愛の言葉
―ねえ綱吉君、どうしてなんですか
―・・・だからいつも言ってるだろ
「必要ないからだよ」
その言葉と眼差しを、僕は決して忘れない。
【 愛の言葉 】
「ツナ、オメー何で言わないんだ」
「何が?」
書類整理と政府との会談が終った後。
リボーンが言った言葉に含まれた意味を、業とわからないフリをして聞き返した。
「骸だ」
「うん?」
骸がどうしたのかという、敢えて恍ける俺にリボーンがいらっとしたように眉間に皴を刻む。
「アイツの気持ち、もうわかってんだろ。
お前が一言言えば、アイツはお前の本当の守護者になるんだゾ」
「うん、そうかもね」
そうだろうね。
書類の端と端をキチンと合わせて、淡く笑う。
わかってるよリボーン。
「だから俺は言わないんだよ、絶対に」
忘れたわけじゃないだろ?というのに、リボーンは黙る。
そう、お前が忘れるわけない。
「アイツは、骸は。マフィアが嫌いなんだよ?」
心底憎いと思っているのだ。
それなのに。
「それなのに、それの最たるものみたいなボンゴレを守れだなんて、言えない」
だから骸の口から、俺を守るだなんて言って欲しくない。
アイツ1人を選べなかった弱い自分。
欲張りな俺1人の為にアイツの今までの人生を無駄にするようなことを、言いたくなんてない。
それは六道骸という人間を、根本から否定するのと同じだ。
「俺はねリボーン、」
「知ってる」
だから言うなと苦々しげに、何処か拗ねたような寂しいような眼をして顔を逸らした自分の師だった青年を愛おしく思う。
でもそれ以上に。
「うん、ごめんなリボーン」
「・・・・・・・・謝ってんじゃねーゾ、駄目ツナが」
それ以上に、俺は骸が好きなんだ。
だから、俺はお前があんな眼をしても、何を言おうと。
絶対に言わないんだ。
お前のことが好きだから。
「必要、ない・・・?」
「うん。俺にはお前はいらないよ」
寧ろ勿体無い位だ。
だから、そんな顔するなよ。
そんな顔して、お前の嫌いなものにならなくたっていいんだよ。
お前は自由だ、骸。
言葉にしなくては伝わらない。
そうとわかっていてこんなことを言う自分はやはりマフィア寄りの人間なんだろう。
好きな人の最も嫌いな種族だなんて、皮肉だな。
傷つけたかなぁ、なんて。
当たり前のことを1人ごちて笑おうとして、失敗した。
「・・・・・・・・・やっぱ嘘って、俺苦手だなぁ」
それだけは昔から変わらない。
放たれた言葉に居た堪れなくて、その場から逃げるように消えた。
動悸が激しい。
胸が苦しい。
告げられた言葉が、六道骸という精神を掻き乱す。
嬉しかった。
(わかりやすいんですよ、貴方は)
自分は知らない。
あんなに優しい言葉など。
嗚呼こんなにも自分は彼に、愛されていたのか。
そう実感することにより自然涙が流れた。
自分は決して生涯忘れないだろう。
初めて愛した人から初めて貰った愛の言葉を。
2009.4,20
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