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同じ布団から出てシャワーを浴びてご飯を食べる。部下と上司なだけ、親密な関係になるわけない存在の浅井さんと過ごして自分自身こんな奴だったんだなんて…新しい発見がいっぱいあった。
お酒が弱い僕に外で飲むのは止せと言ったり、細かい配慮をしてくれたり。きっちりしている浅井さんはいつも僕のことを考えてくれている。
そんな気がする。
「そ…倉庫掃除ですか?」
「そうやっ!新人のカズくんとヒメ、ムラちゃんには精一杯働いてもらうでっ!」
「課長、桜庭は昨日仕事たくさんあったし…ちょっと休ませてやったらどうですか?」
こんな生活も6日目、今日は朝から課長に頼まれて新人3人で倉庫掃除をすることに。でも姫宮が僕は昨日頑張って仕事をしていたからやらなくていいのではないかと言ってくれた。
「んなわけにはいかへんよ、ヒメ。カズくんもムラちゃんも平等や!浅井や武田の監督は無しやけどサボったら許さへんよ!」
「はーい…」
「いってらっしゃい!」
が、百瀬課長からのNGサイン。結局僕と姫宮・村雨の3人は地下室の書類庫、整理されていない暗い倉庫の掃除を任された。
ヨルヒフードの本社は20階まであって、各部署ごといろんな倉庫を持っている。いろんな商品開発をする開発課は特に倉庫が汚い…らしい。三課は開発課でなく営業なのでそこそこ。三課ナンバー2の浅井さんが綺麗好きで管理しているから課長が言うほど汚くはなかった。
「百瀬課長ってホント適当だよな…全然整理するほどでも無いじゃん。」
「なぁーっ!浅井さんが日頃から整理してるらしいしな!綺麗だからいいんじゃね?」
「うん…でも今回はこの段ボールに入ってる書類をシュレッダーにかけるんだって、頑張ろ二人とも!」
文句ばかり言う二人を呼んで僕は積み上げられた荷物を下ろした。その段ボールの中にはたくさん使わなくなった商品のリストがあって、シュレッダーをかけるだけでも時間がかかるだろう。
入社して一年も経っていない僕らはこんな企画商品もあったんだねと話しながら整理した。
◆
お昼休憩後シュレッダーがけを終えても倉庫の掃き掃除、拭き掃除をと命じられた僕らはシャツが汚れないようエプロンをして清掃し始めた。
会社員がおばちゃんみたいな格好をして雑巾絞ってるなんてヘンテコ。それでもパソコンをやらなくていいから楽かもしれないと村雨だけは上機嫌だった。
「村雨はパソコンが苦手だからコッチの方が向いてるのかもな、」
「あ、浅井さん!お疲れ様ですっ!」
「3人ともサボってないだろうな。ちゃんと掃除してから上がれよ、」
ちょうど僕が床を拭いていたらと浅井さんが僕達の様子を伺いに来た。何だか偉そうな態度だったんだけど、姫宮も村雨も笑顔で受け答えしていたから僕も立ち上がって頭を下げた。
「桜庭、」
「はいっ!」
「…あの、あれだ。今日は早く…早く帰るぞ、分かったな。」
「へっ、?」
頬を赤く染めながら姫宮と村雨が居るのにも関わらず帰りの話をする浅井さん。
発した僕は振り返って二人を見るけど手遅れ、まさかそんな関係なのでは無いかと姫宮と村雨は目を丸く開いていた。
「あわっ、浅井さん!その話はまた違うところでも大丈、
「カレーは下ごしらえがあるからな…、早めに帰って一緒に作るぞ。ちゃんと俺が教えてやる。」
「は…はいっ、」
どうやら浅井さんは驚いている二人を気にしていないよう。僕は二人の視線が恥ずかしくて冷や汗。
浅井さんは多分料理を教える目的で僕に話しかけたのだろうけど、普段こんなたわいもない会話なんて一度もしたことなかったから。さらに二人は僕ら二人がいつの間にか仲良くなっていたことにビックリしているのだろうなと思った。
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