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朝食=1日の運を左右する 後編


我が朔弥家では毎朝のご飯は父が作ってくれる。これはお母さんがいた時から変わらない。そう、お父さんは料理が好きなのだ。それも仕事柄なのか純和食しか作らない。小さい頃はテレビのアニメや少女漫画でみたトースト朝食を憧れたものだが、あれはダメだ。腹持ちが悪すぎる。昔、お父さんが出張などで家にい居ない時に体験済みだから保証できる。

「ところで行時、今日から新しい学校だったね。道わかるかい?」

今が旬の菜の花のおひたしに箸を伸ばした所でお父さんが尋ねてきた。

「あー、うん。大丈ー・・・ぶ、うん。」

「不安な返答だねぇ。どうせなら一緒に行こうかい?先生方に挨拶したいしね。」


・・・。


「いや、いいです。てか、昨日一緒に行ったじゃん。んで挨拶も済ましたじゃん。」

いきなりどうしたパピー。今話題の若年性アルツハイマーか。

「いやいや、やっぱりこれからお世話になる先生方には何回も挨拶しないとだな、何かあったとき助かるぞ?」

「うわ、やだこの人。コネ作る気だよ。あーあ、これだから大人はずるいよー」

ずずずっとみそ汁をすする。お、煮干しが入ってた。

「まぁ、コネはともかく。大丈夫だよ。道順ちゃんと覚えてたし。安心してお父さんは仕事に励んで下さいな。」

「そうかい・・・。」

ちょ、お父さん。拗ねないで、キノコ生えるよ。

「それに、学校行く前にちょっと寄りたい所があるんだ。」

ごちそうさまと手を合わせて言ってから自分の食べ終わった食器を片付ける。

「寄りたい所?」

「近くの公園。昔よく遊んだ所。」

あぁ、あそこか。自分の食べ終わった後の食器を一緒に片付けながらお父さんは頷いた。

「たしか学校行く道にあったね。でも何をしに行くんだい?」

「んー、お父さんは覚えている?チカちゃんの事。」

「チカちゃん?」

チカちゃんは昔よく遊んだ子だ。公園の近くに住んでいるらしく、公園に行けば必ず一人で砂遊びをしていた。仲良くなったきっかけは、たしかチカちゃんが男の子達にいじめられている所を俺が助けたのだと思う。

「そのチカちゃんって女の子、チョー可愛かったんだよ。まじヤバかった。銀髪のくせっ毛で、背が俺と同じぐらい小さくてね。睫毛がもうこれでもかってくらい長くて。それも色白で別嬪さんだったんだよ。左目は怪我をしたらしくていつも藤色の眼帯をしてたけどそれがまた可愛らしさを引き立てて、もーまじヤバす。」

いじめっ子共から助けたときのチカちゃんの表情は忘れられない。頬っぺを赤らめせて、上目使いで『ありがとう』ってはにかみながら言われた日にはあれだ。一生この子を守っていこうと誓いをたててしまうわ。

「どっかの偉いオッサンが言った言葉、『美女の笑顔と涙は人類の宝』ってその通りだと思う。だってあの子の笑顔見るためなら俺、核戦争終わらせることが出来るよ。うん」

いまならそのおっさんとガストでドリンクバー片手に語り合えるわ。俺。あ、ちなみに俺はドリンクバーではコーラしか飲まんよ。

「なんか物凄い規模の話をしているけど、お父さんチカちゃんって女の子はわからないなぁ。長曽我部と言う名字の男の子ならしってるけど。」

「長曽我部?男の子?知らんなぁ。まぁ、いいや。そのチカちゃん同い年だったから、もしかしたらどっかの高校へ行く時にばったり会うかもしれなくてさ。」

もし会えたら、運命の再開ってやつだ。

「B級恋愛映画みたいですね・・・まぁ、そこはご自由にどうぞ。あ、洗い物お願いしますね。」

ご自由にってお父さん、愛娘の初恋をそんな言葉で片付けて・・・グレるわよ。まったく。

まぁいいかと開き直り、適当にへーいと返事をしてパジャマの袖を捲る。今の時間は6時45分。家を出るまであと1時間。

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