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登校=夢とさようなら 後編

空を埋める桜。その薄紅色に導かれながら行時は歩く。道には学校や会社に向かう人がチラホラいる程度。うん、この時間が通学時間ベストと見た。あまり人が多いと集中して歩けないからなぁ。そう考えながらポケットからイヤホンを取り出し音楽を再生する。

『−ジジッ、−−−♪−』

曲を聴きながら登校するのは、その日の運をも決めるほど重大な行為だと思う。その日の気分に合わせた曲を選択し、良いスタート位置から流し始める。曲を聞いている間は集中するため会話は拒否。雑音が入るともうやる気が失せるから交通量が多いところは避ける。とまぁ、曲を聴くためにこういった血と汗の努力が必要なわけだ。へ?無駄なこだわりじゃないかと?いま誰か思っただろ!?失礼だぞ!!世の中の約30%の方はこんなこだわりがあるはず!!ほら今だってすれ違った小学生がPSPをやりながら歩いてたぞ!・・・・ってあれ?PSPっておい、小学生。さすがにPSPは早すぎだろ。

「♪−♪♪−♪♪♪」

曲がサビに入った所で目的地の公園に着いた。

【さくら公園】

なんともまぁありきたりなネームの公園だが、名に恥じぬほど沢山の桜がそこには咲き乱れていた。

「うひゃあー・・・相変わらずすこたま(沢山)あるなー。」

昨日見た時は八分咲きだった桜は満開を迎え咲き誇っていた。

「みんな別嬪さんだなぁ。角館の桜とはまた違う美しさだねぇ。」

思わず、先週まで住んでいた故郷の桜の名所を思い出す。あっちはまだ雪が山に残っていたからまだまだ春は遠い。

「・・・誰か居るかな・・・むしろ誰も居ないよね?・・・」

キョロキョロと辺りを見渡す挙動不振な行動をとりながら、誰も居ない事を確認する。

「・・・スゥー。」

深く息を吸い込むと、






♪咲く咲く桜舞の道

行く行く娘白い花

咲く咲く桜舞の道

着く着く息子赤い頬♪





昔、母から教わったわらべ唄を口ずさむ。





「・・・行時・・・ちゃん?」

「咲く咲くーッ。」

突然声をかけられた行時は声のするほうへ急いで顔を向ける。

反対側の入口に居る人は長身でガッシリした体格の男性だった。白い髪に紫色の眼帯をした、一見何処かの不良かと思える風貌は薄紅色が埋める空の下では違和感が無く。まるでその景色の一部にも思えた。

綺麗な人・・・?誰だろう?あ、でも若干・・・チカちゃんに似ている?

「おーい元親ー!」

行時がじっと彼を見ていると彼の後ろから声がした。

その声を聞き行時は茹蛸に負けないくらい顔を赤くしてその場から逃げた。

音痴の唄を聞かれた!!

頭の中の羞恥を忘れるようにオーディオの音量を上げ早足でその場から離れた。

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あきゅろす。
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