黄と青

昔、願い事はあるかと聞いてくれた子がいた。
駆け回ることに喜びを覚え始めていた自分よりも幼かった気がするのだが、その子の口調は妙に大人びていた。

何でもいいのかと聞くのに対し、それがお前の本当に望むものならと言うのでじゃあと遠慮なく自分が何気なく言ったことに呆れたような顔をしたが、その子は本当に願いを叶えてくれた。
喜んでお礼を言うと、その子は変な顔をした。

幾日かに分けて何回かそんなことを繰り返した。


ある日、いつものようにフラリと現れたその子はいつの間にか自分よりも大きくなっていた。
そして頭を撫ぜると何故か有難うと言って笑った。

『いつか、必ずお前を向かえに来る』





そういって消えたその子を魔法使いだったのだと思っていた自分は、随分と可愛い子供だったのだと今は生温い気持ちになる。






























「だってそれ、お前なんだもんなー」
「・・・・・・・・・少しは余韻を持って思い出せ」







全く再会の感動も何もあったもんじゃねぇし何時からこんな守銭奴にとブツブツ言っている美麗な精霊に半眼になる。
「だってお前、5日後ぐらいにはまた遊びに来てたじゃん」

余韻も何もあったもんじゃない。
本当に姿を見せなくなったのは、両親がいなくなった直ぐ後ぐらいだったし。
だから余計にショックだったとは調子に乗るだろうから言わないでおく。

「そうだったか?」
「そーだよ。
で?精霊様は一体何の用事で帰っていらしたんですか?」
とぼけたようにするのを嘆息して見上げると、リボーンの手がそっと髪に触れてくる。
「言ったろう?
必ずお前を・・・、迎えに来るってな」
だから来たんだという優しく頬を包んだ青年の手が暖かい。
答えになっていない返答なのに、それに自然笑みが浮んでしまう。
昔からコイツは仕方ないなぁと思わせる何かがある。

「ふーん。じゃあ精霊様、一体俺を何処に連れてってくれるつもりなんですか?」
「さぁな。
ま、俺とお前以外いないところか」
「・・・俺を飢え死にさせる気なの、お前?」
「その分俺の愛をたらふくくれてやるから安心しろ」
「心底いらないし愛で腹一杯になったら世話無いし」
「全然信じてねーだろお前。なら試してみるか?ん?」
幼い頃と同じように口端を上げるリボーンに、遠慮しとくと言ってリボーンの手を外したツナはその体をぎゅっと抱きしめた。

「兎に角、お帰り。リボーン」
「・・・・・・ただいま」








不意打ちで抱きしめたたことにより些か照れが混じった声音に噴出すと、笑うなという懐かしい不貞腐れた声が返ってきて更に笑った。
































【 千夜一夜物語 〜十一夜目〜 】


































「それで、お前コロネロの知り合いなの?」




リボーンが離さなくなる前にと体を起こしたツナに、リボーンは舌打ちした後まぁなと頷く。
「ってことはお前が持ってんのは青のランプか。
つーか、コロネロと会ったのかお前?」
「会ったっていうか、バイトまで気持ちよく仮眠とってたら叩き起こされたんだよ。
今は此処に居候する代わりに掃除とか宿の手伝いしてもらってるけど」
「・・・・・・・虹の精霊をただの雑用扱いするなんてやっぱオメーは大物だな」

(にしてもあの偏屈が自分から出てくるなんざ珍しいこともあるもんだ)
おまけに大嫌いな人間相手に自分から声をかけるとは。
天変地異の前触れだろうか。

「ま、いい。それで何処いんだアイツ」
「俺の部屋だけど、やっぱ知り合いなんだ?
ってことはマーモンとコロネロも顔見知りってことになるのか。へー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと待て」
いやー世間って以外と狭いよねと独り言のように軽く言っている、もう仕込みに戻っていてこっちを見てもいないツナの肩をガシリと掴む。
今聞き捨てならないことを聞いた気がするのは気のせいだろうか。

「・・・・・・今何処にいるっつった」
「? 俺の部屋の、多分ベット」





途端リボーンは姿を消した。

















「随分と気持ち良さそうじゃねーか、えぇ?ミオ・アミーコ」
「!?」

ツナのベットはさぞかし寝心地も抜群だろうと言って突如として現れた黄の大精霊に、寛いでいた青の大精霊はぎょっとしたように身を起した。
何百年前に見たきりの知己が何故いるのか。
しかも呪われた赤子の姿ではなく、封じられる以前の姿で。
「リボーン!お前、呪い解けたのかコラ!?
それになんで此処にいやがる!」
「それはこっちの台詞だこのムッツリスケベがっ!!」
「何いきなりキレてんだ!?」

意味わかんねーぞコラァ!!といいながらも問答無用で撃ってきたリボーンの弾を身体を沈めて回避する。
何故キレているのかは知らないが、こうなったら人の話なんて聞く奴ではない。
リボーンの愛銃は弾が無期限に出続けるので弾切れなんて期待できない。
背後に回り込んでから愛用のライフルを出現させ肩に固定する。
王の時とは違い、相手に容赦は無用だとわかっているので遠慮なく引き金を引いた。
「喰らえコラァ!」
「相も変わらず古臭ぇんだよオメーは!」

しかし、通常であれば西洋の戦艦でさえ木っ端微塵になるその一撃を、リボーンは鼻を鳴らして手を翳し消滅させる。
(クソッ、)
やはり完全体の相手と今の自分では力に違いがありすぎる。
認めたくない事実だが、こればっかりは仕方なかった。

『アルコ・ランプを手にすることはこの世の全てを手にするのと同意義』
誰が言ったかは知らないが、それは戯言ではないのだ。



近距離で打ち合いながら、手や足も出すので相手が避ける度に古い宿がミシリと悲鳴をあげる。
古いだけで丈夫ではない宿が、彼等の動きに耐えられるわけが無かった。
今にも崩れそうに建物全体が震える。

「おいコロネロ!夜中に何やって・・・」
その騒ぎに、宿の住人の一人であるディーノが寝ぼけ眼でやってくる。
最近住人の仲間入りをしたコロネロに声をあげるが、帰って来たばかりの旧知までが暴れていることにぎょっとする。
「ッて、リボーン!?お前そんなんぶっ放しててたらツナに怒られ、だぁ!?」
「うっせぇ、ドジ王子は黙ってろ!!」
「とうとう本性を表したな魔物共め。
纏めてあの世に送り返してやる」
「「お前みてえな低級種族と一緒にすんな!!(コラ!)」」
それに呼応するように出現して参戦してきたT世が更に混戦を促す。

精霊であろうと何だろうと敵とみなしたものは全て燃やし尽くすT世の炎に、二人が避ける度に室内が焼けていく。
掠りでもしたらとんでもないことになるとわかっているリボーンと、勘で危険だと察知して避けるコロネロ。
そんな二人に、ちっとも当たらないことに不満を覚えたT世が構えを変える。
「面倒だ、一掃してやる」
「ちょっと待て!!お前それは!?」
何をしようとしているのか気付いたリボーンが流石に声を上げるが、

「もう遅い」
既に噴出していた業火に、一帯が光で溢れた。















































リボーンが眼の前から消えて3分。
それだけの間で綺麗な星空が一望できるようになった室内を見回し、ツナが微笑む。











「そっかー・・・・、お前等はそんっっっなに俺に怒られたいんだねー」

大体リボーンは本当に何しに帰ってきたの?という、笑顔なのに氷河期に突入しているツナの瞳に硬直しているアフロ頭の一同。











その命が取り留められたのは、

「・・・・・・・今度は一体何の騒ぎなんだ」
外に出ていたU世が帰ってきたからに相違ない。




























第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!