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TWO



7/24(SAT)

欠伸をしながら時計に目をやると短い針は5を指していて、辺りは明け方特有の白い光りに包まれていた。
夏らしく明るくとても綺麗な朝。清々しい気分ですぐに目覚めることができたが、共に巻き戻される事実を思い出してしまった。

それは認めなければいけない出来事だった。



「おはよう、桜庭。」



昨日の夜は突然浅井さんの家に押しかけて、風間さんの命令で一夜をともにしてしまった。

好きな人からの命令で大嫌いな上司と初めての体験。僕は謝ろうと腰に力を入れて起き上がり、タオルで顔を拭いていた浅井さんの元へ歩み寄った。



「浅井さん…昨日はすいませんでした!」



とりあえずひたすら頭を下げた。

イイワケとして僕は泥酔癖があるから「酔っ払ってました」とか適当なことを言って昨日の事を忘れてもらおうと思った。そして、きちんと風間さんに思いを伝えようと心に決めた。



「お前は昨日…酔っ払っていた。そうだよな?」

「はいっ、本当にすいませんでした!!」

「そうか、まぁ、…酒には気をつけろ。」



どうやら彼も彼なりに気遣ってくれているみたいだ。何度も言うが浅井さんは悪くないのだ。

事実エッチはしてないし、ただ僕が無理矢理キスを強要し浅井さんからは身体を撫でられただけ。それだけしかしてない。



「お、俺は朝飯作ってるからな…」

♪〜



浅井さんが寝室を出たと同時に僕の携帯電話に着信。

こんな朝早く電話をしてくるなんて今は1人しかいない。表示された名前を確認してため息をつきながら僕は電話に出た。



「も、もしもし…」

『おはよう。桜庭君…初日はどうだった?』



朝から酷い第一声…
本当ならば嬉しいモーニングコールだが、気分が良さそうな風間さんに少し苛立ちを覚える。

それに彼が思っているほど良い報告は出来ない。何度も言うが僕と浅井さんは何もしていないのだ。



「あ、まぁ…何もありませんでした。」



小さな声で答えた僕をくすりと笑う相手の声。思ったより反応は悪くなく、笑い声はどんどん大きくなる。

携帯を片手にリビングへ移動すると魚の焼けた良い香りが鼻を刺激した。



『もしかして怖くなっちゃってお部屋に行かなかった?証拠に浅井の声、聞かせてよ。』

「わ、わかりました…」



携帯を持ったまま。
僕は怪しまれないようにキッチンで魚を切り分けている浅井さんに話しかけた。

それにしても朝から自分で作るなんてすごい。魚は鯵だろうか、ちゃんと捌いて焼いているようだ。



「浅井さん…今日はお魚ですか?」

「あぁ…実家から送られてきたんだが、嫌いか?」

「いえ、好きです。わざわざありがとうございます…」



会社とは違う普通の日常的な会話。浅井さんとこんなに親しげに今まで話したことがあっただろうか。

そして、電話越しで聞いている風間さんはこれで満足してくれるだろうか。



『ほうほう、本当みたいだね…じゃあ桜庭君、おはようのチュウで今日は終わりにしようか。』

「はっ?」



楽しそうに話す風間さん、朝からきつい指令。

結局現実は現実。
浅井さんには悪いけど、一週間付き合ってもらわないと僕の罪は晴れないようだ。酔っ払った…という口実も水の泡になってしまった。

何も文句を言えない情けない立場の僕はちゃんと風間さんの言うことを聞かなければならない。



「浅井さん、」

「ん?」

「…僕にキスしてください。」

「…は?」



あっけらかんとした浅井さんに近づいて息をとめ、僕から背伸びをしてまた強引にキスをした。

朝からリアルな感覚に耐えられなくてすぐに離れようとしたら、予想外。浅井さんは僕の腰に手を回して熱いキスをして。

そのまさかの出来事に僕は携帯を落としてしまい、動揺から目をパッと開いた。


すると、



「んんっ、はっ…」



甘い吐息を漏らし、恍惚な表情を浮かべ僕にキスをする浅井さん。何故、何故この人はこんなうっとりした顔で僕にキスしているんだろう。

その顔に恐れを感じた僕は浅井さんの顔を見れずに口を拭って一歩離れた。



「っさ…桜庭、昨日言ったこと、」

「ごめんなさい。」

「本当に実行するつもりなのか?」

「はい、昨日から始まってます。今日は二日目です。」



僕の本来の目的を知らない浅井さんはキッチンに再び身体を向け、顔を赤く染めたまま料理の盛り付けをし始めた。

落ちた電話を拾い上げて耳に当てた時にはピーと電子音のみ流れていて、既に切られていた。





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あきゅろす。
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