あと、10センチ
この距離が埋められないのには理由がある。
俺がヘタレだとかそんなんじゃないし(そもそも俺はヘタレじゃない)
相手が嫌がっているわけでもなく(そもそもこの状態を理解しているかも怪しい)
それは俺の額に当たっている、
「下手な幻術か?
パシリが俺のツナを押し倒してる幻覚が見えるだがな」
・・・・そう。
この腐れ縁な先輩の愛銃が痕が付く程に押し付けられているからだった。
「そうだよな、きっとパシリの姿した幻覚なんだろお前。
― だから、このまま指引いたって。構わねぇよな」
いや、痕が付く位で済んだら奇跡か。
こうなった原因の空き瓶とそれを転がした奴を心底恨んで死後は枕元に立ってやるとか思う。
「リボーン!ちょっとお前それは冗談で人に向けるな!
ごめんなスカル、それ俺が昨日寝ぼけて倒しちゃってそのままだったの忘れてたやつなんだ・・・!」
まあそれが大好きなこの人がうっかり倒してしまったのだと聞いたらもうどうでもよくなった。
「沢田、ちょっといいか?」
「ツナ遊びに来てやったぜコラ!」
・・・・・・・・・どうせ自分の命はあと少しで切れるのは決定事項のようだし、最後に良い思い出を味わってもいい気がしてきた。
この状況に激怒するんだろう悪魔が追加される声を聞きながら、ぼんやりと思う。
あと10センチのこの距離と、この世にさよならするのとどっちが早いかなんて考える自分は相当きてる。
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