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そんな貴方が。(坂銀)

「ほんに久しいの〜!いつ見てもおんしは綺麗じゃ、金時」

久しぶりに辰馬が地球に帰って来た。…確かに嬉しい。まぁ嬉しい。嬉しいっちゃ嬉しい。
けど今俺が言いたいのはそんな事じゃなくて、

…つまり、この状況は何だ?


「今帰っちゅうよー、きんとき〜」

俺は、そう言って玄関に入って来た辰馬に、言葉を返す間もなくぎゅっと抱きしめられた。あぁ、うん、いつも通り。
半年ぶりだって言うのに一日仕事して帰ってきたみたいな気軽さで。実はコイツのそう言う所、嫌いじゃない。
そしたら何故か次の瞬間に視界が反転して、気が付いた時にはもう背中と床とが仲良くしていた。…早いよな、行動。無駄に。

きっとどうせまた難しい仕事ばっかして疲れてんのに、俺のために無理矢理時間作るような奴だから、せめてお帰り、とか、お疲れさん、くらい言わせてくれても良いと思う。

そして俺の視界いっぱい天井…と、毛玉。

「…たつま」
「ん〜?」
「…取り合えず中入んねー?」
「久しいきに、余裕無いぜよ…」

いやいやいや。ここ玄関だから。いくらドア閉まってても玄関だからね、一応。
眉間に皺寄せて苦笑いとかすげー色っぽいけど。いくら銀さんでもさすがに玄関でとかありえねーからさ、なあ聞いてる?聞いてないよね?

そんで俺を押し倒してる辰馬は相変わらずの馬鹿力で、俺的に抵抗してんだけど全く微動だにしない。

「たつ…ま、やめ、」
「きんとき、ええ臭いばするきに、」

すんすん吸われて擽ったいけど。これは流されたらダメじゃね?うん。

…で。

もっかい抵抗を試みたけど、やっぱり勝てる訳無くて。コイツは俺より身長高いし、腕太てーし肩幅も以外と…って違ェェエ!!!!
てゆーか俺だって男としてそれなりな方だと思うんだけど。
それで結局抵抗すんのも面倒臭くなって、流されてやった。
久しぶりのキスは気持ち良かったし、背中に辰馬のでかい手が這うのは落ち着く。あと、俺が体の力抜いたら、嬉しそうに笑うから。きっと俺が辰馬の邪気の無い笑顔に弱いの知っててやってるんだ。完全なる確信犯。チクショー。

そんで、神楽と新八いなくて良かった、と朦朧とした頭で思った。


*****************


怠い体を引きずって居間まで移動する。むしろ辰馬に担がれるような格好で。

「なつかしいのー、何も変わっちょらん」
「そりゃあ半年だからな。何も変わんねーよ。」

やたらとキョロキョロする辰馬。俺は動く気がしなくて、早々にソファに身を沈めた。

そういや忘れてたけど、コイツは昔から体力だけは無駄に有り余ってる奴だった。あと絶倫。普通の女じゃ持たねーと思う。さっきも何回付き合わされた事か。もう腰いてぇっつの。

「きんとき、」

一周して一通り部屋を眺め、気が済んだのか辰馬がソファに腰を下ろす。

「ん〜?」
「おんし、最近どうじゃ?」
「はあ?最近…別に普通だけど。」
「…そげん、良か事やき」
「まぁ、そーだな」
「…きんとき、」
「あ?」

「半年は長い、のう」


辰馬の臭いがした。正確に言えば、抱きしめられた。

「…たつ、」

―ああ、こう言う時大概コイツは。
一応こんな時、辰馬の考えてることは分かる、ような気がする。多分だけど。

だから俺は、辰馬を抱き締め返した。ふわふわの毛玉に指を絡める。


「辰馬、…お帰り、」

「…ああ、」

「…お疲れさん。」

「…まっことのう」

「…頑張り過ぎは体に良くねーぞ」

「…わかっちゅうよ、」
「…たつま、」

「…ん、」



「……好きだから、ちゃんと」



「…ワシもじゃ、金時」



「…いつでも帰って来ていーから、俺んとこ」

「…きんときは優しいきに、…」

「…どーせ仕事、疲れてんだろ?寝室で休むか?」

そう言って、俺は辰馬に体を密着させた。
…こうしてる方が、なんか…好きなんだよ、俺的に。

でも俺は、そうした事をすぐに後悔することになる。

「…いや…、のお、金時」
「…ん?」
「ほれ」

そう言って元々近かった体を更に近づけてくる辰馬。
ここで気づいて後悔しましたよコノヤロー。抱き着かなきゃ良かった、って。

「…ッお前!何でンなとこおっ勃ててんだァァアアア!!!変態かァ!今の雰囲気の何処にそんなになる要素があったんだよ!!!休めっつただろーがァ!」
「アッハッハッ、そりゃあ金時に密着されて、まっこと色っぽい目で好きじゃーなんて言われちゅうき、当然じゃ。ワシの息子に悪気は無いき。それにどうせなら、疲れも金時に癒して欲しいぜよー」

俺の腰に当たる、辰馬のブツ。さっき玄関であれだけヤッたのに、まだ盛りたりねぇとかホント勘弁。

「ホントにお前はムードも糞もねェなコノヤロー!離せェ!!!」
「お断りじゃ〜、玄関やないき、もう一発いくぜよ〜」
「いかねェよ!むしろお前がどっか行けェェエ!!!」

そう言いつつも、既に流され始めてる俺。
ホントに、コイツにだけは勝てねぇよ、マジ。

全部理解してるみてぇなのに、ふいにどっか抜けてたり、大人みてぇに色々分かってるように見えるのに案外子供っぽかったり。
そんで、いつも底抜けに明るくて、俺の調度良い所まで線引いて、気にかけてくれて。

だけど、たまに。
そう、本当にたまに、今日みたいに不安そうにする時もあったりして。

でも、そんな色々を全て含めて"辰馬"であり、俺はそんな辰馬が嫌いじゃねぇ。


―…しょうがねぇな。
俺は諦めの溜め息をついて、辰馬の首に腕を回した。





―…ああやっぱり、

神楽と新八居なくてよかった、なんて今更。


END

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