赤ずきん


「寝られないんだね綱吉」
「はぁ、雲雀さんが俺のベットにいたっていうか何で俺んちに!?っていう驚きによりすっかり眼が覚めましたけど」
「じゃあ昔噺をしてあげようか」
「俺が遠まわしに言ったこと伝わってます!?」
「昔々あることろに赤頭巾と呼ばれる誰もが道を譲る子供がいました」
「聞いてないし!てか赤頭巾てそんな子でしたっけ…?」
「その子供が赤頭巾と呼ばれるようになった由縁は、いつも返り血を浴びて頭巾が赤く染まっているからでした。
まぁつまりカモフラージュだね」
「怖ッ!なんですかその赤頭巾!?余計寝れないんですけど!」
「そんなある日、赤頭巾は不愉快なことに養い親に命令されました」
「家庭内まで凄い殺伐としてるのだけはわかったんでもう勘弁して下さいーーーっ!!」















【 赤ずきん 】

















ある日養い親であるディーノが言いました。


「恭弥ちょっとい、」
「何様なの咬み殺すよ」
「まだ何も言ってねーだろ!?」

即答と振るわれたトンファーを避けながら突っ込みをいれ、ディーノが疲れたように言います。

「リボーンが酒と食い物届けろって言うから、ほらお前あいつのことやけに気に入ってるだろ?
たから喜ぶかと思ったんだよっ。
まぁ、嫌なら俺が行」
「誰が行かないって言ったの?」
大好きな青年に会えると聞いた赤頭巾は快く了承しました。



支度が出来たらしい赤頭巾にディーノが尋ねます。

「忘れ物ねーか恭弥?」
「君と再戦するって約束?
勿論忘れてないよ」
「いやもうそっちの方は今は置いておこう?寧ろ忘れて頼むから。
ほらリボーンも待ってるだろうし、な?」
「そうだね、じゃあ行ってくるよ」
「あぁ、あと最近森には希少種の狼がうろついてるらしいから寄り道とかすんなよ?」
狼の命が危ういからという心配性な養い親を煩いと一蹴して赤頭巾は元気よく出かけていきました。

それを見送ったディーノは行かせて良かったのかとちょっと不安になります。
「あー心配だな(狼が)・・・。
って、アイツあんなに言ったのにワイン置いてってやがる」
机の上に置かれたままのボトルにディーノはガックリと頭を下げます。
「・・・・まぁ、一応リボーンも設定的には未成年だから、いいか」
「う゛お゛ぉい、跳ね馬ぁ!」
嘆息したところで、焼きたてのケーキを持ったご近所さん、スクアーロがやってきました。
ホカホカと美味しそうなケーキにディーノは眼を丸くします。
「何だスクアーロ?
追加で焼いたのか?」
「あ゛ぁ゛?
オメーがアルコバレーノに命令されたっつーから俺が代わりに作る羽目になったんじゃねーかぁ」

散々人ん家のキッチンを滅茶苦茶にして結局作るのまで押し付けといて忘れるとはいい度胸だなとスクアーロが青筋を浮かべます。
「なッ、じゃあ恭弥の奴何持ってったんだ!?
酒忘れた上にケーキも無しとか確実に俺がリボーンに絞められちまうじゃねーか!?」
「んなことまで知るかぁ!!」










「全く人を馬鹿みたいに言って。
ちゃんとトンファーも椀章も付けてるのに」
何も忘れてないと武器だけはしっかり装備して歩いていた赤頭巾は、茂みに何かの気配を感じ迷わずトンファーを振るいました。

「ギャン!」

泣き声をあげて何かか飛び出て来たのですかさず足をかけます。
上手い具合に引っ掛かったのでそれは顔面から盛大に転びました。
「人間の子供・・・、ではなさそうだね」

顔を押さえて痛がっているそれを珍しげに眺めた後、赤頭巾は眼を細めました。
頭には何故かもほもほとした耳が付いています。
明らかに獣のそれです。

「君、僕の並森でなにやってるの。
珍種の犬だか知らないけど、風紀を乱したら許さないよ」
「い、犬!?俺は誇り高い狼だぞ!」
「・・・・・・・・」
涙眼で顔を上げた少年を見た赤頭巾は一瞬止まりましたが、次の時には屈み込んで少年にずずいと顔を近づけていました。
少年はギョッとして仰け反ります。

「君、名前は?」
「日本狼です、けど・・・」
「それは品種でしょ」
「あ、そっか。えと、沢田綱吉っていいます。
皆はツナとかいいますけど」
「そう綱吉。
じゃあ僕と一緒になってくれるね」
「へ?・・・・え?
・・・・・・・・・・・・・・・はいぃッ!?」
先程の会話で何がどうなったのかわからないことを言ってきた赤頭巾に、
ツナは顔を引き攣らせ更に身体を仰け反らせようとしますが勢いがつきすぎて地面にコロリと寝転ぶ形になってしまいます。

「ワオ、積極的なんだね。誘ってるのかい」
「何を!?てか、ちょ、離して下さっ」
すかさず覆いかぶさってきた赤頭巾にツナは蒼白になって逃げようともがきますが、しっかり抑え込まれていてどうにもなりません。
(よ、よくわかんないけども俺っ、今喰われそう!?)


人間は恐ろしい生き物だってバジル君に聞いてたけど、生肉で狼を食べようとするなんてなんて野蛮な生き物なんだ!!


震えながらも何とか隙をついて逃げようと頭をフル回転させますが何も浮かびません。
泣きそうになった時、

「おや、珍しい。人間ですか」
血の匂いがするから来てみればという声に、ツナはげっと顔を顰めました。

「まさか、その声骸か!?
うっわ、不幸中の災難だーーーっ!!」
「酷っ!泣きますよ!?
って、綱吉君じゃないですか!!
何処かの馬鹿が人間に捕まってるのかと見物しに来ただけだったのに…っ、
僕というものがありながら下賎な人間と一体何をなさってるんですか!?」
「何をなさるも喰われかけてんだよ見りゃわかるだろ!?」
「そ、そうですね。僕としたことが綱吉君が僕を裏切るなんてことがあるわけないのにとんだ早とち、ガッ!」
「骸!?」

頓珍漢なことを言う骸にツナが青筋を浮かべる前に、骸の声が途切れます。
トンファーに付いた血を払った赤頭巾の仕業でした。
「何、この獣。
煩いからさっさと済まそうか綱吉」
「ギャー近い近い近い!
骸の馬鹿ぁっ!お前が寝言言ってる間に喰われたら絶対呪って枕元に立ってやるからなぁっ!!」



「それはそれで嬉しいですが。お待たせしました綱吉君」
「ふぁ!?」



瞬間、赤頭巾の下から骸の腕にいたツナは涙の滲んだ眼をぱちくりと瞬かせます。
その様子に骸は可笑しそうに笑います。
「なんて顔してるんですか。
あぁ、勿体ない」
「んっ」
「相変わらず綱吉君のは極上の甘露ですねぇ」
「ちょ、んんっ、関係ないとこまで舐めるなよっ。
いい加減降ろせって」
「はいはい」
零れ落ちそうな涙を舐め取った骸は、殴られる前にとツナを地面に下ろします。

「さて。
たかが人間風情が誰の許可を得て僕のマイスイートに手を出していたのか説明していただきましょうか?」
「誰がマイスイートだよ気色悪い言い方すんな!!」
「そうだよ僕のハニーに向かって何言ってるの」
「あなたが何言ってんですか!?」
「それより君、何したの」
「質問しているのは僕ですよ」
「幻術・・・ってことは君、狐かい?」
「わかっているじゃないですか、質問しておいていやですねぇ。
これだから人間は」

やれやれと肩を竦め、ついと骸は口端を上げます。
「ですが、半分正解で半分間違いですね」
「…どういうこと?」

訝しげに眉を顰めた赤頭巾は無視して、骸はツナに囁きます。

「今のうちですよ、綱吉君。僕がこの鳥を相手にしている間に、
って既にいないんですね・・・」
せめて格好つけさせて欲しかったのにと、くすんと切なげにツナのいってしまったらしい方角を見る骸に赤頭巾が苛立ったように打ち込みました。
「・・・・君、やる気ないならさっさと冥土に行ったらどうなの」
「せっかちですねぇ、そんなに急がなくても。
お花でも摘んでいかれたらどうですか?」
「僕はいい子だから寄り道なんてしないよ」
「それは可哀想に。
最期に花も愛でられないなんて、ね」
「代わりに綱吉を愛でるからいいよ。
僕は優しいから君の墓前にはラフレシアを突き刺してあげる」
「それは楽しみですね」

軽く跳躍して距離を取った骸は、何処から取り出したのか三叉を構え、嫣然と微笑みました。

















走りに走りこじんまりとした家を見つけたツナは、少し迷いますが人の気配が全くしなかったのでそこでやり過ごすことにしました。
窓から外を見て、赤頭巾が追ってきていないことに一息つきます。
「あー、怖かった。
あの人間が狩人っていうのかな?」
爺ちゃんに聞いてた通り恐ろしい種族だとツナが思った時。

「誰だ」
「!?」

(また人間!?)
背後からかかった声に飛び上がったツナは慌てて逃げようとしますが、気付けば床に押さえ込まれていました。
離してー!と、ジタバタと藻掻くツナに押さえ込んだ男はピョコピョコと動くツナの耳に気付いて眼を瞬きます。
「随分小せぇ形だが、人狼なのかオメー」
「ち、ちがっ」

希少種は狩られやすいと嫌というほど言われているツナは必死に否定をしますが、男は全く聞いていないようです。
しかも日本狼のとは珍しいと口端を上げています。
「どれ、面見してみろ」
「ひぃ!」

仰向けにして、恐怖に引き攣ったツナの顔を見た男は瞠目しました。

「・・・・・・・・・・・・・・ふぅん」
「な、な、何ですかッ!?」
食べられるのも剥製も毛皮のコートも嫌だーッ!!と内心叫んで己の行く末を案じるツナをひょいと立たせた男は、ポンと頭を叩いて笑いかけました。

「合格だな」
「・・・へ?」
「来い」
「え!?うわ、ちょっ」
突然寝室に連れ込まれ押し倒されたツナはギョッとします。
まさかこの人間も喰う気なの!?

「わーわーわー!!
俺なんか喰っても美味くないって!!」
「合格だっつったろ。
雄だろーがなんだろうが顔が好みだからいいん、」
「何も良くないよ赤ん坊・・・ッ」
「僕の綱吉君をまたしても・・・ッ!
しかもアルコバレーノじゃないですか汚らわしい・・・ッ!!」
「あ?雲雀じゃねーか、それと人狼・・・、いや、何だ?」
初めて見る種だなと、一向に構った様子もなくリボーンが片眉を上げたのに、二人は更に不機嫌になります。

「綱吉君から手を離しなさいこの下郎ッ!!」
「それは僕が先に眼を付けた獲物だよ!」
「残念、唾付けたのは俺が先だ」
「唾!?汚っ!!って何だコレ!?」
見せ付けるようにツナの赤くなっている首筋を見せリボーンがニッと笑いツナが悲鳴を上げ二人は牙を剥きました。

「巡らせて差し上げます!」
「咬み殺す…っ!」
「面白れぇ、やってみろ」
「そいつらやってもなんでもいいから俺は解放しろよシカトかよ!」





ツナの声はスルーをされ、三人の争う轟音が森中に響き渡ります。
小さな人狼を巡る争いの火蓋が切って落とされた瞬間でした。









おしまい☆


























「どうだい?」
「…いや、何がでしょうか」
「僕が綱吉の為に考えた童話だよ。
勿論勝者は赤頭巾だよ」
「いや童話に勝者も何も…。
それにわかってたけどやっぱり創作なんですか」
「まぁね」
「褒めてないですからね」
「お礼は添い寝で許してあげるよ」
「ええええええ頼んでもいないのに!?
寧ろ睡眠時間削られて損してるだけな気しかしないのに!?」
「2秒以内に布団に入らないと無理やり永眠させるよ」
「お隣失礼しまっす!!」
「うん素直な子は好きだよ」






死ぬ気で寝たツナだったが、
赤い頭巾を被った雲雀とその他に大勢に追いかけられる妙にリアルな夢を見てしまい、朝まで寝苦しい思いをしたという。









<...fine?>
















自分だけが楽しんだ感溢れる悪ふざけの激し過ぎな話ですみませんでしたっ!

なのにそれを結城様に相互お礼として捧げようとしてるアマはアダノです(いっぺん本気で沈めばいいのに


結城様、宜しければ貰ってやって下さいませ!
自然に返すもブラックホールに流すもご自由にどうぞっ

相互有難うございました♪



あきゅろす。
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