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一日一話、一週間のシンフォニー《六日目》寝過ごした先は終点で

※ED後。現代お持ち帰りパラレル


「ワギモ――起きた?」
「ん?遠夜?…あれ?うわぁ!!」

目蓋をこすって開いた眼が、最初に見たのは真っ暗な景色だった。
一体どれくらい寝てしまったのだろうか?
連絡もなしにこんな時間まで…。
うわぁ、風早怒ってるだろうなあ。
背筋を駆け上がる少し怖い予感を落ち付かせるように、千尋は伏せがちに目蓋を瞬かせた。
その不安な様子が伝わったのか、遠夜が千尋の手を包み込むように握りしめる。

「ワギモ――大丈夫。心配、ない」
「え?」
「俺が、ついている」
「遠夜が?」
「俺も、一緒に、帰る」
「本当?」

それは、一緒に風早のお説教を受けてくれるということだろうか?
こくりと頷く遠夜の顔が、いつもにも増して頼もしく感じる。

「帰ろう」

立ちあがった遠夜に引かれるように、千尋もベンチから立ち上がる。
視界に入った駅名を見れば、終着駅。
こんな所まで乗り過ごしてしまったのか…。
見れば、向い側には始発電車が間もなく発車待ち。
これに乗れば、夕飯までには帰れるだろうか。…いや、間に合わない。
さあっと引いていく血の気を感じながら、とりあえずメールで連絡を…と携帯を取り出した千尋は、遠夜に尋ねる。

「遠夜も寝ちゃったの?」

ふるふると首を振るということは、起きていたのだろうか。

「起こしてくれてもよかったのに」

少し恨み言を言いたくなった。
この後に待っている、風早の心配ぶりを考えたら、これくらい言ってもいいだろう。

「ワギモが、とても気持ちよさそうに眠っていたから――」
「でも…」
「俺の肩で眠るワギモ、幸せそうだった――」

そりゃ、確かにぐっすりだったけど…。

「俺も――。眠るワギモ、見るの幸せだった」
「………っ」

幸せそうに微笑むその顔は、その時を思い出しているようで、思わず顔がほころんでしまうけど、けど。
それは、つまり、ずっと寝顔を見られていたってことで…
私、ちゃんときれいに寝てられた?寝言とか言ってなかった?まさかまさか半目とかになってなかったよね?!
千尋は、困ったような照れたような顔をして、向かいのホームに待つ始発電車に乗り込んだ。
目に着いた一番奥の席に座りこむ。もう寝すごすことはないだろう。
だって、こんなにも顔が熱い。

「ワギモ?どうした?顔が赤い――。熱ある?」

遅れて乗ってきた遠夜が、額に手を伸ばす。
少し冷たい手が、火照った額に気持ちよかった。

「やっぱり――……」

心配そうな声に答えず、千尋は目をつぶって手の先にある遠夜をにらんだ。
熱があるのは、遠夜のせいだよ。わかってないでしょ。

隣に座ってこちらを覗き込んでくる遠夜の視線を避けるように、その肩へ千尋は顔をうずめた。

「ワギモ?」

帰ったら、遠矢が、風早に思いっきりお説教されますように。






《六日目》寝過ごした先は終点で





FIN.


現代お持ち帰りEDがあった場合。
終着駅でどうやって千尋を下したのかとかつっこみつつ。
それはそれ、お姫様だっこで下したんでしょうと呟いてみる。
2010/03/03
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