考えてみれば

あの子が僕に会いに来たのは金目当てだったのだ



何とも強欲で酷い子だよね









そんな子に惚れてしまった哀れな僕は、一体どうすればいいのかな?












































「君が此処に来たのはいつのことだっけ」
「? どうしたんですかいきなり」
王の肩を揉みながらツナはキョトンと尋ねる。
この人がこんなことを言うなど珍しい。
「いいから」
王の勧めるままに、記憶を掘り起こして思い出す。

「えーっと、今の残金が10とちょっと位だから、」
「・・・何で思い出そうとするのに貯金の残金が関係あるの」
「そりゃあ、頂いたお給料と使ったものを足していけば今までの給料の総額金が出ます。
それから月に頂いてる金額を割れば、」
「もういいよ」

あんまりなことを言うツナに、王は剥れて立ち上がる。
全くこの子は少しは色っぽいことでもいってみたらどうなんだろうか。
「もういいんですか?」
「・・・・・いいよ、さっさと始めよう」
「はい、わかりました」


王の気紛れはいつものことなのでツナは気にせず自分の得物を持ち上げる。


途端合図もなく始まった迎撃の数々に、淡く灯されていたランプの炎が揺らぐ。





(この子に金銭と僕とどちらが大切なのか、聞いてみても)





轟音が響き豪奢な細工の壁が陥没する。
次いで、上等なシルクの布賭けが裂け、ヨーロッパから取り寄せたステンドグラスは粉々になった。





(答えは決まってるんだろうね・・・)





虚しくなった想いを断ち切るように、空気諸共両断する。
身軽に避ける青年を追いかけるうちに、王は何もかも忘れていった。


只、眼の前にいる青年だけを。
この瞬間のみは自分だけを見据える美しい獣を。


ただ追い続けた。















































王と彼が出会ったのは、王の納める国が存亡の危機を向かえ、戦々恐々としている時。

それは正に運命のような出会いだった。


・・・と王だけは確信している。




最も、王はその危機を大して気にしていなかったし、そもそもの原因だったのだが。













































「このままでは王家は滅ぶ・・・」
有能な摂政、草壁とその他重臣達は半ば本気で大きな頭。
いや、長くセットされた髪を抱えていた。

この国の王は戦や政治に関してはとても優れている賢君なのだが、女に興味がなかった。
かといってでは男色なのかというとそういう訳でもなく、只単に戦うということにしか興味が沸かない性質だったのだ。

しかしこれでは当然世継ぎが出来ない。

=王家滅亡という簡単な図式が出来上がる。



・・・などと言ってる場合ではなかった。
此処は忠実なる臣下として何とかせねばならなかった。

だが、あの手この手で色んな種類の娘を近づかせてはみたものの、
皆泣いて逃げ出し、最終的には宮から女が一人もいなくなるというむさ苦しい状態になっただけだった。




そしてついには王に、

「ねぇ、最近やたらけたたましい女子が僕の前に来る気がするんだけど」
「は、そのようなことはありま、ゴッ!?」
忠実なる臣下の顎を寸分の迷いもなく軽々と割り、王は冷え冷えと告げた。

「嘘は嫌いだよ。
次来たら如何なる理由でも咬み砕くから」
「!!」

王は相当ご立腹だった。

































そして、ついには御触書が出される。







――――――――――――――――――――――

身分も階級も問わぬ!
てかホンッット誰でもいい!
顔もこの際気にしない!
条件は強くて女であること!!
どーか奮ってご応募下さい!待ってます!!!
あ、お仕事の内容は王の夜の話相手、とか・・・。

※命の保証は出来ないので悪しからず。

――――――――――――――――――――――





此処まで下手に出ているんだか馬鹿にしているんだかわからない触書も珍しかった。
その位形振り構っていられない程、この国は切羽詰っていた。








































【 千夜一夜物語 〜二夜目〜 】







































「・・・・・・・京子ちゃん、あのね。
俺、それは辞めた方が良いと思うんだ」
「でも、ほうしゅうがすごいって聞いたし。
お兄ちゃんのしあいも近いから、せいのあるもの食べさせてあげたいの」

うぅ・・・。

「だったら、食事なら俺が何とかするし」


『ボンゴレ・ファミリー』の住人、京子を穏やかな笑顔で説得しながらツナは内心呻いていた。
こんな格好つけたことをいっても自分だってそんな精がつくものなど買えないし、久しく食べてもいなかった。

だがあんな歌舞伎町で配られているティッシュに載ったような広告のバイトを、大切な住人である可愛い少女に始めさせるわけにはいかない。

つい先日持ち込まれたSランク並の日払いの賃仕事を思い出す。

(・・・やっぱ受けようかなー、でも流石に死ぬよなー)

それは困る。
死んだら元も子もない。意味も無い。無駄死にだ。

「ホント?
でもいっつもツナ君にたよってばかりで、わるい気がするの」
ぐるぐるとメリットとデメリットを考えていたツナは、京子の申し訳ないという顔に思考を中断し、苦笑する。
親がいなくても子は育つ。
まだ8歳と幼いが、この子はきっと素晴らしい少女になるだろう。
兄のような親のような気持ちで京子を見つめる。
「いいんだよ。
女の子はそんな遠慮しなくて。
それに俺がしたくてすることだから、京子ちゃんは気にしないで」
「そうですよキョ−コちゃん!
あんなデンジャラスな宮なんてキケンです!」
「あれ、ハル何時の間に起きたの?」
ちょこちょこと食堂へ入ってきてカウンターの席によじ登ってきたハルはにっこりと笑って挨拶をする。
「たった今です、
おはよううございます!ツナさん」
「うん、おはよ。御飯は?食べる?
中華だけど」
「たべマス!
チューカっておいしいんですか?」
キラキラと目を輝かせる少女に思わずといった笑いが込み上げる。
「俺は結構好きだよ?」
「ワーイ!
じゃあ好きだとおもいます!」
「ん、じゃあちょっと待っててね。
京子ちゃんの分がもうできるから」
「ハイ」
「ありがとう、ツナ君」
嬉しそうにいう少女達に、ツナは心から言った。
「どういたしまして」

待ち遠しいという顔をして待つこの子達の為にも、ツナは今日もバイトへ行く覚悟を決めた。









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