別に、理由なんてない

顔が急に近くなって離れたと思ったら、次の時にはまたいつもと変わらず電子画面に眼を戻している。
そのあまりの変化の無さに、あれ気のせいだったのかななんて思いそうになったが。

「・・・・・・・・・スパナ、今さ」
「何」
「俺に、何かしなかった?」
「したけど」

それが?という全く変調の無い声音に何だか脱力する。
きっとこの人からすれば反応が見たかったとかそんなんだろうけども。

どうしてかなんてことが酷く気になっている自分がいたので。

「一応聞いてみるけどさ、なんでしたの?」
「・・・・・・・・・・」

カタカタと鳴っていたキー音が止まり、いつでも平坦な瞳が此方を見る。

「知りたいのか?」
「え、そりゃあ」
「・・・・・・・どうして?」
「え、・・・別に。なんとなく」

上手く言えなくてというかとても本音なんて言えなかったのでそう応える。
暫し沈黙が漂い、スパナはふいと顔を元に戻した。
再び聞こえ始めた音に、流石に眉を顰めて声をかけようとするが、

「別に、理由なんてない」
「・・・・・さいで」

自分と似たようなような返答に。
ああさっき見えた、不機嫌そうな瞳は見間違いじゃあなかったのかなんて思って一人で赤面した。










・・・・・・・・それには別に、理由なんてないけど。













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