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pillowtalk






大きな寝台の上。
柔らかい肌触りの毛布に包まって素肌を合わせる。さらさらと音が聞こえそうな程きめ細かく白い肌は手触りが良くて暖かくて気持ち良い。素足を動かすとシーツの冷たい部分が触れて身体が震えた。それすら心地良く、合わせた肌の温もりを強調させる。
このまま永遠の眠りに落ちても構わないとさえ思う。馬鹿みたいだ。
でも本当だ。本当なんだ。

暖かくて優しくて目が回りそうなくらい、幸せ。

普段見る事の出来ない、優しさと愛に溢れた美しい笑顔を見ていた。大きな目を細めてとても綺麗に笑うから、僕は馬鹿な愚か者みたいにただ見惚れた。初めて虹を見た時の事を何故か一瞬だけ思い出したけど直ぐに忘れた。
左と右側に感じる心臓の音が重なる。同じ鼓動を刻んでいるという、どうしようもない事実に泣きたくなって縋りつくみたいに抱き着いた。

「どうした?」
ひどく優しい声に喉の奥が痛くなる。
だめだ、泣きそうだ。
「しあわせだな‥‥と思って」
「なんだそれは。安上がりな奴だなぁ」
くすくすと笑う息が首筋にかかる。
「そうでも、ないですよ。だってこんな事、他の人には経験出来ないし」
そうだ。僕以外には、誰にも。
させない。


「じゃあ僕も同じだ」
耳元に擦り付いた唇が囁く。抱きしめ返してくれた腕に力が入る。左右の鼓動が大きくなっていく。このまま体の境目なんか無くなってしまえばいいんだ。
なんて、また。
考えたって仕方のないことばかりで脳内が埋め尽くされる。

髪に触れた。
冷たくて柔らかい。指に絡ませて弄ぶ。顔を上げた彼と目が合う。
「何を考えている?」
不思議だ。こんな事をしているなんて。
「そんな事は、あなたが一番良く知ってるでしょう」
この人の側に僕がいる事も、この人が僕の側にいる事も。何もかも、信じられないくらいの幸福の最大値を見ている気分だ。
「知ってる」
太陽より眩しく月より神々しく微笑んだ唇が近づく。

ああ。僕はこの人が好きで堪らないんだ。
右側の鼓動が止まる時は左の鼓動も止まるんだ。



今日は昨日より好きでした。
明日は今日より大好きです。












end.


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あきゅろす。
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