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(『morte quadern』 …直訳で死のノート)




拾い上げた黒いそれに書かれていた文字を興味薄気に眺めた少年は、中を捲り見て鼻で笑った。

「死神のノート、ねぇ」

(おや全部イタリア語ですね)

随分と暇な人間もいたものだ。
やけに作り込まれているらしい。

「まあ読めますけど」
だってイタリア人ですし僕。


難なく簡単な文字を眼でなぞる。
一番初めに書かれていたことに口端が上がる。

「…クフフ、“このノートに名前を書かれた者は死ぬ”、ですか」

















それはとても楽で便利ですねえ
































「・・・クソ、遅かったか」

(また面倒なのに拾われたみてーだな)


ウキウキと自分の鞄へソレを仕舞い込んだ少年を見下ろしていた影は、忌々しげに舌打ちをした。







































【 REBONOTE 】






































それは

一人の退屈したマフィア嫌いの天才が




死神のノートを拾ったことから始まった。































「成程、楽に殺せたり苦しませて殺せるノートなんですねぇ」

ふむとある程度説明書きのようなものを読んだ骸は、繁々とそれを眺める。
日本には随分と変わった遊びがあるようだ。

「こんなものを作った者の気がしれませんね」

やれやれと薄い冊子を閉じる。

「殺すのであれば実際に相手を目の前にしないとつまらないじゃありませんか」

根っからのSで暗殺を日常的に行っていた少年は欠伸をして埃の被ったソファーへ腰掛けた。







「じゃー何でそんなに活用してんだオメー」







「おや、何方ですか」

突如かけられた声に、驚きもせずに尋ねる骸に声の主はつまらなそうに聞く。

「何で驚かねえんだ」
「驚いていますよ?
どうやって入ってきたのかとか、どうやって・・・」

骸は気配も無く現れた影の無い男の足元を眺め、笑んだ。

「浮いているのか、とかね。
貴方は一体何ですか?」
「俺はそのノートの落とし主、死神のリボーンだ。
さっきの様子だとそれがもう只のノートじゃないってことはわかってるみてーだな」
「ええまあ。
説明を読み終えたのはつい先程ですが」
「過去に何度かノートが人間界に出回った話は聞いたが、
たった5日でここまで殺らさせてから説明書き読んだのはお前が初めてだゾ。
並じゃ此処までビビッてできねーし、代償を気にするもんだからな」
「クフフ、お褒めの言葉ととっておきましょう。
それにしても、死神ですか」

骸はすっと立ち上がる。

「死神リボーン。
僕は貴方を待っていました」

机に置いてあるノートを愛おし気に撫でる。

「僕は既に『死神のノート』を現実のものと疑っていませんが、
こうして色んなことを直視することでますます確信をもって行動できます。
聞きたいこともありましたしね」

ノートを手に取り、黒ずくめの男に開いて見せる。

「これは一体なんですか?」
「何って、ちゃんと東京U○J銀行渋谷店口座番号って書いてあんじゃねーか」
骸が指差した説明書きの箇所には、何故か幾つかの数字の羅列があった。

「それは僕にもわかりますけど、その上のルールの一つのことです」


“この口座に振り込めば死因も決められる”


「まんまの意味だゾ」
「新手の振込み詐欺かと思いましたよ」

まあそんなことは置いといてと骸はノートを閉じ、ちゃんと振り込めよと言った死神のことは無視して言った。

「覚悟はできていますよ死神リボーン。
僕は死神のノートをわかっていて使った。
そして死神が来た。
僕はどうなるんですか?
魂でも取られるんですかね」
「あ?何だそれは。
人間の作った勝手な空想か?」

大体何だその嬉しそうな顔はと馬鹿にしたようにリボーンは眼を細める。

「俺はオメーに何もしねー(面倒臭い)
人間界の地についた時点でノートは人間界の物になる。
ノートはテメーのもんだ」
「僕のものですか?」
「そーだ。
代わりにオメーの金は全部俺に寄越せ」
「いやなんですかそのジャイアニズム」
「金ねーなら他の人間にまわせ。
その時はこのノートに関する記憶だけ消させてもらうけどな。
元俺様のノートを使ったお前にしか俺の姿は見えねえ。
勿論声も同じでお前にしか聞こえねからな」
「ノートだけが人間六道骸と死神リボーンを繋ぐ絆ということですね」
「気色悪い例えすんじゃねえ」
「では金以外には本当にノートを使った代償は無いんですか」
「強いて言えばノートを使った人間にしか訪れない苦悩や恐怖だが、これは輪廻を終えた記憶を持ってるお前には関係ねーな」
「おや、よくご存知で」
「死神大魔王に変わった人間がいるって聞いてたからな。
後、ノートを使った人間が天国や地獄に行けると思うな。
知ってるだろうがそんなもんねーからな。
それだけだ」
「ではもう一つ。
何故僕を選んだんですか」
「はぁ?
自惚れてんじゃねーゾ。
俺はただ金を持ってそうだからテメーの眼の前にノートを落としただけだ。賢い自分が選ばれたとでも思ったのか?
たまたまお前が金持ちだったからってだけだ。
だから人間界でポピュラーな伊語で説明付けたんだゾ」
「英語の方が良かったんじゃないですか。
じゃあ何故落としたんですか?
丁寧に使い方まで書いて『間違って落とした』なんて言わないで下さいね」
「何故?」

骸の言った言葉を繰り返し、死神は綺麗に微笑んだ。



「退屈だったんだよ」



リボーンはすいっと宙に浮び、赤みがかった月を見上げる。
「死神がこんなこと言うのもおかしいけどな、生きてるって気がしなくて。
暇つぶしにやっただけだ」











それきり無言になった死神の背中は何処か寂しげで、孤独というものを無言で受け止めているのが、骸にはわかってしまった。









自分も同じだから。













「では、僕と同じですね」

骸は笑い、手を差し伸べた。









「宜しく、死神リボーン」
「・・・・・・・・・・・・」







リボーンは黙ってその手を見たあと、ふっと笑った。






























「お前と一緒にすんじゃねーよ、この根暗」


































こうして死神は退屈でマフィア嫌いの天才からノートをもぎ取ると、さっさと飛び立っていった。








END



































「・・・・・・・・・・・・・・・いや何この話」
「今巷で人気らしーぞ」
「嘘つくなよなんだよこの話!?意味わかんないし!
これってお前と骸が会った時のことだよな!?」

本当にこんなカンジだったのか!?と人気急上昇中のアイドル、ツナツナこと本名沢田綱吉(男)は、読んでいた小説を閉じて目の前に浮いている死神に顔を引き攣らせた。

「まーなっていうか、んなことどーでもいいからその格好やめろ」
「やだね。仕事中でもないのに」

ぷいと横を向くツナは、ファンが見たら嘆くようなゴスロリにジャージという格好をしていた。

なんともいえない組み合わせだ。
そんなに嫌ならせめて衣装の方を脱いで下さい〜ッ!とマネージャーの獄寺が泣いて頼んでも、どうせ20分もすればまたコンサートが始まるから面倒といってツナはジャージを履いているのだった。

「大体、こんな着にくい格好させる方が悪いんだよ。
俺男なのに!」
「じゃあ辞めればいいだろ」

さらりと簡単に言ってくれる何の柵も無い死神にツナは嘆息する。
「それが出来たらとっくにしてるっつーの」
「暗殺なら幾らでも請け負ってやるゾ?
俺はお前の死神だからな」

そういってついと頬に触れ、愛おしげに微笑むリボーンにツナはげんなりする。

「デスノートに書いて済む問題でもないの。
俺、これ使う気なんてないし」



あーもー、骸も面倒なもの俺に押し付けてくれたよなーと黒いノートを見て知り合いの少年に恨み言を言うツナに、リボーンは眉を顰める。
「なんだ、お前は俺が嫌なのか」




自分はこんなにツナが好きなのに。




死神だからそれだけは言えない言葉を飲み込み、リボーンは伸ばしていた手を引っ込ませた。









ツナから少し離れ、拗ねたように背を向けてしまったリボーンに、大して気にもせずツナはゴソゴソと支度を始める。
「そういうんじゃないよ。人を殺すことだけはしたくないだけ」
「・・・・・・・・・・」
「もし、本当にそうまでしなくちゃいけなくなったら」

ツナは脱いだジャージを畳んでいた手を止め、ぽつりと呟く。
「俺は自分の手でやる。
お前をそういう風に利用したり、言い訳に使いたくない」



どんなところまで落ちたって、それだけはしたくない。




それはリボーン達と会う前から決めていたこと。












黙って耳を傾けているリボーンに、ツナは笑う。

「それに俺は、お前のことは結構好きだよ?」








































じゃー行ってきまーすと少年が出て行った後、死神は無言で月を見上げた。






銀色に輝く三日月は、少年の心のように凛として美しかった。

























<...fine>

































意味不明でスイマセン(汗

書きかけをどうにかしようとしてたらこんなことに _| ̄|○

ムクツナ予定が、あれ?リボツナ?みたいな。。。。






因みに配役はこんなカンジです、続きませんけど(殴



月=骸

リューク=リボーン

ミサ=ツナ

L=雲雀






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