忠臣

「それで、挙式はいつになさいますか」
「・・・・・・・・・はい?」

それは、実は男なんですと間抜けだが打ち首確実のことを報告しにいった次の日のことであった。






































【 千夜一夜物語 〜三夜目〜 】







































「あのーー・・・。草壁さん」
「はい」
「俺の話聞いてらっしゃいましたよね」
「はい」
「あ、じゃあ俺の説明の仕方が悪かった、とか?」
「いえ簡潔且つとても納得できる漢らしい方法でした」
「あ、そーですか・・・」
少々赤くなってツナは俯く。


ツナの証明の仕方。
それは自分の体を見せて無理やり納得させるというある意味捨て身のやり方だった。

ツナは自分を知っている。
見た目が中性的で、やろうと思えば絶世の美女にも化けられる器だと(本人は其処まで言っていないが)。

ツナの女装姿を見た者は、本当のことを話しても総じて反応は同じだった。
『お前が、男?まさか』
てんで相手にしてくれないのだ。
ある時あまりにしつこい男に切れたツナはいきなり己の衣類を全て剥ぎ取り堂々と見せ付けたことがあった。
相手は放心して還って来なかった。

少し恥ずかしかったが効果覿面なことに、以来ツナはずっとこうしてきた。
こうする方が手っ取り早いし楽なのだ。
大体証明しなきゃいけないのは男なので、風呂に入るとでも思えばなんともなかった。
・・・まあ時には知り合いの黒魔術師のような「それでもいいですよ」発言をするのもいるので暴露する相手にも気を付けているが。
そういう奴にこんなことやったら逆に逃げられなくなる。


勿論、草壁は安全だと踏んで実行した。
それなのに変なことを言う草壁にツナは訝しげにする。
自分が聞き間違えたのだろうか。
バイトでも聞き間違いをしないなど初歩中の初歩なのに。
「じゃあさっきなんておっしゃったんですか?」
「挙式、ご婚礼の日取りは何時になさいましょうと、」
「いやいやいやいやいや草壁さん、落ち着いて下さい」
「はい、落ち着いてます」
同じ事を繰り返す草壁と聞き間違いじゃなかったことに嫌な予感がしてくる。

「あの、俺は男です」
「はい、存じております」
「よって男の人と結婚はできません。てかしたくありません。
例え国王であろうとそれは無理です」
「王は気になさらないそうです」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいや落ち着いて下さい雲雀さん」
此処にはいない雲雀に呼びかける。
「落ち着いてらっしゃいましたが」
「いえ、きっと錯乱なさってたんですよきっと、はい。いえ絶対に」
「『養子縁組をするよりも既成事実が先かな』とも冷静に真顔で申しておりましたが」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやあああああああああああああああああああああ!!!!!!」
「落ち着いて下さい」
「落ち着けるわけがないでしょうがあああああああーー!!!」
ツナはがたんと立ち上がって叫ぶ。
相手が冷静なほど現実だと宣告させているようで嫌だった。

「俺男です!女の子が好きなんです!!バイでもありません!!!」
「存じております」
「存じておりますじゃないですよだったら俺の気持ちも考えて察してあげてくださいよ!」
「勅命ですので」
「んぐッ!」
その重い一言にツナは押し黙る。

勅命。
確かにそれには逆らえない。
忠臣というからには尚更だろう。

だが何故だろう。
この草壁という、伊達男風なのにアラビア人の男から感じる熱い眼差しは。
彼が、王命というだけで動いているとは思えなかった。

「あの草壁さん」
「はい」
「草壁さんは勅命で動いてらっしゃるんですよね?」
「はい」
その返答に些かほっとして続いて尋ねる。

「じゃあ、当然草壁さん自身はこの話に反対ですよね?」
「いえ、王と同じ考えです」











アウトーーーーーーーーッ!!!!!










ツナの中の審判が判定した瞬間だった。






































それからツナは雲雀だけではなくにも重臣達からも追いかけられる嵌めになる。

「貴方のその双肩には我が国の未来がーーーーー!!!」
「無理ですーーーーー!!!
気持ち的にも生物学的にも常識的にも何一つ当て嵌まらないですからーーー!!!
他の人!本物の女性当たって下さいーーーッ!!!」
「貴方以外に誰がいらっしゃいますかーーーーーッ!」
「一杯そこいらじゅう歩いてんじゃねえかああああああああーーッ!?
あんたらただもう面倒になっただけだろーーッ!?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「う゛お゛おおおい図星かよッ!!?」

ふざけんなとツナはますますスピードを上げて逃げていった。























<fine>



あきゅろす。
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