4

「・・・・・・・・・・・ん、」

妙な絶叫と何かが倒れる音に瞼を上げる。
体がやけに重い。
てか苦しいんだけど、お腹になんか乗って・・・?






「・・・・・此処は・・・、」
寝ぼけ眼で茫と辺りを見回してから、機器の類ばかりがある部屋にやっと状況を思い出した。
そういえばスパナのラボに来ていたのだった。

まあそれはいいとして。
ちろと見た自分の腹の動きに合わせて上下している金髪に半眼になる。
「・・・・・・・・・・・スパナ、」
「・・・・・・・・ボンゴレ、動かないでよ」
「・・・・・その前にお前さ、人を枕にするなよ」
「サイズ的に丁度いい」
「俺は抱き枕か」

お前は俺を何だと思っているんだという問いは、ぼりぼりと頭を掻いた手がいつものそれだったことに立ち消え、





「・・・・・・・・・・・おい、駄目ツナ。
オメーはいつから素っ裸で寝るのが趣味になったんだ?」





先生怒らないから言ってみろ?ん?という物凄く黒いオーラを纏って微笑んでいる元家庭教師の暗黒な笑顔により引っ込んだ。
直ぐ横でクフクフクフフ・・・とエンドレスで笑ってる骸、足元には泡を吹いて倒れている獄寺君、そして妙に無表情の雲雀さんがいた。
え、何この空気?

「・・・・・その巻き毛、前から咬み殺してみたかったんだよね」
「奇遇じゃねえか雲雀」
「ワオ、以心伝心だね赤ん坊」
「・・・・え、ターゲット俺じゃないの?」
「オメーは後でぐっちょりねっちょり朝まで個人指導だ」
「楽しみにしてなよ」
「・・・・・・・・・・・うわーい」

本気だとわかる二人に顔を引き攣らしつつ、まだ寝こけているスパナをべりと剥がす。
んーと眉を寄せて体を丸めるスパナの横には散乱した書類。
徹夜で調べ物をしてくれたらしいスパナを、起こしたくはなかったから。
「悪いけど、スパナは寝不足だから。
代わりに俺が二人の相手になるけど、いいよね?」
「・・・・・・フン」
「別にいいよ」






ボウと額に炎が宿り、微かな笑みも消える。
久しぶりの感覚の人型の手に嵌めたブローブを確かめるように握り込む。






「・・・・・・・悪いが、早めに終らせてもらう」
「駄目弟子如きが、調子乗ってんじゃねーゾ」
「格の違いを教えて上げるよ」






それに二人は楽しげに、笑った。

































【 レッツ・エンジョイドッグライフ? 4 】


































「ヴェルデ?」
「あぁ。
今回はアイツが原因らしいゾ」
「今回はっていうかまたアイツかよー・・・」

庭園にて、紅茶の入ったカップをソーサーに置いたツナはげんなりと肩を落とした。
勘弁してくれ。

なんでもヴェルデは骸のように動物に人の意思を憑依させ、情報収集に役立てるつもりだったという。
だが実験途中のワン太が逃げ出してしまい、偶々ツナが拾ってしまったことから始まったことらしい。
なんつー傍迷惑なっつーか覚えてよヴェルデ。

「通りで邸内に迷い犬とか変だなーと思ったよ」
「じゃあその時点で係わるのをやめれば良かったじゃねーか」
「う、でも、ほっとけないだろー・・・」
「・・・・・だからお前は駄目ツナなんだ」

呆れたようにリボーンは嘆息した。
気まずげにしていても、ツナはまたきっと拾ってしまうんだろう。
それが自分の厄災に繋がるとわかっていても。
(このお人良しが)

自然、リボーンの口端が上がっていることには気付かず、ツナはブツブツと言う。
「大体これはヴェルデが悪いんだろ?
お前の同胞じゃん、何とかしろよリボーン」
「るせえ其処まで俺が面倒見る義務はねえ。
そもそも何で俺がアイツの尻拭いしなきゃなんねーんだ」
「え、類友だから?」
「額に風穴開けられてーのか駄目ツナ」
「すいませんでしたリボーン先生」


すぐさま簡単に両手を上げたツナに情けねーなと言いつつ付き合いで飲んでいたエスプレッソのお代わりを内線で言いつける。
「でもこれでアイツも少しは懲りたんじゃねーか?
動物の魂が人の体に入っちまったんだったら失敗だって珍しく顔顰めてたからな」
「ヴェルデが懲りるとか全然想像出来ないんですけどリボーンさん」
「自分で言っといて何だが俺もだツナ」
「流石お前の同胞だよな、ったく。
・・・まぁ悪くはなかったからいいけどさ、ドッグライフも」

今まで食事も碌にしていなかったので、用意されたものをかき込みながら答える。
中々エンジョイしたといえばそうかもしれないから。
「まあ二度と御免だけど」
「でも二度あることは三度あるっつーからな」
「リボーンお前、縁起でもないこと言、」



ミギャアア!!



ニッと笑ったリボーンに引き攣り笑いを返したその時、劈くような鳴き声が頭上で響いた。
何事かとぎょっとして顔を上げ、

「ぶッ!?」

顔面が柔らかなものにばふりと覆われ、視界がブラックアウトする。
それに合わせるようにして「ヴェルデ!!猫を実験台にすんのはやめろコラ!!」という虹っ子の声が聞こえてきて思わずまた青筋が浮んだ。つーかまたお前かヴェルデ!!
そんな言いたくても言えない怒りよりも、頭に容赦なくたてられた爪が痛くてそれどころじゃなかった。
「ちょ、いやマジで痛い痛い地味に痛い!!何!?どうなっ!ふ、げ!?」

それが落下してきた勢いのまま仰け反り、椅子ごと後ろにひっくり返って頭を思いっきり打った。
こんなドジ何年振りだろうか。
「お前、何やってんだ駄目ツナ・・・」

呆れたようなリボーンの声が聞こえる。
確かに泣く子も黙るマフィアのボス(多分)が顔に猫を張り付かせてひっくり返ったなんて、間抜け過ぎるかもしれないけど。
まだ眼の周りを星が飛んでいるので言い返せないことが悔しい。
というか俺が何をしたというのだ。
昨日から動物に関することに運がなさ過ぎやしないか俺?

「いつまでも腹出して寝っ転がってねーで起きろ」

わかってると言おうとして、ふとリボーンの言葉に違和感を感じた。
腹を出して?

俺の感覚からして腹はまず外気に触れていない。
寧ろポカポカしているくらいなのに。


嫌な予感と共にぼやけた視界がハッキリとしてきて・・・・・。








「・・・・・・・・・・・・・・・・・にゃ?」









こてんと小首を傾げた自分の不思議そうな顔が目の前にあったことに、ガクリと全身の力が抜けた。






認めたくないがほぼ予想した通りの今の自分の体を見下ろして、笑いが込み上げてくる。

あはははははは、気のせいかな、なんかまた目線が昨日と同じになってんだけどあれ一体これどういうこと?
ぶっちゃけ泣きそうだった。
てか視界がさっきと違ったカンジにぼやけてるんですけどあれなんで?



ぐるぐると現実逃避をしたくて堪らなくなっていたツナに、毛づくろいを初めていたボンゴレの体を見た瞬間全てを理解していたらしいリボーンがポンと肩(?)を叩いた。







「・・・・今度はレッツエンジョイ・キャットライフ、か?ツナ?」
「シャアアアア!!!(できるかあああああああーーーーー!!!!)」







ドンマイ☆不幸の星の元生まれ体質なボスさんという妙に生暖かい道場の眼差しに、ツナの叫び声は猫の鳴き声に代弁され、ただ空しく響き渡った。













<fine>

































「今度は猫だ。
お前こっち派なんだろ?」
「・・・・・・・・・・・」

じゃあまた一丁頼むわといったアルコバレーノに、スパナは黙ってドアを閉めた。










































ツナ猫の好物はやっぱりツナ缶なんでしょうかね(笑)

色々端折ったような幕切れでしたがお付き合い有難うございましたvvv



第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!