彼女が舞踏会に行けない理由

かしゃん







大して飲んでいない、というか一口啜られたのみのカップがやや乱暴にソーサーに戻されます。
「フン・・・」
鼻で嗤われ、お盆を持って立たされている、えー・・・ 少女役のこめかみがひくりと動きます。
「淹れなおせ」
「・・・・・ッ! う゛お゛おおおぃ!! いい加減にしやがれええええ!!!
てめえは何十回淹れ直させれば気が済むんだぁーーーー!!!?」
もう嫌だとシンデレラが持っていたお盆を床にぺいっと叩きつけます。
「・・・・・・・」
それと大して時差をおかずに、義姉の手から放たれたカップ(淹れ立て57秒後珈琲入り)が宙を舞い、
「ぎゃあああああ?!」
スクアーロの顔面を襲いました。




















「幾ら何でもこれは酷いよ。
女の子なのに顔に傷が残ったらどうする気だったんだアイツ」
「・・・・う゛お゛おぃ、(一応ムカつく設定的には)間違ってないが腹立つぜー」
優しげな顔を少し厳しくしながら顔に氷をあててくれる継母:ツナに、シンデレラが燃える様に痛む顔を顰めます。
「だよね。全く何考えてんだか、ザンザスも」
「・・・・・・・」
腹立つのは女の子なのにとか言われたことなんですが、否定の言葉を口にするのも顔が痛くなるのでやめておくことにします。
「大丈夫、ちゃんとコッテリ絞っといたげるから」
「いやそれはいい」
そうすると逆に自分が後で更に文字通り絞られることになるので速攻で遠慮すると首を振ります。
「駄目だよ!スクアーロが幾らザンザスの妹(役)だからって遠慮しちゃ」
「う゛お゛おぃ、それマジでキモイから口にするなぁ・・・」
もういいから1人にしてくれというシンデレラに、継母は看病してあげたいと思っていましたが、本人が嫌がるなら仕方がないと立ち上がります。
「じゃあ後でベルに替えのタオル持ってきて貰うから」
「やっぱり傍にいてくれえええええ!!!」
あんなドSに看病して貰ったら命が消えるとシンデレラは叫びました。

「あ、もしもしディーノさんですか?
あの、義娘の看病をお願いしたいんですが」
晩御飯の買い物に行かなければならない継母は、知り合いの医者にシンデレラのことを頼みたいとお願いします。
本当は義姉のベルにお願いしようかと思っていたのですが、半狂乱でシンデレラが拒否したのでやめました。
『勿論だぜ。すぐ行くから待ってろ』
医者は快く引き受けてくれました。

「明後日は舞踏会だから、それまでには元気にならないとね」
女の子には素敵なイベントでしょう?と微笑む継母にシンデレラは心底行きたくねえとげんなりしました。
舞踏会とはこの国王子達が毎月主催しているというもので、王子達は継母の知り合いです。
町で継母が買い物をしている際に、いきなり声をかけてきてこぞって結婚を申し込み、義姉達とRPGのラスボス戦よりも壮絶なバトルを繰り広げましたのが始まりです。
シンデレラはその後始末にボロボロになりながら奔走させられたという嫌な思い出しかありません。
王子達は毎回継母と会うためだけに舞踏会を開いています。税金の無駄です。
因みに継母は王子達のアプローチに全く気付いていません。
好きだぜコラと言われても、愛してるぜツナと押し倒されても、母親のいない寂しさからくるものだろうと笑います。
その度に止めて王子達に邪魔すんなとボコられるシンデレラは堪ったもんじゃありませんが。
「じゃ、スクアーロ。俺がいない間はお医者さんが診てくれるから待っててね」
「おーう・・・」
部屋を出て行く継母の後姿に少し寂しさを感じながらも、シンデレラは早く回復しようと眼を閉じました。

「お、スクアーロか。ツナが頼んだのは」
「ん・・・?」
シンデレラが眼を開けると、そこには・・・
「!? ドジっ子ディーノ!?」
「跳ね馬だ」
金髪の美丈夫が微笑みを浮かべて部屋に入ってきました。
「な、何で手前がいやがるんだぁ!?」
「ツナに頼まれたんだ」
「・・・・・・ッ!!」
そういえば、継母は知らない。
彼が、
「じゃ、取り合えず熱さましでも飲むか?」

助手がいないとどうしようもないドジ医者になることを。

笑顔で座薬を取り出した医者に、シンデレラは声にならない恐怖で絶叫しました。


帰ってきた継母は驚きました。
「え?悪化したから舞踏会にはいけない?」
「ああ。何だかどんどん悪くなってってな。
今まで相当無理してたんじゃないか?」
「そんな、可哀想に。スクアーロ・・・」
「・・・・・・・・」
シンデレラは涙ぐむ継母には愛しさを感じましたが、医者には殺意を抱きました。
(全っ部てめえのせいだろがあああああ!!!!)

口も聞けない程“看病”されたシンデレラは、お留守番することになったそうです。










<完>
















「えっと大丈夫?」
「え、演技なのに、な、何で実際に、おえ、色々飲まなきゃ、なんねーんだぁ!?(息絶え絶え)」
「一応、ラムネとかしか用意してなかったんだけど・・・」
「本物だったぞおお!?しかもメスとか電気ショックの危ねえ類はどっから取り寄せたんだぁ!!」
「あ、だからこんなに包帯巻いてるんだ・・・」
「ほ、本気で死ぬかと思った・・・(涙眼)」
「お疲れ様、スクアーロ(労わりの微笑)」
「お、おお(赤)」

ガタン!

「カス!帰るぞ!!(訳:いつまでも綱吉に看病されてんじゃねーよ羨ましい!!!)」
「ぎゃああああああ!!!!!」
「ちょ、ザンザス乱暴過ぎだってば!引き摺んなって!」

ザンザスにより強制退場。













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