自分の傍に・・・傍に置いておけばよかったんだ。
部屋に戻り哀しみに明け暮れる僕の耳に入って来たのは水音。
シャワーの流れる音が聞こえて僕は走ってお風呂場へ向かった。
音は絶えず流れていて、浴室と洗面所を隔てるガラスから透けて見えたのは長い影。
恐る恐る扉を開くと中で知らない男がシャワーを浴びていた。
「小野瀬・・・」
名前を呼ばれ、驚いた僕はすぐに警察に電話しなきゃと思いリビングへ駆けて行った。
が、素早く腕を引かれ全裸の男に行く手を阻まれてしまった。
肩を押され、隠していた拳銃を頭に突き付けられる。
「今から言うことちゃんと聞け。そうしないとお前を撃つぞ。」
その言葉に僕は素直に頷くことしかできなかった。
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