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きみのせい※(青益)
※青益です。最初からそんな感じになってます。
※軽度の暴力表現があります。













「今どんな気持ちですか?」
「とっても残念な気持ちです」
青木が益田の身体に跨りながら尋ねると、八の字にした眉を更に顰めて益田は答えた。
「まさか君に手錠をかける日が来るとは思っていませんでしたよ」
「僕も自分の手にワッパがかけられる日が来ようとは夢にも思いませんでした」
冷え冷えとした手錠が益田の両手を縛めている。手錠は、掛ける側であって掛けられる側ではなかった頃からの付き合いだ。良く知るこの道具の威力を益田は身をもって思い知った。
「手錠をかけられると、人間てこんな気持ちになるんですね。知りませんでした」
「こうして欲しいと言い出したのは君ですよ。満足でしょう?」
「ええ。真面目な青木さんが、僕のふざけた要望に応えてくれるなんて思いませんでしたけどね」
益田は下から見上げてニヤリと笑ってみせた。
青木はそれをまじまじ見つめ、手錠で縛めた益田の両手首を掴んで頭の上でひとまとめにした。その万歳のような形をとった益田の頬に掌を押し付けるように触れ、撫でる。
「いい格好ですよ益田君。うん、いい眺めだ」
「あれれ?青木さん、実は好きなんですか?こういうの」
「そうですね。いつも考えていたのかもれませんね」
頬を撫でていた手が止まった。そのまま包み込むようにして置かれた掌。その温もりが消えたとと同時に頬に衝撃が走った。

「何するんですか。痛いじゃありませんか」
益田が張られた頬に自分の手を当てようとするとその手を掴まれ、また頭上に持っていかれた。
「叩いたんだから当然です」
青木は言いながら今度は反対側の頬を張った。
「何で叩くんですか。やめてくださいよ。僕ぁ暴力は嫌いです」
「僕だって嫌いですよ」
そう言って、頬を張るのをやめない。
「青木さんにこんな趣味があったなんて意外です」
「僕もです。でも、僕がこんな事をするのは益田君にだけですよ」
青木はようやく叩く手を止めて息を整えた。下から益田の濡れた目が見上げてくる。泣いているのだろうか。
「それは嬉しいですね」
「そうですか」
覆い被さって益田の薄い唇を柔らかく喰む。青木の手が身体を這い回ると益田は一瞬びくりと肩を震わせた。身体をもぞもぞと動かして足を閉じようとすると、制止するように間に青木の身体が割って入った。
「君だって好きなんじゃないですか」
足の間に座り込んだ青木は、益田のスラックスの前が張り詰めているのを確認して満足気に笑う。
「手錠をかけられて殴られて、こんなになるなんて変態ですよ。節操無しですか」
「僕は状況設定嗜好ですからね。しかも妄想ではなくこれは現実です。大変に燃える訳です」
細めた切長の目が濡れている。泣いているわけではなかったのだ。いや、泣いてはいたのだろうがそれは微妙に意味合いが違ったのだ。
青木は益田のシャツをスラックスから引き摺りだして下からボタンを外していく。ネクタイに手をかけた所で気が付いた。この体勢では服が脱がせられない。
「このまましても良いですか?」



「どうぞ」
いつもそうじゃないか、と身体の力を抜いて益田は思う。服を着ていようがいまいが中途半端に脱がされていようが、結局やる事自体に変わりはない。だったらいっそ、お互い気持ち良くなってしまえば何の問題もない。そういう関係なのだから割り切る事こそが肝要だ。青木が何を考えていようと、自分が誰かの代用品で青木も誰かの代用品であると分かり切っているのだから快楽を享受できるのならどうでも良い。
けれど。あからさまにそれだけを求められる事と求める事が、割と心を疲弊させるのだ。これは一体なぜなのか。

どうぞと言って身体の力を抜く益田を見下ろす。良い気味だ。手錠を使って欲しいと言われて心底軽蔑した。元警官であるなら、それがどれだけ重要な代物か知らない筈はない。それをこんな下らない事に使用しろとは聞いて呆れた。だが、益田に手錠を嵌めて鍵をかけた時、青木の中の何かが崩れた。それは元から崩れかかっていたものなのかもしれないが、この時、確実に崩れて消えたのだと青木自身が自覚した。益田のせいだ。全部この男のせいだ。
だけど。顔を歪ませて熱っぽい視線を向けて来る益田を何も感じない振りであしらう事は結構、骨が折れるのだ。これは一体なぜなのか。


張り詰めた場所を解放するようにスラックスのジッパーを広げて下着ごと膝下までずり下げる。飛び出してきた塊が熱い液体を飛び散らして青木の掌でピクピクと跳ねた。
「ほんと、節操がないな、君」
「すみませんね‥っ」
益田は今更恥じらうかのように、縛められている手を顔の前に翳した。膝の裏に手を掛け、足を広げさせて張り詰めたものを握ってゆるゆると擦りあげると、ピンと立った乳首を見せつけるように背をしならせた。ぴったりとした肌着のせいで、布の上からでもくっきりとその形が浮かんでいる。誘われる様にそこを舌先でつつくと、益田は吐息を漏らした。同時に、青木の手の中で硬くなっていく陰茎。素直な反応が支配欲を掻き立てる。

乳輪ごとカリカリと歯で齧ると、ひっと息を呑んで目を瞑る。じわりと益田の目尻に涙が滲む。
「痛いですか?でも、痛い方が気持ち良いんでしょう?」
一部分だけ色が変わった唾液まみれの肌着の下から、ぷくりとした乳首が透けている。そこに吸い付いて執拗に舌でねぶりながら、片方の手を肌着の中に滑り込ませてもう一方の乳首をつまみ上げて指先で転がす。
「ふ、‥‥っう、んんっ」
身を捩りながら必死に押し殺す声の合間に、カシャンという手錠の擦れる音が交じる。それは益田の耳にも届いているようで、いつもより硬度が増すのが早く、先端からだらだらと垂れる液の粘度が高い気がする。
はぁはぁと息が荒い。
本当にこういうシチュエーションが好きなのか。青木は侮蔑するように、ふっと鼻で笑って指先に力を入れて尖りを捏ねた。
「あっ‥‥ぁん、あぁ‥ん、んっ」
押し殺す声に女のような喘ぎが混ざり始めた。腰を揺らして青木の腹に中心を擦り付けている。どんな顔をしているのか見てやろうと、チラと視線を上に向けるが益田の手が邪魔をしていた。その手を掴んで上に持ち上げる。
「ぅ、っ‥!」
尚も隠すように顔を背ける益田に苛立ち、長い前髪を掴んで正面を向かせて顔を覗き込んだ。

「こっち向いてくださいよ。顔見せてください。手錠を掛けられて叩かれて勃起して、乳首を弄られただけでいってしまいそうな君の顔を僕にちゃんと見せてくださいよ、益田君」
わざと直接的な物言いをする。その方が益田には効果があるのだ。ギリっと髪を掴む指に力を込めてこちらに顔を向かせて益田と視線を絡ませる。思った通り顔を赤らめて目に玉のような涙を浮かべていた。
「や‥‥ぁ、あっ」
痛い、です、と訴える益田の声は艶と甘い響きを帯びていた。つぅ、と涙が赤い頬を伝う。八重歯がのぞく口を僅かに開けて、唾液で濡れた舌をチラチラとさせた益田の表情はこの上なく扇情的だった。
「ふっ‥‥何て顔、してるんですか」
それに、頭の奥のもっと奥の方にある何かが揺さぶられる。青木は益田の顔を殴った。カシャンと手錠が鳴る。先程戯れに張った時とは別に拳で殴った。手加減はしたつもりだが、果たしてどうか。
「ぐ、‥‥っ」
あおきさん──、
益田は驚いたような縋る視線を向ける。
いつもの、少し前までの飄々とした軽薄さは微塵もない。口の端に血を滲ませて益田は苦しそうに喘いだ。

殴りたい。殴り付けて滅茶苦茶にしたい。
それは青木の、頭の中に以前からある益田に対する感情だった。手錠でなくとも、何かで手足を拘束して殴り付けてみたい。どんな顔をするだろうかと考えただけで心身が昂った。
何故かなど知らない。自分にこんな下衆野郎じみた性癖があるなんて信じられなかった。何度かこの手で捕縛した事のある連中と同じだとは認めたくなかった。無理に理由を付けるならばそれは益田のせいだ。それが証拠にこの感情は益田にのみ発露する。

だから、今まさにそれが目の前にあって興奮しない訳がない。青木はぶるりと震えて、もう一度益田を殴った。
「あ、が‥‥っは」
顔を歪めて痛みを堪える益田の姿に、ゾクゾクとしたものが肚の中から湧き上がる。下腹部が熱い。はぁはぁと息が乱れ、心臓がばくばくと煩い。興奮しすぎて目の前の景色が揺れた。
「‥‥あ、青木さんだって、」
掠れた声が聞こえる。
「青木さんだって、同じじゃないですか。人を殴って、そこをそんなにしちゃって‥‥僕より最低だ」
血の滲んだ口元を歪めて益田は笑いながら言った。青木は再び益田の顔に手を伸ばす。びくりと肩を竦ませて青木の手から逃れようとする益田の尖った顎を掴む。
「少し」
無理矢理こちらを向かせる。唇が切れていた。爪が当たったのか頬に擦り傷ができて血が滲んでいる。もしかしたら明日、顔は腫れるかもしれない。いい気味だ。
「静かにして貰えますか」
「い‥‥っ」
その唇の切れた部分に舌を這わせて舐め上げる。血の味がした。顎にかかる指先に力を入れて、痛みに歯を食いしばった口を無理矢理こじ開けて舌をねじ込んだ。
「ん、ぅ‥‥っ」
手を縛められているせいで上手く抵抗出来ない益田は、ただカシャカシャと煩く手錠を鳴らすしかない。逃げる益田の舌を捕まえて嬲った。
身体をビクビクとさせている益田は、本当にこうして乱暴に扱われる事が好きなのだろう。
青木は舌を抜いて、再び侮蔑を込めて笑った。
そんな青木を、切長の目を赤くして睨んでいる益田の中途半端に脱がせたままだったスラックスを全て取り払う。先走りは後孔もぐっしょりと濡らす程に滴っていて、どれだけ興奮したのだろうとまた笑った。けれど、自分も似たような状態なのだから始末が悪い。

青木は既に完全に勃ち上がっている自分のものを引き出すと素早くゴムを被せ、濡れてひくつく益田の後孔に充てがう。
「っ!ま‥って!青木さんっ、まだ‥‥っ」
その感触に気が付いた益田が怯えたように抵抗する。青木は構わずに両足を持ち上げて開かせ、腰を進めた。
「嫌、だ‥‥ぁ‥‥っ!」
青木のものを咥える事に慣れたそこは温かく蕩けていて、十分に施さずともすんなりと受け入れた。
「ふ‥‥ぅ、っ」
ぬりっ、とした感覚に先端が包まれ青木は震えた。
「う、んんっ‥‥ん─っ」
「痛くはないでしょう、こんなに簡単に入れておいて」
ほら、と更に腰を押し付けて中に進んだ。
「っぐ、ぅうう‥‥っ」
顔を歪めて目をぎゅっと瞑り、歯を食いしばる益田は身体を硬くして圧迫感に耐えている。
「益田君、息、吸って下さい。ねぇ、」
血の滲む口元をゆっくりと撫でると、びくりとして目を見開いた。青木と視線を合わせた目尻から涙が溢れる。
「あ‥‥あお、き‥さん」
はふぅっという音をさせながら益田は息を大きく吸い、そしてゆっくりと吐き出した。薄い胸が上下して身体の硬直を解く。すると同時に中が締まった。
「っ、!」
「あっ、ん‥‥ッ」
蠕いて青木に絡みつく。誘導されるように中にめり込ませていくと益田は背をしならせてのけぞった。反り返って腹に着きそうな益田の鈴口から透明な液体が溢れ出る。それを握って上下に擦り上げると益田は泣きながら鳴いた。
「はっ‥あ、あっ‥‥あんっ、あっぁぁ──‥‥ッ」
身をくねらせて腰を振る益田の痴態に煽られて腰を大きく突き上げると、蠕く肉壁に吸い付かれて堪らなく頭の芯が痺れた。
「ぁ‥‥気持ちいい」
掠れる声で呟いて、青木は益田に覆い被さって唇を合わせた。先程の乱暴な扱いではなく性的な興奮を得ようとするように、わざと焦らしながら舌を絡める。軟体動物同士が絡み合うような、ぬるぬるとした感触が背中を震わせた。

小刻みに出し入れを繰り返す度、揺れる益田の頭上の手錠が鳴る。
カシャ、カシャン。
この音を聞くたび、暫くは今日の事を思い出すのだろうか。こんな事に使われた手錠で捕まる犯罪者はなんだか憐れだ。
そんな益体もない事を考えて青木は益田の中で射精した。








end.






















「青木さん、鍵ありますよね」
「え?ああ、勿論。そこのテーブルの上に置いた筈ですよ」
「テーブル‥?ああ‥‥って、ありませんけど?」
「‥‥え?ない、ですか?」
「‥‥ありません」
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「えっと、まぁ」
「え、冗談でしょ?あんなに理性がぶっ飛んだ状態でもゴムを着ける事を忘れない男青木文蔵が、手錠の鍵を無くしただなんて‥‥!」
「きみ、案外冷静だったんだな」

その後、鍵は机の下から無事に発見されましたとさ☆



おわり。

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