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エピローグ



風間さんとの交換条件を飲んだ浅井さんは結果、周囲の絶大な信頼と引き止めがあり退社することはできなかった。

そうなったことに憤慨した風間さんは浅井さんを呼び出し問いただしたところ彼は桜庭のことを傷つけたら俺が許さないと言って威圧し、残っていた全てのデータをその場で消させたらしい。

風間さんは何をしたかったのかよく分からず周囲からの反感を買い今は大分肩身の狭いところで務めている。

彼のおかげで浅井さんのことが知れて今の関係があるので害は0では無かったが、自分の利益しか考えない人間は僕は嫌いだ。

僕を出汁に浅井さんを追い詰めようとして策士策に溺れるとはまさにこのことである。



「桜庭、ヨシダ薬局からフルーリッシュの注文の電話が来てるぞ!」

「はい!」

「絶好調だな、桜庭。だが、今日頼んだ資料はちゃんとまとめておけよ。じゃないと来月のプレゼン任せないからな。」



職場では至って普通の上司と部下の関係だけど、家に帰れば恋人。浅井さんはとっても真面目だから自分から口外することは無いけど
、残念ながら周りにはもうバレている。



「浅井、常務の朝比奈さんから電話や!」

「じょ、常務?」

「フルーリッシュの件でーやて、はよ変わりぃや、」



相変わらず上司から絶大な信頼を得ている浅井さんは常務とも関わりがあるみたいで、僕は思わず声に出して驚いてしまった。

とっても仕事の出来る相手か恋人なんて僕は何にも出来ないけれど、とても嬉しい。



「みんな、嬉しい報告だ。今回、三課の営業成績が認められて来秋発売の新商品の宣伝本部長に百瀬部長が選ばれた!部長、おめでとうございます。」

「ほほほ、ほ、ホンマに?!」

「ええ、朝比奈常務直々に百瀬君にと今電話が・・・」

「じょ、常務も片隅に置けないやっちゃなー、わざわざ浅井さんに言わせてー、嬉しすぎて泣きそうやああ、」



まだ商品名は公表されていないが、秋に発売される新商品の宣伝促進に僕達の課が選ばれ、それをしきるTOPに百瀬部長が選出された。

浅井さんも武田さんも一緒に部長と頑張ってきただけとても嬉しいのか拍手をしている。

こんな大きなチャンスをもらったからには部長を僕たちが支えていかないと行けない。



「今日は祝賀会や!みんな、仕事終わったら魚乃屋でパアッーと飲むで!」

「やったー!」

「もちろん、俺の奢りや!」



上機嫌な部長と喜ぶみんな。
フルーリッシュの件ではミスがあったり、大変だったけどそれを乗り越えた三課の頑張りが認められて次の仕事に繋がった。

僕は本当、いい仲間に出会えたと思う。そして、いい人に出会えたと思う。



「桜庭、」

「はい。」

「飲み会…酒は飲むなよ。飲むなら飲むで必ず俺の隣に座れ。分かったな。」

「…はい。」



僕は浅井さんとの一週間を過ごして見えていなかった思いや言葉に気づく事ができた。前の僕ならこんなこと言われて嫌な気持ちになっていたに違いない。でも今は浅井さんとじゃなきゃできないこれからを一緒に作って行きたい。

浅井さんとずっーといられますように、願いを込めて…今日も彼を見つめている。



END




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