大精霊と王

「ところで君、誰」

そういえばと思い出したように聞かれたことに、

ドキドキと脈打つ心臓を押さえながら強張って動かない口の代わりに心で叫んだ。




(今更言うか・・・!!?)















































【 千夜一夜物語 〜六夜目〜 】



































初対面の人に名前を尋ねたり名乗ったりするのは一種の礼儀であり、常識だ。
極たまに、聞き損ねたりして後でお互い笑いあいながら教えあうこともある。

が、しかし。

名前や、相手の正体はこういう状況になってから聞くものではない。

少なくとも精霊の中の常識ではそうだった。
俺か!?俺が間違っているのか!?
心の中で激しく問うてみるが何も自分は悪いことなどしていないし間違ってもいない。


絶対。自分は被害者だ。

























2,3分にして荒れに荒れ、陥没し、消し飛び、消滅して空調が良くなった王の私室で、特に動じずに口だけ忙しく動かしていたツナは文句を言った。

「雲雀さん、この部屋片付けるの俺なんですから程々にしてくれないとー」

この惨状の何処が程々で済ませられるのか。
誰も突っ込むものはいない。
突っ込みたいが硬直した精霊はまだ還って来ていない。

当然だろう。
ツナと楽しく会話をしていたら突然背後から獣のようなものが飛び掛ってきたのだから。
透けているから事無きを得たが、生身だったら最初の一撃であの世行き超特急に乗車していた。




「驚いてね。
見たこともないのがいたから」

どこら辺が驚いているのか解読できない顔で王はまだ食欲旺盛振りを大いに発揮しているバイトに顔を向ける。
あの怒濤の(一方的な)戦闘の最中、ちゃっかり御飯だけは死守していた辺り流石ツナと言えよう。

「処で彼幾ら滅多打ちに咬み殺そうとしても透けるんだけど、何?
幽霊かなにか?」
「あーなんかそんなんです」
「ワオ、初めて見たよ」
「違うわーーーーーーーーっっ!!!」

聞き捨てならない適当なことを言うツナに、精霊コロネロはやっと意識を回復して突っ込んだ。
誰が幽霊だ。
思わず逃げてしまう程の(お陰で室内がこうなったが知ったことではない)凶悪顔だった奴に言われたくなどない。
絶対コイツの方がホラーだった。
幾ら身体に害もダメージもないとわかっていても、息次ぐ暇もなく繰り出される攻撃の嵐にコロネロは生きた心地がしなかった。
透けるばかりで防御もできないから必要はなくとも逃げるしかない。
平気だからと言ってされるがままになるなんてプライドが許さなかった。
体があればこんな一方的なことにはさせなかったのに…ッ

「悪かったよコロネロ。ちゃんと紹介するからさ」

悔しくて顔を顰めているコロネロに、ツナは一時手を休めて苦笑し、軽く謝る。
そのことじゃないし、王と関わりを全く持ちたくなくていや別にいい寧ろしないでくれと首を振るコロネロに気付かずツナは謝罪した割にはやはり適当な紹介する。

「雲雀さん、コイツはコロネロっていって大精霊とやららしいです。
なんか願い叶えてくれるっていうからさっき御飯作って貰ったトコだったんです」
食べます?とっても美味しいですよーと笑うツナに雲雀は相槌を返す。

「へえ、そう凄いね」

完璧なる棒読みだ。

「でも綱吉、言えば食事は幾らでも出してあげるって言っただろう?」
「はい。
でもなんか悪いし、こっちはタダっぽいからいーかなって」
へらりとツナが笑うと同時にコロネロは大量の殺気を全身に受けた。
間違いない。
これは王から垂れ流されているものだ。

(やんのかコラ!?)

コロネロはわけのわからない理不尽な八つ当たりにかなり腹が立った。
自分がコイツに何をしたというのだ。

しかし今は何もして来ないので我慢をする。





「綱吉が僕に遠慮してたり敬語だったりさん付けなのにコレには仲良さ気に呼び捨てしてるのとか色々不満はあるけどまあ良しとしよう」
全然良いと思っていない表情で雲雀がツナに近づき、促す。

「そろそろ始めよう、綱吉」
「ふぁーい」
雲雀に合わせて全ての残りを全て口へかき込んで立ち上がり、ツナはコロネロに声をかける。
「御飯有難うねコロネロ。すっごい美味しかったよ〜」
「お、おう」
俺、今とっても幸せというツナの満足気な笑顔に、何故か熱くなった顔を押さえる。
さっきから何か変だ。
調子が悪いのだろうか。
「また後で詳しいレシピとかおしえ・・・っと!!」

突然打ち込んできた雲雀にツナは慌てて応戦する。
雲雀は生き生きとした、しかし凄絶な瞳で嗤った。
「綱吉、仕事中は余所見しないでよ。
僕だけを見る約束でしょ。
じゃないと…」

言わなくてもわかる続きに、ツナは慌てて体勢を整える。

「すいませ!じゃ、いきますよ!」

ツナが踏み切ると同時に空気の圧が変化し、壮絶なやり取りが始まった。






「何だ、コイツ等・・・」
一人取り残されたコロネロは、何故か戦い始めた二人に呆気にとられたままツナの仕事が終わるまで待つ羽目になる。









10度に一度は王が標的を間違えたようにランプの精霊目掛けて打ち込み、その度舌打ちされたのはきっと気のせいだ。

炎のアルバイターに対する攻撃よりもキレと殺気が増していたのも気のせいだ。

多分。










































...Continua a P9→

































































<収録後>

『お疲れ様です〜』

その一斉の挨拶と共にスタッフが片付けを始め、俳優たちは次の仕事先へ向かったり休憩をとっていた。

そんな中、一人の金髪の青年が優雅に湯呑みを傾ける黒髪の俳優にズカズカと近寄り、

「おい雲雀!てめえやりすぎだぞコラッ!」

怒鳴りつけた。

「何が」
「俺に対する攻撃のことだ!」
「だってそういうシナリオでしょ。
『精霊を竦みあがらせる程の攻撃』ってちゃんと台本にも書いてあったからその通りにやったんだけど」
「『精霊を竦みあがらせる程の1・2回の攻撃』の間違いだボケが!」
「アドリブだよ」
「二階の床が抜ける程やるのはやり過ぎっていうんだよ!」
「僕は撮影中は好きなようにやるって決めてるから台本なんて関係ない」
「さっきと言ってること違うじゃねーかコラ!
それに何時でも何処でも好きにやってんだろーがお前は!
大体現実は透けてねーのに外しもしねーで一々適格に急所ばっか狙ってくんじゃねえコラ!!」
「アルコバレーノの癖に避けることもできないの君」
「んだとコラアアアアア!!?
てめえの弱っちい攻撃なんぞ避けられるに決まってんだろが!!」
「じゃあいいじゃない。
出来ないっていうならもっと優しく一回で咬み殺してあげてもいいけど?」
「手加減なんているか!上等だコラァ!!」

鼻息を荒く去って行くコロネロを欠伸をして見送る雲雀。














・・・・・あれ?結局何も解決してなくね?













周りのもの達はいつも思うが、何も言わない(言えない)。

































































はい、ツナを巡り合うじゃなくてコロがただ一方的に酷い目にあっただけでけのお話でした〜(おい)

何か思ったより短かったんでオマケを付けてみましたv
こういうのがとっても好きです♪

次回は一先ず、王宮から舞台は宿屋へ移ります。
てか本当は宿屋での騒動が中心なのに何故か引っ張りに引っ張られてこんなことになってます(汗

流石雲雀様!
ムックなんて直ぐに消えたのに(笑)

大丈夫ムックもすぐやってきますから〜(ツナ不足で自分から/笑)

では興味お有りのお客様はお次のページへお願いします♪































...Continua a P10→



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