前編


昔々ある所に竹細工を作っては売り歩き、時折暗殺を片手間で行っていた竹取の翁というお爺さん役、リボーンがいました。

「誰が爺だ。前から思ってたが俺を爺に配役させるなんてどういう神経してんだテメー。
大体竹取より普通の仕事のが儲かるだろ」

・・・お爺さんはブツブツ文句を言いながら、まぁまぁ手際良く竹を切り倒していきます。

「面倒臭ぇな。オラ、さっさとノルマ終わらしやがれパシリが。まだか」
「だああっ!!?
ちょ、手ぇ切るとこだったじゃないか!!鉈を持っているんだから蹴るなっ、危ないだろうが!」
「るせぇ、早くしねーテメーが悪い」
「くっそ、俺はなんの役でもないのに・・・ッ!」

しかしよく見れば、一人の青年、スカルを使って竹を取っているだけのようですね。
刈り取った竹を背負うのもまたスカル。自分は竹に寄りかかってエスプレッソ飲んでるだけです。
全く苦労してないのに文句は言いながら時代設定までブチ壊しとかやめてほしいんですけど。

「あぁ?言いてえことがあるならもっとデカイ声で言ってみやがれ」

・・・・・・・・・いえ。もういいです、慣れました。
えーではスカル青年の訴えは聞こえなかったことにして次行きましょうか。
暇なお爺さんが何か面白いものはないかと周りを見渡すと、根元が黄金に輝く竹を見つけました。
思いっきり光っていますね。何で今まで気づかなかったんでしょう。

「るせぇ、だから爺言うな。次言ったらマジ撃ち殺す」

ほんとすいませんその時代背景に沿わないもん取り出すのやめていただけますか。

「フン・・・。まぁ確かに珍しいな、どうするか」

おじいさんは悩みました。
このままどっかのアホ貴族に売りつけた方が儲かるか?などと口に出してます。
話が続かないので聞かなかったことにします。
だからすいませんパシリさん、悪いんですけどそれ終わったらついでにその、そこの金色のやつもバサッとお話通りにお願いします。

「俺は、パシリじゃ・・・ッ、なあああいッッ!!」

おぉ、お見事。
スカルは泣きながら腕を振りかぶり、怪しげ・・・ではなく不思議な輝く竹をスパーンと切り倒しました。
するとどうでしょう、竹の中にはそれはそれは可愛らしいッ

「・・・・・・・・・・・何だ貴様は」

・・・・・・・・・・・・・・・・成人男性が。
質量保存の法則は何処へいったのでしょうか。
一方興味が浅そうに竹を覗き込んだリボーンは、その声と顔に硬直しました。

「な、何でテメーが・・・!?」
「それはこっちの台詞だ」
「此処はお約束で可憐なツナが出てくるべきシーンだろ!?」
「なんだ貴様、デーチモを知っているのか?」

無表情の青年は、生まれたままの姿で立ち上がりました。
うん、現代日本じゃなくてホントよかった。にしてもこれ、現代で起こったら怪奇現象ですよね。

「何処にいる、吐け」
「ぐえッ!?」

吐き出すものも吐き出せないような勢いでガッと首を鷲掴まれたリボーンはギブギブと手を叩きますが青年は知らん顔です。
いいから言えとギリギリと力を緩めない青年に、リボーンはカクリと気絶してしまいました。
竹から出てきた子供のあまりの可愛さに一発KOされる筈だったリボーンを本当に気絶させ役立たずめと一言呟いた青年は、くるりと辺りを見回します。
「・・・・・・・・・こっちか」


呟いたきりリボーンをその手に引き摺ったまま歩きだした青年を、スカルが眼を瞬きながら追います。
「何だ、あの二人知り合いなのか?」






ずんずんとそのままの姿で歩いて町の注目を集めに集めていた青年は、一軒の屋敷の前で足を止めました。
「・・・・・ここか」

どうやらリボーンの家を探していたようです。
きっと超直感とかで探し当てたんだと思います。

本来ならば貧乏という設定なのにどう見積もっても云億はくだらないでしょう豪邸に足を踏み入れる青年を出迎えたのは、リボーンの帰りを待っていたお婆さん役のディーノでした。
「リボーンお前やっと戻ったのか・・・って、リボーンじゃ、ねえ?」

眼を瞬いたお婆さんは次に青年に引き摺られているリボーンを見た瞬間身を沈めました。

「何方様でしょうかウチのリボーンが何かしましたかホントすいませんでした弁償は必ずさせていただきますので!!」

お婆さんは、早くも土下座をする勢いでその場に平身低頭しました。きっと理不尽な同居人に日頃迷惑をかけられているからでしょう。
しかし青年はそんなことは気にせずただ自分の目的を淡々と告げます。
「]世は何処にいる」
「・・・・は?でーちも?」

青年の言葉にお婆さんは眼を点にしました。
意味がわかりません。

デーチモを見つけるまで帰らないというプリーモと名乗った青年に、お婆さんはそれなら此処に住む間は『かぐや姫』と名乗るようにと言いました。
この姿で山から下りて来たのだとしたら警備隊になんとか陳列罪で探されてそうなのでそれの予防みたいなものです。

服を出してやりながらお婆さんは知り合いの警備隊長に何ていい訳しようかと嘆息しました。









こうして居候することになったかぐや姫ですが、目的のデーチモは一向に見つからず憂鬱というか不満げなため息を吐く日が続きます。
何故かと言えば、強いと有名になったかぐや姫に対する決闘の申し込みをしてきたもの達がいたからです。
大概は、かぐや姫に顎で使われているリボーンに闇に葬られるのですが、未だに生きている兵達がいるらしいのです。

そもそもの原因は、お婆さんが予想した通りやってきた警備隊をかぐや姫が殆ど壊滅させたことにありました。
その日からそれに嬉々として喜んだ警備隊長を初めとして、力試しとばかりに何故か続々と人がやってくるようになったのです。
元々この地元では戦うことが好きな輩が多かったこともあるんでしょう。

巧く言い訳が出来なかったからと人の良いお婆さんはちょっと責任を感じていたので、困ったように悪いと謝ります。
「どうにか諦めてくれるようには言ってるんだけどな、」
「面倒だ。纏めて相手をしてやる」

デーチモを捜しに行きたいのに行けないことに業を煮やしたかぐや姫が無表情で言ったことに、お婆さんは固まってから代わりの手立てを何とか考えるからと慌てて止めました。






「という訳で、姫は今から言うものを持ってきた奴と決闘する事になった」
お婆さんは、集まった5人の申込者に言いました。

「何で僕が君の言うこと聞かなきゃいけないの?」
申込者の一人、警備隊長が尋ねます。
まあ良いから聞けと言ってお婆さんは、それぞれに持ってくる宝物の名を教えました。

石作皇子役は仏の御石の鉢。
車持皇子は蓬莱の玉の枝。
右大臣阿部御主人は火鼠の裘。
大納言大伴御行は竜の首の珠。
中納言石上麻呂は燕の子安貝。

どれも聞いたこともないような宝物です。
しかし5人の申込者達はあっさりと頷いて、それぞれ宝物を求めにいきました。

「・・・・・・・・なんであいつ等あんな余裕そうなんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・きっと、多分大丈夫だ」

不安げなスカルに、もっと不安なお婆さんは自分に言い聞かすように言いました。












第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!